労働安全コンサルタント試験 2012年 産業安全一般 問15

安全装置等の検査・点検




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 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問15 難易度 安全装置等の検査・点検に関する基本的な知識問題である。正答できなければならない。
安全装置等の検査・点検

問15 安全装置等の検査・点検に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)プレスの両手操作式安全装置において、両手で左右の押しボタンを同時に押し続けても一行程後上死点で停止し、押しボタンの一方を押し続けた状態で他方のボタンを押しても再起動しないことを確認した。

(2)移動式クレーンの過負荷防止装置の作動試験において、一定のジブ長さでジブの傾斜角を20度から60度まであげる操作を行ったところ、過負荷防止装置が作動することを確認した。

(3)コンベヤーに取り付けたワイヤ式非常停止装置において、ロープを引くとコンベヤーが急停止することを確認した。

(4)無人搬送車において、走行中に走行警報器から周囲の騒音よりも高い音圧レベルの警報音が発せられていることを確認した。

(5)インターロックガードを有する産業用ロボットシステムにおいて、ガードを開けたときにロボットシステムが停止することを確認した。

正答(2)

【解説】

(1)適切である。「プレス機械の安全装置管理指針」(通達)の第5の「2 定期検査」において、両手操作式安全装置(安全一行程式)の検査項目として「確実に一行程で上死点にて停止すること」を挙げる。

また、安全装置の点検方法として、実際に作動することを確認することは適切な方法である。したがって、プレスの両手操作式安全装置において、両手で左右の押しボタンを同時に押し続けても一行程後上死点で停止することを確認し、さらに押しボタンの一方を押し続けた状態で他方のボタンを押しても再起動しないことを確認することは適切である。

(2)適切ではない。平成17年4月1日基発第0401035号「登録製造時等検査機関が行う製造時等検査、登録個別検定機関が行う個別検定及び登録型式検定機関が行う型式検定の適正な実施について」の「別紙3」の「表4 クレーン又は移動式クレーンの過負荷防止装置」において「申請された過負荷防止装置をジブクレーン又は移動式クレーン(申請装置に対応した機械。以下この表において「当該クレーン」という。)に取り付け、定格荷重表を参考に荷重を決定した荷を吊って地切りし、徐々にジブを伏せていくことにより、当該クレーンの作動を自動的に停止させる機能及び作動精度、若しくは警音を発する機能及び作動精度が適正であることを確認すること」とされている。

本肢の「移動式クレーンの過負荷防止装置の作動試験において、一定のジブ長さでジブの傾斜角を20度から60度まであげる操作を行ったところ、過負荷防止装置が作動することを確認した」という意味がやや不明である(※)が、上記通達による実機を用いた過負荷防止装置の検査方法と異なるので不適切であるという趣旨らしい。

※ 何もせずに、ただ一定のジブ長さでジブの傾斜角を20度から60度まであげる操作を行ったとしても、過負荷防止装置が作動するわけがない。傾斜角を上げれば安定度が増して、かえって定格荷重が上がるので、過負荷防止装置が作動するわけがないのである。

(3)適切である。コンベヤには安衛則第151条の78により非常停止装置を設置しなければならないが、この非常停止装置は「昭和53年2月10日基発第78号」により「ロープ式非常停止装置のようにコンベヤーに沿ってロープが張られこのロープを引くことによってコンベヤーの運転を直ちに停止できるもの」などがあるとされている。

そして、(1)の解説で述べたように安全装置の点検方法として、実際に作動することを確認することは適切な方法である。従って、ロープを引くとコンベヤーが急停止することを確認する方法は不適切なものではない。

(4)適切である。本肢は、不適切であるとする余地がない。無人搬送車の走行中の走行警報器に限らず、警報音が周囲の騒音よりも高い音圧レベルであることを確認することが不適切なわけがないだろう。

(5)適切である。「産業用ロボットの使用等の安全基準に関する技術上の指針」は、「4-1-1 さく又は囲い」の(2)において「出入口を設ける場合にあっては、次のいずれかの措置を講ずること」とし、そのひとつとして「出入口に扉等を設け、又はロープ、鎖等を張り、かつ、これらを開け、又は外した場合に非常停止装置が自動的に作動する機能(インターロック機能)を有する安全プラグ等を設置すること」としている。

その点検として、ガードを開けたときにロボットシステムが停止することを確認する方法は、(1)及び(3)の解説で述べた理由により妥当なものである。

2021年12月15日執筆