問8 電気による労働災害を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
ただし、記述中にある交流アーク溶接は、自動溶接以外の溶接方法によるものとする。
(1)200ボルトの低圧の充電電路の修理の作業を行うとき、当該作業に従事する労働者に感電の危険が生ずるおそれがあったので、当該労働者に絶縁用保護具を着用させたが、活線作業用器具は使用させなかった。
(2)ボイラーの胴の内部で交流アーク溶接の作業を行うときに使用する交流アーク溶接機用自動電撃防止装置について、当該装置を使用する日の使用開始前に作動状態について点検を行ったが、定期自主検査は行わなかった。
(3)6.6キロボルトの高圧の電路の支持物の点検の作業を行うとき、当該作業に従事する労働者に作業の内容について周知させ、当該電路を開路し停電にしてから当該作業を行わせたので、作業の指揮者は定めなかった。
(4)対地電圧が200ボルトの可搬式電気ドリルを使用するとき、絶縁台の上で当該電気ドリルを使用させたので、当該電気ドリルが接続される電路に感電防止用漏電遮断装置は取り付けなかった。
(5)対地電圧が100ボルトの移動電線を通路面において使用するとき、当該電線を金属管内に収め、絶縁被覆の損傷のおそれのない状態にしたので、車両等が当該電線の上を通過することを禁止しなかった。
このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2012年度(平成24年度) | 問08 | 難易度 | 電気による労働災害防止に関する基本的な問題である。確実に正答できる必要がある。 |
---|---|---|---|
感電災害の防止 | 2 |
問8 電気による労働災害を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
ただし、記述中にある交流アーク溶接は、自動溶接以外の溶接方法によるものとする。
(1)200ボルトの低圧の充電電路の修理の作業を行うとき、当該作業に従事する労働者に感電の危険が生ずるおそれがあったので、当該労働者に絶縁用保護具を着用させたが、活線作業用器具は使用させなかった。
(2)ボイラーの胴の内部で交流アーク溶接の作業を行うときに使用する交流アーク溶接機用自動電撃防止装置について、当該装置を使用する日の使用開始前に作動状態について点検を行ったが、定期自主検査は行わなかった。
(3)6.6キロボルトの高圧の電路の支持物の点検の作業を行うとき、当該作業に従事する労働者に作業の内容について周知させ、当該電路を開路し停電にしてから当該作業を行わせたので、作業の指揮者は定めなかった。
(4)対地電圧が200ボルトの可搬式電気ドリルを使用するとき、絶縁台の上で当該電気ドリルを使用させたので、当該電気ドリルが接続される電路に感電防止用漏電遮断装置は取り付けなかった。
(5)対地電圧が100ボルトの移動電線を通路面において使用するとき、当該電線を金属管内に収め、絶縁被覆の損傷のおそれのない状態にしたので、車両等が当該電線の上を通過することを禁止しなかった。
正答(3)
【解説】
(1)違反とはならない。安衛則においては低圧・高圧・特別高圧の電圧の範囲は、安衛則第36条第四号により表のようになっている。本肢の200ボルトが低圧であることは正しい。
本肢の作業が低圧活線作業なのか低圧活線近接作業なのかは、文章からは必ずしも判然としないが「活線作業用器具」を使用させなかったとあるので、低圧活線作業と思われる。
したがって、同規則346条第1項により、充電電路の修理の作業において従事する労働者に感電の危険が生ずるおそれがある場合に、その労働者に絶縁用保護具を着用させれば、活線作業用器具を使用させなくとも違反にはならない。
交流 | 直流 | |
---|---|---|
低圧 | 600V以下 | 750V以下 |
高圧 | 600V超 7,000V以下 |
750V超 7,000V以下 |
特別高圧 | 7,000V超 |
【労働安全衛生規則】
(特別教育を必要とする業務)
第36条 (柱書 略)
一~三 (略)
四 高圧(直流にあつては七百五十ボルトを、交流にあつては六百ボルトを超え、七千ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)若しくは特別高圧(七千ボルトを超える電圧をいう。以下同じ。)の充電電路若しくは当該充電電路の支持物の敷設、点検、修理若しくは操作の業務、低圧(直流にあつては七百五十ボルト以下、交流にあつては六百ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)の充電電路(対地電圧が五十ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害を生ずるおそれのないものを除く。)の敷設若しくは修理の業務(次号に掲げる業務を除く。)又は配電盤室、変電室等区画された場所に設置する低圧の電路(対地電圧が五十ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害の生ずるおそれのないものを除く。)のうち充電部分が露出している開閉器の操作の業務
四の二~四十一 (略)
(低圧活線近接作業)
第347条 事業者は、低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させ、又は活線作業用器具を使用させなければならない。
2 (略)
(低圧活線近接作業)
第347条 事業者は、低圧の充電電路に近接する場所で電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が当該充電電路に接触することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触するおそれのないときは、この限りでない。
