労働安全コンサルタント試験 2012年 産業安全関係法令 問02

建設業に係る安全管理体制




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 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問02 難易度 建設業の安全管理体制は、例年難易度の高い問題が出される。今年もやや詳細な内容であった。
建設業の安全管理体制

問2 建設業に係る安全管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)元方安全衛生管理者を選任すべき事業者は、元方安全衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、選任報告書を、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

(2)元方安全衛生管理者を選任すべき事業者は、元方安全衛生管理者の選任は、その事業場に専属の者を選任して行わなければならない。

(3)店社安全衛生管理者を選任すべき事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われるときに設置される協議組織の会議に、店社安全衛生管理者を随時参加させなければならない。

(4)店社安全衛生管理者を選任すべき事業者は、選任した店社安全衛生管理者が事故によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならない。

(5)元方事業者は、一の場所において、主要構造部が鉄骨鉄筋コンクリート造である建築物の建設の仕事であって、元方事業者の労働者及び関係請負人の労働者が常時20人以上50人未満であるものに係る作業を行うときは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、店社安全衛生管理者を選任しなければならない。

正答(1)

【解説】

(1)誤り。元方安全衛生管理者を選任すべき事業者は、元方安全衛生管理者を選任しなければならないときに、当該作業の開始後、遅滞なく、選任しなければならない旨及び元方安全衛生管理者の氏名を、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

本肢のように「元方安全衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、選任報告書を、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない」とはされていない。

【労働安全衛生法】

(元方安全衛生管理者)

第15条の2 前条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業その他政令で定める業種に属する事業を行うものは、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、元方安全衛生管理者を選任し、その者に第三十条第一項各号の事項のうち技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(報告)

第664条 特定元方事業者(法第三十条第二項又は第三項の規定により指名された事業者を除く。)は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われるときは、当該作業の開始後、遅滞なく、次の事項を当該場所を管轄する労働基準監督署長に報告しなければならない。

一~三 (略)

 法第十五条の二の規定により元方安全衛生管理者を選任しなければならないときは、その旨及び元方安全衛生管理者の氏名

 (略)

 (略)

(2)正しい。安衛則第18条の3の規定により、元方安全衛生管理者を選任すべき事業者は、元方安全衛生管理者の選任は、その事業場に専属の者を選任して行わなければならない。

【労働安全衛生法】

(元方安全衛生管理者)

第15条の2 前条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業その他政令で定める業種に属する事業を行うものは、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、元方安全衛生管理者を選任し、その者に第三十条第一項各号の事項のうち技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(元方安全衛生管理者の選任)

第18条の3 法第十五条の二第一項の規定による元方安全衛生管理者の選任は、その事業場に専属の者を選任して行わなければならない。

(3)正しい。安衛則第18条の8の規定により、店社安全衛生管理者を選任すべき事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われるときに設置される協議組織の会議に、店社安全衛生管理者を随時参加させなければならない。

【労働安全衛生法】

(店社安全衛生管理者)

第15条の3 建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が一の場所(これらの労働者の数が厚生労働省令で定める数未満である場所及び第十五条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所を除く。)において作業を行うときは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、これらの労働者の作業が同一の場所で行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における第三十条第一項各号の事項を担当する者に対する指導その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

 第三十条第四項の場合において、同項のすべての労働者の数が厚生労働省令で定める数以上であるとき(第十五条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならないときを除く。)は、当該指名された事業者で建設業に属する事業の仕事を行うものは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、これらの労働者に関し、これらの労働者の作業が同一の場所で行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における第三十条第一項各号の事項を担当する者に対する指導その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。この場合においては、当該指名された事業者及び当該指名された事業者以外の事業者については、前項の規定は適用しない。

(特定元方事業者等の講ずべき措置)

第30条 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない。

 協議組織の設置及び運営を行うこと。

二~五 (略)

2~4 (略)

