安全衛生コンサルタントのWEB活用法




トップ

※ イメージ図(©videoAC)

現代は、労働安全衛生コンサルタントのような個人事務所にとって、ホームページの公開は必要不可欠といえます。

とりわけ新規に開設した事務所にとって、ホームページでの営業の成否は収入に直結するものと言わざるをえません。

労働安全衛生コンサルタントの経営に、どのようにインターネットを活かしてゆくか、その目的、具体的な方法、また、それによって何を求めるかについて解説しています。




1 ホームページ公開の2つの目的

執筆日時:

最終修正:

パソコンを使用する女性

※ イメージ図(©photoAC)

労働安全衛生コンサルタントとして事務所を創設するなら、WEB サイト(ホームページ)は必ず作成した方がよい。もちろん、ホームページを公開したからといって、そのことだけで顧客が獲得できるわけではない。

現代においては、個人事務所であってもホームページを公開しておかないとマイナス要因になるのだ。そして、個人事務所で ホームページを公開する主な目的は2つである。

【ホームページ公開の目的】

  • 顧客の候補となる企業に、業務の内容や依頼の方法を知らせること
  • 安全衛生について調べている企業担当者に、事務所の存在を知ってもらうこと

もちろん、ホームページを公開しても、全く知らない相手がサイトを見て依頼してくるというケースは少ないと思う。しかし、ホームページがきっけとなって顧客となるケースは少なくない。サイトがなければせっかくのビジネスチャンスを無駄にするのである。

また、他の方法で営業をする場合であっても、最近の企業は、契約しようとする相手をネットで調べることがほとんどであり、ホームページがないと相手にしてもらえないケースもあるのだ。


2 自らの能力、実績を知っていただくこと

個人事務所における ホームページ公開の第一の目的は、営業活動の対象である顧客となり得る企業に対して、自分が何をできるのかを明確にして、自分に仕事を依頼しても大丈夫だと納得してもらうことである(※)

※ 名刺にはサイトの二次元バーコードを印刷しておくとよい。なお、コンサルタントの営業活動については別稿の「安全衛生コンサルタント事務所経営」を参照して欲しい。

そのためには、自らの得意分野、経歴、実績、利用料金(※)等を明らかにしなければならない。利用を考えている事業者の立場で読んだ場合に、一番知りたいことは何かを考えて、それを書く必要がある。これらが記されていない ホームページではその役目を果たさない。

※ 利用料金を明記せずに「料金はお問合せ下さい」などとぼやかすことは避けなければならない。価格が明確になっていれば問い合わせてくる可能性のある顧客も、わざわざ電話をかけて価格を確かめたりはしない。ビジネスチャンスを逃すだけである。

パソコンで説明する女性

※ イメージ図(©photoAC)

また、どのような状況下で何ができるのかを具体的に説明すると利用しようという気になりやすい。「監督官から臨検監督を受けた場合の対応への助言」、「安全衛生大会での安全講和」、「特別教育の実施」、「職長教育の実施」など具体的な例を挙げると効果的だろう。

さらに実績を差し支えない範囲で詳細に書くと、利用する側は安心できる。顧客の了解が得られれば、顧客(企業名)のリストを出すと良い。

関係する書籍を執筆していたり、労働災害防止団体や業界団体の機関誌・学会誌などの専門誌に記事を執筆したことがあれば、それも挙げておく。また、業界団体の関係する委員会の委員を務めたことがあればそれも挙げておく。日本人は自己アピールが苦手な方が多いが、そのことに躊躇してはならない。

連絡先は、電話番号だけではなく、メールフォームも必ず入れておくこと。なお、FAX 番号は付けない方がよい(※)

※ FAX は誤送信のおそれがあるため好ましくない。メールフォームの方がユーザにとっても便利である。

また、できれば顔写真は付けておくべきである。顔写真があれば、利用する側には安心感が出るのである。なお、趣味や家族構成を書く必要はない(※)。親しみを持ってもらえると思うかもしれないが、そんなことで親しみを持って仕事を依頼してくる企業は存在しない。

※ 書くのであれば、別途「所長のブログ」を立ち上げて、そこに仕事関連の記事の中に1割か2割程度の趣味の記事を入れればよい。ブログであっても、メインは仕事に関する記事とする必要はある。


3 新しい顧客の開拓

(1)SEO は必要不可欠

新しい顧客を ホームページで開拓することは、難しいが可能である。ただ、そのためには、「〇〇市 労働安全コンサルタント」などで検索したときに、検索結果の上位に表示されなければならない(※)。より、露骨な表現をすれば、Google の検索結果で上位に表示されるようにしなければならない。上位に表示されないサイトは、検索する側にとってはないのと同じである。

※ 自分のサイトが検索結果の上位に掲示されるようにする対策を、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)と呼ぶ。