2及び3 (略)
(2)違反とはならない。安衛法第45条の定期自主検査の対象となるものは、安衛令第15条第1項に定められている。その第一号に「前条(第14条の2:引用者注)第十号及び第十一号に掲げる機械等」とあるが、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置は第14条の2第1項第九号に定められている。したがって、ボイラーの胴の内部で交流アーク溶接の作業を行うときに使用するものであると否とにかかわらず。交流アーク溶接機用自動電撃防止装置は定期自主検査の対象とはならない。
また、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用する日の使用開始前に作動状態について点検を行っていることについては、それ自体が違反とはなり得ない(※)。なお、安衛則第352条参照。
※ 他のことはしなかったとか、点検の結果なにもしなかったなどと言っているわけではないのである。
【労働安全衛生法】
(定期自主検査)
第45条 事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。
2~4 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(型式検定を受けるべき機械等)
第14条の2 (柱書 略)
一~八 (略)
九 交流アーク溶接機用自動電撃防止装置
十~十三 (略)
(定期に自主検査を行うべき機械等)
第15条 法第四十五条第一項の政令で定める機械等は、次のとおりとする。
一 第十二条第一項各号に掲げる機械等、第十三条第三項第五号、第六号、第八号、第九号、第十四号から第十九号まで及び第三十号から第三十四号までに掲げる機械等、第十四条第二号から第四号までに掲げる機械等並びに前条第十号及び第十一号に掲げる機械等
二~十一 (略)
2 (略)
【労働安全衛生規則】
(電気機械器具等の使用前点検等)
第352条 事業者は、次の表の上欄に掲げる電気機械器具等を使用するときは、その日の使用を開始する前に当該電気機械器具等の種別に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる点検事項について点検し、異常を認めたときは、直ちに、補修し、又は取り換えなければならない。
作業の区分 | 基準 |
---|---|
(略) | (略) |
第三百三十二条の交流アーク溶接機用自動電撃防止装置 | 作動状態 |
(略) | (略) |
(3)違反となる。本肢の作業は、6.6キロボルトの高圧の電路の支持物の点検の作業を、電路を開路し停電にしてから当該作業を行わせたとあるので、安衛則339条の停電作業に該当する。
従って、同規則第350条の規定により、作業に従事する労働者に作業の内容について周知させ、かつ、作業の指揮者を定めなければならない。
【労働安全衛生規則】
(停電作業を行なう場合の措置)
第339条 事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じなければならない。当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。
一~三 (略)
2 (略)
(電気工事の作業を行なう場合の作業指揮等)
第350条 事業者は、第三百三十九条、第三百四十一条第一項、第三百四十二条第一項、第三百四十四条第一項又は第三百四十五条第一項の作業を行なうときは、当該作業に従事する労働者に対し、作業を行なう期間、作業の内容並びに取り扱う電路及びこれに近接する電路の系統について周知させ、かつ、作業の指揮者を定めて、その者に次の事項を行なわせなければならない。
一~三 (略)
(4)違反とはならない。対地電圧が200ボルトの可搬式電気ドリルを使用するときは、安衛則第333条により、原則として当該電気ドリルが接続される電路に感電防止用漏電遮断装置は取り付けなければならない。
しかし、同規則第334条(第二号)により、絶縁台の上で当該電気ドリルを使用させる場合は、第333条の規定は適用されない。
なお、違反とはならないが、コンサルタント試験合格後の実務においては、絶縁台の上で当該電気ドリルを使用させる場合であっても、感電防止用漏電遮断装置が設置されている電源を使用するべきである。
【労働安全衛生規則】
(漏電による感電の防止)
第333条 事業者は、電動機を有する機械又は器具(以下「電動機械器具」という。)で、対地電圧が百五十ボルトをこえる移動式若しくは可搬式のもの又は水等導電性の高い液体によつて湿潤している場所その他鉄板上、鉄骨上、定盤上等導電性の高い場所において使用する移動式若しくは可搬式のものについては、漏電による感電の危険を防止するため、当該電動機械器具が接続される電路に、当該電路の定格に適合し、感度が良好であり、かつ、確実に作動する感電防止用漏電しや断装置を接続しなければならない。
2 (略)
(適用除外)
第334条 前条の規定は、次の各号のいずれかに該当する電動機械器具については、適用しない。
一 (略)
二 絶縁台の上で使用する電動機械器具
三 (略)
(5)安衛則第338条但書きの規定により、対地電圧が100ボルトの移動電線を通路面において使用するとき、当該電線を金属管内に収め、絶縁被覆の損傷のおそれのない状態にしたので、車両等が当該電線の上を通過することを禁止しなかったとしても違反とはならない。
【労働安全衛生規則】
(仮設の配線等)
第338条 事業者は、仮設の配線又は移動電線を通路面において使用してはならない。ただし、当該配線又は移動電線の上を車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態で使用するときは、この限りでない。