【労働安全衛生規則】

(店社安全衛生管理者の職務)

第18条の8 法第十五条の三第一項及び第二項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

一及び二 (略)

 法第三十条第一項第一号の協議組織の会議に随時参加すること

 (略)

(4)正しい。安衛則第20条の規定により、店社安全衛生管理者を選任すべき事業者は、選任した店社安全衛生管理者が事故によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならない。

【労働安全衛生規則】

(総括安全衛生管理者の代理者)

第3条 事業者は、総括安全衛生管理者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によつて職務を行なうことができないときは、代理者を選任しなければならない。

(統括安全衛生責任者等の代理者)

第20条 第三条の規定は、統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者、店社安全衛生管理者及び安全衛生責任者について準用する。

(5)安衛法第15条の3による元方事業者の選任義務は、同条括弧書きにより、以下の場合は除かれる。

  • ① その労働者及び関係請負人の労働者の合計数が安衛則によって定める数字未満の事業場(下限)
  • ② 統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所(上限)

そして、①は安衛則第18条の6(第一号)により、主要構造部が鉄骨鉄筋コンクリート造である建築物の建設の仕事については、元方事業者の労働者及び関係請負人の労働者が常時20人と定めている。

また、②の統括安全衛生責任者の選任は、安衛法第15条第1項(及び第3項)によって義務付けられている。ここで、第1項但書き(及び第3項本文)によって元方事業者の労働者及び関係請負人の労働者の数が、政令で定める数未満の場合は除かれている。

そして、安衛令第7条第2項(第二号)は、本肢の工事の場合は50人と定めている(従って、50人以上の場合は統括安全衛生責任者を選任しなければならない)。

従って、①及び②は、以下のようになる。主要構造部が鉄骨鉄筋コンクリート造である建築物の建設の仕事であって、元方事業者の労働者及び関係請負人の労働者が常時20人以上50人未満であるものに係る作業を行うときは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、店社安全衛生管理者を選任しなければならない。

  • ① 20人未満が除かれる。(下限)
  • ② 50人以上が除かれる。(上限)

【労働安全衛生法】

(統括安全衛生責任者)

第15条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない

 (略)

 第三十条第四項の場合において、同項のすべての労働者の数が政令で定める数以上であるときは、当該指名された事業者は、これらの労働者に関し、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、同条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。この場合においては、当該指名された事業者及び当該指名された事業者以外の事業者については、第一項の規定は、適用しない。

4及び5 (略)

(店社安全衛生管理者)

第15条の3 建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者が一の場所(これらの労働者の数が厚生労働省令で定める数未満である場所及び第十五条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任しなければならない場所を除く。)において作業を行うときは、当該場所において行われる仕事に係る請負契約を締結している事業場ごとに、これらの労働者の作業が同一の場所で行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、店社安全衛生管理者を選任し、その者に、当該事業場で締結している当該請負契約に係る仕事を行う場所における第三十条第一項各号の事項を担当する者に対する指導その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)

第7条 (第1項 略)

 法第十五条第一項ただし書及び第三項の政令で定める労働者の数は、次の各号に掲げる仕事の区分に応じ、当該各号に定める数とする。

 ずい道等の建設の仕事、橋りようの建設の仕事(作業場所が狭いこと等により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所として厚生労働省令で定める場所において行われるものに限る。)又は圧気工法による作業を行う仕事 常時三十人

 前号に掲げる仕事以外の仕事 常時五十人

【労働安全衛生規則】

(店社安全衛生管理者の選任に係る労働者数等)

第18条の6 法第十五条の三第一項及び第二項の厚生労働省令で定める労働者の数は、次の各号の仕事の区分に応じ、当該各号に定める数とする。

 令第七条第二項第一号の仕事及び主要構造部が鉄骨造又は鉄骨鉄筋コンクリート造である建築物の建設の仕事 常時二十人

 (略)

 (略)

2021年12月02日執筆