労働安全コンサルタント試験 2013年 産業安全一般 問04

各種の材料の特性




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合格

 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問04 難易度 各種の材料の特性に関する問題。やや難問だが、過去問に類問はある。正答しておきたいところ。
各種の材料の特性

問4 材料の特性に関する次の記述のうち.誤っているものはどれか。

(1)炭素鋼は、鉄と炭素の合金で、鉄に0.03~1.7%の炭素と若干のケイ素、マンガン、リン、硫黄などを含んでおり、炭素量が多いほど引張り強さや硬さが増加するが、伸びは減少する。

(2)ステンレス鋼は、合金元素や金属組織によって機械的性質や耐食性が大きく異なるが、このうち耐食性を改善する元素はクロム、ニッケル、モリブデン等であり、炭素や硫黄は耐食性を悪化させる。

(3)ねずみ鋳鉄は、炭素を2.0~4.0%、シリコンを1.0~3.0%程度を含むものが多く、圧縮強さは引張り強さの3~4倍あり、熱伝導率がよく、耐摩耗性に優れている。

(4)アルミニウム合金は、軽くて耐食性があるが、温度の低下とともに伸びが減少して靭性が低くなり、脆性破壊を起こすことがある。

(5)コンクリートは、大小の骨材粒をセメントペーストで結合したもので、強度は通常、圧縮強さによって表され、水セメント比が大きいほどコンクリート強度が低下する。

正答(4)

【解説】

(1)誤っているとは言えない。炭素鋼は、鉄と炭素の合金で、鉄に0.03~1.7%の炭素と若干のケイ素、マンガン、リン、硫黄などを含んでいる(※)。炭素は、強度、硬さ等の機械的性質に最も影響する元素で、炭素含有量が0~0.02%のものを純鉄、0.02~2.1%のものを鋼、2.1~6.7%のものを鋳鉄に分類する。炭素濃度の増加により、強度及び焼入れ性が向上するが、一方で、延性、靭性を低下させることになる。

※ 炭素、ケイ素、マンガン、リン及び硫黄を鋼の5元素といい、これらの合金が炭素鋼である。さらに、クロムやニッケルを添加すると合金鋼に分類される。

(2)誤っているとは言えない。ステンレス鋼は、合金元素や金属組織によって機械的性質や耐食性が大きく異なる。そして、クロム、ニッケル、モリブデン等は耐食性を向上させるが、炭素や硫黄は耐食性を悪化させる。

(3)誤っているとは言えない。ねずみ鋳鉄は、一般には炭素を2.0~4.0%程度(定義上は2.06~6.67%)、シリコンを1.0~3.0%程度を含むものが多い。引っ張り強さは150~350MPa程度なのに対し、圧縮強さは500~1100MPa程度である。ステンレスや軟鋼に比べれば熱伝導率はよい。また、切削加工性がよいにもかかわらず耐摩耗性が優れているという特性を有する。なお、ねずみ鋳鉄の呼び名は、破面が灰色であることに由来している。

(4)誤っている。アルミニウム合金は普通鋼のように低温で強度が低下するようなことはなく、温度の低下によって逆に強度が増す。そのため、低温度で靭性値が問題になることはほとんどない(※)

なお、アルミニウム合金は、鉄などに比較すると比重が小さく、空気中で酸化皮膜を生成して腐食を防ぎ、耐食性に優れていることは正しい。

※ 近年、溶接構造用Al-Zn-Mg系合金で、超低温(-196℃)における粒界割れによる脆性破壊が問題になっている。

(5)誤っているとは言えない。コンクリートの分野で単に「強度」というと、圧縮強度を指す。コンクリートは、大小の骨材粒をセメントペーストで結合したものであり、その強度はセメントペーストの接着力に依存する。セメントペーストの接着力は、水セメント比(水の質量/コンクリートの質量=W/C)が大きいほど低下する。このため、水セメント比が大きいほどコンクリート強度が低下することになる(※)

※ 常識で考えても、セメントの量を少なくして水で量を増やしたものが頑丈になるわけがないだろう。コンクリート打込み作業をやりやすくするために、セメントに水の量を増すことを業界用語で「ジャブコン」といい、手抜き工事の一つのパターンである。

2021年01月24日執筆