多くの ホームページの運営者は、この SEO に力を入れており、こうすれば上位に表示されるという確立した方法があるわけではない。

Googleは、当然ながらどのようなサイトが上位に表示されるかの具体的な手法は公開していないが、次のようなことが重要であるとアナウンスしている。

【SEOに効果があること】

  • 内容が閲覧者の役に立つこと(内部SEO)
  • 他のサイトからそのサイトにリンクしている数(被リンク数)が多いこと(外部SEO)(※)
  • 検索結果からそのサイトを閲覧した者が満足すること
  • ※ 外部に形だけのサイトを作成してリンクを張るような行為(ブラックハット対策)は逆効果となる。

すなわち、Googleの検索エンジンは、記載されている内容、そのページに他のサイトからリンクされている数を判断して検索結果の順位を決定するのである。そして、実際に検索結果からそのページを閲覧した者がすぐに退出して検索結果のページに戻るようだと、そのページは役に立っていないと判断してその順位を下げてしまうのである。

言葉を換えれば、閲覧者にとって役に立つサイトにすることが、SEO には不可欠だということである。

また、サイトへのリンクは完全には自由にならないが、ある程度は方法がないわけではない(※)。他にきちんとしたサイトを保有しているのであれば、そこからリンクを張ることは意味はあるだろう。

※ コンサルタント会に入会した場合、本部と支部のサイトから個々のコンサルタントの ホームページにリンクが張られる。一般論としては、公的な機関なので、そこからリンクされることは SEO の効果が期待できるので、このリンクも張るように申請した方がよい。

ただし、本部の「会員へのサイト」のページは、かなりのリンク切れがあるだけでなく、リンク先がドメインを販売する業者や無関係なサイトになっていたりする。おそらく元のサイトの所有者がドメインを手放したり、そのドメインを他の業者が使用したりしているのであろう。

しかも、最近、そのようなリンク先にやや芳しくないサイトが加わった。そのため、コンサルタント会へのリンクは、SEO に一定のリスクが生じるかもしれない。その後、私はコンサルタント会へのリンクにはすべてaタグのなかに「rel="nofollow"」との記述を追加した。こうすることで、Google に対して、私がコンサルタント会のサイトをフォーローしているわけではないとアピールしたのである。こんなことをするのは悲しいが、やむを得ないだろう。


(2)閲覧者にとって必要な情報を提供すること

パソコンを使用する女性

※ イメージ図(©photoAC)

また、コンサルタントを探している閲覧者は、なんらかの安全衛生上の問題を解決したいのである。従って、コンサルタントを探している閲覧者が困っていることは何かを考えて、ホームページ上でその答えを提供することが効果的である。

大手の、士業(弁護士、司法書士、社労士など)の事務所で、それぞれの職務に関係する詳細な資料を無償でアップしているサイトが数多くあることは、ネットを利用していればご存じだろう。

それは、その士業の事務所がその問題について解決できる、あるいは専門知識があるということをアピールしているわけである。そして、それが SEO にも役に立つのである。

新しい顧客を ホームページで開拓したいのであれば、閲覧者にとって役に立つ安全衛生情報をサイトで提供することが必要になる。


4 ホームページは見やすく分かりやすいものに

もちろん、せっかく ホームページを公開しても、見た目が悪かったり使い勝手が悪かったりすれば、技術力がないと思われて逆効果になりかねない。次のようなサイトは避けるべきである。そして、これらはSEOにも影響がある。

【避けるべき ホームページの例】

  • 表示されるまでの時間が極端に長い。(できれば2秒、最悪でも3秒で表示されるべき)
  • デザインが極端に古くさかったり、文字配列などが崩れていたりする。
  • 常時 SSL 化(URL の最初がhttps://になる)されていない。
  • 個人情報保護方針(プライバシー・ポリシー)がない。
  • 更新情報があるにもかかわらず、最終更新日が極端に前のものとなっている。
  • スマホ対応(レスポンシブデザインなど、幅の狭いデバイスでの表示を適切なものにする)されていない。
  • UI デザインに配慮されていない。(探しているコンテンツがどこにあるか分からなかったり、どうみてもリンクと思える部分にリンクがなかったり、操作性が悪いなど。ユーザが感覚的に操作方法が分からない。)

デザインが極端に古臭かったり、乱れがあったりすれば、検索によってあなたの ホームページを訪れる方は、技術力が低いか儲かっていない(※)事務所だと思って内容を見ずに離脱してしまう。今は、個人事務所だったとしても、一定レベル以上の ホームページがないと信用されない時代なのである。

※ 最低限の要件を満たしていないホームページを公開していれば技術力に疑問を持たれるだろう。また、サイトにカネをかけるだけの資力がない、従って儲かっていない、ということは能力が低いと考えられてしまうのである。

昔と違い、現在は WordPress を用いて、公開されているテンプレートを利用すれば、素人でもある程度のサイトができてしまう。さらにプラグインを用いればメールフォームなども簡単に作れる(※)のである。その程度の手間を惜しんではいけない。

※ テンプレート(テーマ)もメールフォームのプラグインも無償のものが存在している。テーマは有償のものでも1万円台(買切り)で入手できる。

個人情報保護法

※ イメージ図(©photoAC)

また、常時 SSL 化されていなかったり、個人情報保護方針がなかったりすれば、顧客は、個人情報の取扱いの意識が低いか、理解が浅い事務所だと不安を感じてしまう。これでは、きちんとした企業は、依頼をするのに二の足を踏むだろう。

