労働安全コンサルタント試験 2012年 産業安全一般 問19

個人用保護具




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合格

 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問19 難易度 個人用保護具に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
個人用保護具

問19 保護具に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)レーザー用保護めがねは、フィルタの吸収波長バンド幅が比較的広いので、レーザーの波長に関係なく使用できる。

(2)7000V以内である電路について用いる絶縁用保護帽は、20000Vの耐電圧試験を行ったときに1分間耐える性能が要求されている。

(3)飛来落下防護用の保護帽は、帽体及び着装体の一部が破壊又は損傷することによって衝撃エネルギーを吸収するように製造されている。

(4)静電気帯電防止靴は、靴底の電気抵抗が小さいので、感電のおそれのある場所で使用してはならない。

(5)U字吊り用のワークポジショニングシステムを用いる場合には、別途、墜落制止用器具を併用しなければならない。

※ (5)は、出題後の省令等の改正に合わせて、一部修正を行っている。

正答(1)

【解説】

(1)適切ではない。JIS T 8143:1994「レーザ保護フィルタ及びレーザ保護めがね」の「6.1.2 保護濃度」の(2)に「保護濃度は,レーザの波長又は波長範囲ごとに決定すること」とされている。

レーザー用保護めがねは、以下により適切なものを選定しなければならない。動作波長については、レーザー用保護めがねには、波長とその波長における光学濃度が示されているので、対象となるレーザーの波長の必要光学濃度より大きな光学濃度を持つ保護具を選定しなければならない(※)

  • ① レーザー製品のクラス分類
  • ② 動作波長
  • ③ 限界開口
  • ④ 放射露光または放射照度
  • ⑤ 最大許容露光量(MPE)

※ 石場義久「レーザー用保護めがねの使用時における留意点」(日レ医誌 Vol.40 No.2 2019年)。

(2)適切である。「絶縁用保護具等の規格」(昭和47年12月4日 労働省告示第144号)第3条により、7000V以内である電路について用いる絶縁用保護帽は、20000Vの耐電圧試験を行ったときに1分間耐える性能が要求されている。

【絶縁用保護具等の規格】

(絶縁用保護具の耐電圧性能等)

第3条 絶縁用保護具は、常温において試験交流(五十ヘルツ又は六十ヘルツの周波数の交流で、その波高率が、一・三四から一・四八までのものをいう。以下同じ。)による耐電圧試験を行つたときに、次の表の上欄に掲げる種別に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる電圧に対して一分間耐える性能を有するものでなければならない。

絶縁用保護具の種別 電圧(単位 ボルト)
(略) (略)
電圧が三、五〇〇ボルトを超え七、〇〇〇ボルト以内である電路について用いるもの 二〇、〇〇〇

 (略)

(3)適切である。保護帽は、帽体が硬いから頭部を守れるのではない。帽体が固ければ衝撃がそのまま頭部に伝わってしまう。ハンモックの伸び、衝撃吸収ライナーのつぶれ、帽体のゆがみや割れによって頭部を守るのである。

なお、帽体が歪んだ後で破壊されないと、ゆがみが復元するときに頸椎に損傷を与えることになる。そのためFRPの保護帽などは、衝撃を受けると帽体が割れるように設計されている。

(4)やや疑問はあるが適切であるとしておく。静電気帯電防止靴は、人体への帯電を防止することを目的としており、靴底の電気抵抗が小さくしている。そのため、JIS T 8103:2010「静電気帯電防止靴」は導電靴については、「導電靴は交流 100 V 以下の低電圧路でも感電事故の危険性があるので,その使用に当たっては,感電のおそれがないと判断される条件下での作業に限定して使用するように,注意しなければならない」としている。

ただ、静電靴については、「抵抗の下限値(1×105 Ω)は,低電圧路(交流 400 V 以下)に接触した場合に,人体の感電を考慮して設けられている」としている。そのため、例えば、松尾(※)は「低電回路の活線に触れた場合の感電の危性を考慮した“静電靴:1.0×105~1.0×108Ω“が望ましい」として、必ずしも静電気帯電防止靴を感電の危険がある場合に絶対に使用してはならないとはしていない。

※ 松尾義輝「12 帯電性(静電気帯電防止用安全・作業靴)」(機消誌 Vol.40 No.11 1999年)

(5)適切である。本肢は、出題当時は「U字つり専用の安全帯を使用する場合、フックをD環にかけ外しする際に誤って墜落するのを防止するためには1本つり専用のランヤードを併用する。」とされ、適切な肢であった。

問題文にも注記したが、その後、法令改正があり、安全帯は墜落制止用器具と名称を変え、改正前のU字つり専用の安全帯は、改正によりワークポジショニングシステムという位置づけで、墜落制止用器具の範疇から外された。そのため、現時点ではU字吊り用のワークポジショニングシステムを用いる場合には、別途、墜落制止用器具を併用しなければならなくなっている。

※ 今後、U字吊り型で、墜落制止用器具の規格を満足する製品が開発されれば、併用の必要がなくなることは当然である。

2021年12月16日執筆 2024年08月25日改訂