労働安全コンサルタント試験 2013年 産業安全一般 問06

運搬機械等の安全確保




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合格

 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問06 難易度 運搬機械等の安全確保に関するごく初歩的な知識問題。確実に正答できなければならない。
運搬機械等の安全確保

問6 運搬機械等の安全確保に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)ショベルローダーの起伏装置、リーチ装置及びダンピング装置は、それぞれに制動装置を備えている。

(2)移動式クレーンは、巻上げ用ワイヤーロープの巻過ぎにより、フックブロックのジブなどへの激突によるジブの破損やワイヤーロープの切断による荷の落下等を防止するために、光線式又は超音波式の衝突防止装置を備えている。

(3)傾斜コンベヤーは、停電、電圧降下等による荷又は搬器の逸走や逆走を防止するための防止装置を備えている。

(4)フォークリフトのヘッドガードは、落下物から運転者を保護するために、定格荷重に応じて定められた強度を有している。

(5)無人搬送車は、その走行領域を人と共有することを前提としており、発進時警報装置、走行中警報装置、障害物検知装置、非常停止装置等を備えている。

正答(2)

【解説】

(1)適切でないとは言えない。シヨベルローダー等構造規格第4条本文は、原則としてショベルローダーの起伏装置、リーチ装置及びダンピング装置は、それぞれに制動装置を備えなければならないとしている。

もっとも、同条但書に「油圧又は空気圧を動力として用いるシヨベルローダー等の起伏装置、リーチ装置又はダンピング装置については、この限りでない」とされているので、やや疑問ではあるが、(2)が明らかに誤っているので、本肢は「適切ではないとはいえない」としておく。

【シヨベルローダー等構造規格】

(荷役装置用制動装置)

第4条 シヨベルローダー等のブーム、アーム等を起伏させるための装置(以下この条において「起伏装置」という。)、シヨベル又はフオークをリーチさせるための装置(以下この条及び第十五条において「リーチ装置」という。)及びシヨベル又はフオークを前後傾させるための装置(以下この条において「ダンピング装置」という。)は、これらの装置の作動を制動するための制動装置を備えているものでなければならない。ただし、油圧又は空気圧を動力として用いるシヨベルローダー等の起伏装置、リーチ装置又はダンピング装置については、この限りでない。

2及び3 (略)

(2)適切ではない。クレーンのワイヤーロープの巻過防止のために、超音波式の衝突防止装置を用いることは現実にはほとんどなく、光線式のものが用いられている例はおそらくないだろう(※)

※ 移動式クレーンの一部に超音波式の巻過防止装置が採用されているケースがあるが、コストの関係からきわめて少ないのが現実である。超音波式を用いるのは、機械式スイッチの場合、巻過ウエイト用のワイヤロープが絡まったり、他の工作物等にひっかかったりすることがあるため、それを避けるためである。

一方、光線式の過巻防止装置は、移動式クレーンのフックは風で大きく揺れることもあり、技術的に実現することは困難ではないかと思われる。

なお、移動式クレーン構造規格第24条は、移動式クレーンは、ワイヤロープを用いるつり上げ装置について、巻過防止装置又は巻過ぎを防止するための警報装置を備えなければならないとしている。必ずしもフックブロックのジブなどへの激突を防止するための装置(※)を備えなければならないわけではない。

※ 本肢では「衝突防止装置」とされているが、構造規格では「巻過防止装置」と呼ばれる。

また、同第25条は巻過防止装置を機械式と電気式に分けて規定しているが、光線式又は超音波式の衝突防止装置としなければならないとは定められていない。

【移動式クレーン構造規格】

(巻過防止装置等)

第24条 ワイヤロープ又はつりチェーンを用いるつり上げ装置、起伏装置及び伸縮装置は、巻過防止装置又は巻過ぎを防止するための警報装置を備えるものでなければならない。

(巻過防止装置等)

第25条 前条の巻過防止装置は、次に定めるところによるものでなければならない。

 巻過ぎを防止するため、自動的に動力を遮断し、及び作動を制動する機能を有するものであること。

 先端のシーブその他当該上面が接触するおそれがある物(ジブを除く。)の下面との間隔が〇・二五メートル以上(直働式の巻過防止装置にあっては、〇・〇五メートル以上)となるように調整できる構造とすること。