なお、連絡先としてメールアドレスをそのまま掲示している ホームページを見かけることがあるが、メールフォームに変更するべきである。メールアドレスをさらしておくとスパムメールが大量に届くようになる。さらに、公開されているメールアドレスを発信元として「なりすましメール」に悪用されるおそれもある。さらにはセキュリティに関する知識がないと思われかねない。

また、最終更新時期が何年も前だったりすれば、読む方は、営業をしていないのではないかと不安になる。半年も前の更新情報を乗せるくらいなら、更新情報は削除した方がよい。

さらに、これはサイトのデザインとは関係がないが、Googleアナリティクス4を設置しておいた方がよい。アクセス分析のためには必須のツールである。


5 インターネットをどう活用するのか

(1)ネット利用の目的は、実績と能力のアピール

インターネットのイメージ

※ イメージ図(©photoAC)

まとめとして、インターネットをどう活用するのかを総合的に考えてみよう。要は、ネットを利用して自分には仕事を依頼する価値があるということを、顧客になり得る企業にアピールすることである。

先ほども述べたが、大企業の安全衛生担当者の経験や、行政や労働災害防止団体で安全衛生の仕事をした実績があれば、遠慮せずにそれを前面に押し出せばよい。

安全衛生関連の書籍を執筆していれば、それも信頼を得るための材料になろう。安全衛生関連の受賞歴や、他の資格もアピールすべき材料になる。

問題は、そのような実績がない場合である。当然のことながら、資格を取っただけで実績もなく、開業したばかりの事務所に仕事を依頼しようという企業はないといってよい。

その場合は、大企業の安全衛生担当者の経験や、役所や労働災害防止団体での実績があるコンサルタントと張り合わなければならない。実績がなければ能力をアピールすることが重要になるのである。


(2)能力をアピールする2つの方法

そのためには、事業者や企業の安全衛生担当者が、いま最も困っていることで、ネットで調べそうなことについての解説をホームページに挙げるのである(※)。分かりやすく、説得力があり、根拠が明快な文章とする必要がある。できれば、図表や箇条書きなども多用すると読みやすくなる。

※ 特徴のある内容であれば、意外に検索で上位にヒットする。ただし、サイト内にある程度の記事数がないと、検索エンジンから相手にされないので、地道に記事を書いていくことが重要である。

ホームページが大変であればブログでもよい。SEOの効果は大して変わらない。ただし、サイトにリンクを張っておくこと。

動画の講義を撮影する女性

※ イメージ図(©photoAC)

また、YouTubeを活用することもよいかもしれない。事業者が調べそうなことについて、10 分程度(※)で、論理的に筋道を立てて、説得力のある内容を、滑舌よく(字幕を付けると効果的)、聞き取りやすい速度で、かつ自信のある態度で話すのである。

※ あまりに短いとアピールすることはできない。かといって15分より長いと、まず誰も視聴しない。10 分から 15 分程度の長さで、説明する項目はひとつだけにする。このような動画を何本か作成して、YouTube にアップする。そして、自分のサイトに動画のコードを埋め込んで、視聴できるようにしておく。

動画を直接、自分のサイトに設置するのではなく、YouTube を利用するのは、開設したばかりのサイトより、YouTube の方が視聴される機会が多いからである。この場合、必ず、YouTubeの概要欄に自分のサイトへのリンクを張り、そのことを動画の中で紹介すること。

なお、Facebook と Twitter も余裕があれば利用しても良いかもしれない。ハッシュタグを用いて閲覧されやすくし、Facebook は関係するグループに入ることで閲覧されやすくなる。自分のサイトにリンクを張った記事を載せることで、視聴者を呼び込める。

※ ただ、私の経験だと、閲覧者の多くは検索サイト(organic search)から獲得され、SNSからの閲覧者は多くはない。


(3)最後に

「インターネットは弱者の武器」とはよく言われることである。多くの企業のみならず、政治家や各種の自由業まで、ネットを活用することは現代のビジネスを生き抜くための必要不可欠なツールである。

残念ながら、労働安全衛生の分野ではネットの活用があまり進んでいないようだ。これは、これまでの安全衛生対策が、真の安全衛生対策ではなく「安全衛生対策」だったことや、能力を活かして生き残りをかけるような業界ではなかったことも一因かもしれない。

パソコンの前で微笑む女性

※ イメージ図(©photoAC)

しかし、時代は変わっている。安全衛生教育の実施やコンサルティングについても、ネットを活用して成長する時代が来ているのである。ホームページというと苦手意識を持たれるかもしれないが、今では ホームページなど様々なツールを用いれば専門的な知識がなくても簡単に作れる時代なのである。

労働安全衛生コンサルタントの分野においても、ネットの活用を考えていかなければならない時代はすでに到来しているのである。


【関連コンテンツ】

事務所の案内をする女性

安全衛生コンサルタント事務所経営

安全衛生コンサルタントの事務所の営業に必要なことについて解説しています。





プライバシーポリシー 利用規約