 容易に点検を行うことができる構造とすること。

 前条の巻過防止装置のうち電気式のものにあっては、前項に定めるところによるほか、次に定めるところによるものでなければならない。

 接点、端子、巻線その他電気を通ずる部分(以下この項において「通電部分」という。)の外被は、鋼板その他堅固なものであり、かつ、水、粉じん等により機能に障害を生ずるおそれがない構造のものであること。

 通電部分と前号の外被との間は、耐電圧試験において、日本工業規格C八二〇一-四-一(低圧開閉装置及び制御装置-第四部:接触器及びモータスタータ-第一節:電気機械式接触器及びモータスタータ)に定める基準に適合する絶縁効力を有する構造とすること。

 第一号の外被の見やすい箇所に、定格電圧及び定格電流を記載した銘板が取り付けられていること。

 接点が開放されることにより巻過ぎが防止される構造とすること。

 動力回路を直接遮断する構造のものにあっては、通電部分は、温度試験において、日本工業規格 C 八二〇一 -四-一(低圧開閉装置及び制御装置-第四部:接触器及びモータスタータ-第一節:電気機械式接触器及びモータスタータ)に定める基準に適合するものであること。

(3)適切でないとは言えない。安衛則第151条の77本文により、傾斜コンベヤーは、原則として停電、電圧降下等による荷又は搬器の逸走や逆走を防止するための防止装置を備えなければならないとされている。

【労働安全衛生規則】

(逸走等の防止)

第151条の77 事業者は、コンベヤー(フローコンベヤー、スクリューコンベヤー、流体コンベヤー及び空気スライドを除く。以下同じ。)については、停電、電圧降下等による荷又は搬器の逸走及び逆走を防止するための装置(第百五十一条の八十二において「逸走等防止装置」という。)を備えたものでなければ使用してはならない。ただし、専ら水平の状態で使用するときその他労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。

(4)適切でないとは言えない。安衛則第151条の17(第一号)により、フォークリフトのヘッドガードは、落下物から運転者を保護するために、定格荷重に応じて定められた強度を備えなければならないとされている。

【労働安全衛生規則】

(ヘツドガード)

第151条の17 事業者は、フオークリフトについては、次に定めるところに適合するヘツドガードを備えたものでなければ使用してはならない。ただし、荷の落下によりフオークリフトの運転者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。

 強度は、フオークリフトの最大荷重の二倍の値(その値が四トンを超えるものにあつては、四トン)の等分布静荷重に耐えるものであること。

二~四 (略)

(5)適切でないとは言えない。JIS D 6802:1997「無人搬送車システム-安全通則」によれば、無人搬送車は、その走行領域を人と共有することを前提とするとされており、発進時警報装置、走行中警報装置、障害物検知装置、非常停止装置等を備えなければならないとされている。

【JIS D 6802:1997】

 無人搬送車システムの安全確保の基本 無人搬送車システムは,その稼働領域を人と共存,共用する無人搬送車を用いて,物の搬送,荷役を行う自動搬送システムである。

4.1.4 警報装置 無人搬送車の動きを知らせ,注意を喚起するため,次の警報装置を本体に設けなければならない。

(2)発進警報器 無人搬送車が停止状態から走行状態に入る場合,発進する前に警報を発すること。

(3)走行警報器 無人搬送車は,走行及び自動移載中に使用環境に適した警報装置を連続又は断続して作動すること。

4.4.2 接近検出装置の装備 障害物接触バンパだけで安全に停止することが困難な車速の場合は,これを事前に検知する接近検出装置を装備し安全許容内に減速又は停止しなければならない。

4.6 非常停止

4.6.2 非常停止装置・機能 無人搬送車には,次の非常停止装置・機能を設け,いずれかが操作され,又は作動したときに非常停止しなければならない。

(1)非常停止ボタン 人が容易に操作できる位置に非常停止ボタンなどを設けること。非常停止ボタンは赤色とし,非常停止ボタンなどの文字を表示すること。

   また,地上制御盤によって誘導路制御を行っている場合は,異常発生時に直ちに無人搬送車を停止できる機能を備えていること。

2021年01月24日執筆 2024年04月07日改訂