有職者のコンサルタント登録の在り方



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※ イメージ図(©photoAC)

労働安全衛生コンサルタント試験に合格しても、それだけでは法律的に労働安全衛生コンサルタントになれるわけではありません。

試験に合格した上で、「氏名、事務所の所在地その他厚生労働省令で定める事項」を登録(※)することで労働安全衛生コンサルタントになることができるのです(安衛法第 84 条)。

※ この登録は、現在は(公社)安全衛生技術試験協会に対して行う(安衛法第85条の2)。

そして、登録は、コンサルタント登録申請書(コンサルタント則様式第3号)を提出することによって行います。この様式には、「④事務所の名称及び所在地」という欄があり、登録をするためにはその記入をしなければなりません(※)

※ (公社)安全衛生技術試験協会の「労働安全・労働衛生コンサルタント登録についてよくあるご質問」によれば、「事務所の名称及び所在地は、登録証に記載されますので申請書に記入がないと登録できません」とされている。

このため、有職者の方で、勤務先が副業を認めていない場合、退職するまで登録ができないのではないかと思われる方も多いようです。

結論を言えば、事務所を開設していなくても登録は可能です。なお登録をしないまま労働安全衛生コンサルタントを称することは望ましいことではありません(※)

※ 登録をせずに労働安全衛生コンサルタントを名乗ることは、それだけでは法違反ではないが、本項で述べるように様々な理由から避けるべきである。

本稿では、試験に合格後、有職者の方が労働安全衛生コンサルタントを称するための方法について、法的な根拠とともに解説しています。




1 有職者が労働安全衛生コンサルタントを名乗るときの問題

執筆日時:


(1)労働安全衛生コンサルタントの業務とは

登録

※ イメージ図(©photoAC)

労働安全衛生コンサルタントとは、安衛法第 81 条の規定により「他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の安全の水準の向上を図るため、事業場の安全又は衛生についての診断及びこれに基づく指導を行なうことを業とする」ものである。

しかし、労働安全衛生コンサルタント試験(以下たんに「試験」という。)を受験する方は、雇用されている労働者であることの方が多いというのが現実である。そして、その多くは製造業、建設業、医療機関などに勤務しており、勤務先が安衛法第 81 条のようなコンサルティング業務を行っているわけではない。

とは言え、この試験を受ける方の多くは安全又は衛生に関連する業務に従事している。そうであってみれば試験に合格した以上、労働安全衛生コンサルタントを名乗りたいというのが人情であろう。


(2)労働安全衛生コンサルタントになるには

労働安全衛生コンサルタントになるには、安衛法第 84 条の規定により、試験合格後に「氏名、事務所の所在地その他厚生労働省令で定める事項」(コンサルタント則第16条)の登録をする必要がある。

そして、登録は、コンサルタント則第17条により、「コンサルタント登録申請書」(様式第3号)を厚生労働大臣(※)に提出して行う。

※ 実際には、(公社)安全衛生技術試験協会に提出する(安衛法第85条の2)。

ところが、「コンサルタント登録申請書」には、「④事務所の名称及び所在地」という欄があり、その記入をしなければ登録はできないのである(※)

※ (公社)安全衛生技術試験協会の「労働安全・労働衛生コンサルタント登録についてよくあるご質問」には、「事務所の名称及び所在地は、登録証に記載されますので申請書に記入がないと登録できません」とされている。


(3)有職者が登録を行う場合の問題点

有職者の場合、試験に合格しても、当面は本業以外に直ちにコンサルタントの業務を行うことは考えておらず、将来、退職するまでは事務所を開設する気はないことがほとんどであろう。

そのため、事務所がないので、その住所と名称を「コンサルタント登録申請書」に記入することができず、登録ができないという問題が起きるのである(※)。このため、登録ができるのかどうかについて迷うことになる。

※ 後述するが、仮の事務所を届けると、勤務先が副業を認めていない場合、あらぬ疑いを受けることにもなりかねない。


(4)登録をせずに労働安全衛生コンサルタントを称する問題

ア 労働安全衛生コンサルタントは名称独占資格か

(ア)労働安全衛生コンサルタントでない者が労働安全衛生コンサルタントを名乗ることは法違反か

そのため、登録をせずに労働安全衛生コンサルタントを名乗る方が一部におられることも事実である。実を言えば労働安全衛生コンサルタントには、法令上に名称の使用制限に関する規定は設けられていない(※)。従って、登録をせずに労働安全衛生コンサルタントを名乗っても安衛法違反になることはない。

※ 国家資格には、業務独占資格、名称独占資格、必置資格の3種類があるとされる。業務独占資格とは、資格がなければ行うことが禁じられている業務を行うことができる資格である。資格を有しない者はその称号を名乗ることもできない。その例としては医師、看護師、薬剤師、弁護士、公認会計士などがある。

これに対し、名称独占資格とは、その資格を有しない者が、その資格の名称を用いて業務を行うことのみが禁止されているものである。その例としては、保育士、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士などがある。

名称独占資格については、例えば保育士であれば、児童福祉法第18条の8により、社会福祉士及び介護福祉士であれば、社会福祉士及び介護福祉士法第48条により、名称の使用制限が規定されている。

しかし、労働安全衛生コンサルタントには、このような名称の使用制限は規定されていないのである。

とは言え、試験に受かってはいても、先述したように、登録をしていなければ安衛法上の労働安全衛生コンサルタントではないのである。労働安全衛生コンサルタントではない者が労働安全衛生コンサルタントを名乗ることは、たとえ法違反ではなくとも望ましいことではない。


(イ)行政は、労働安全衛生コンサルタントは名称独占資格であるとしている

しかも、労働政策審議会安全衛生分科会「指定・登録制度改革検討専門委員会報告書」(2011年(平成23年)11月30日)には、労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタントは、名称独占資格であると明記されている(※)のである。

※ このことは、第4回労働政策審議会安全衛生分科会指定・登録制度改革検討専門委員会において、中山理石綿対策室長(当時)が「コンサルタントは、この資格がないとその業務に就けないといった業務独占の資格ではなくて、コンサルタントを名乗って業をしてはいけないという名称独占の資格になっています」と説明し、とくに異論は出ていない。

【労働安全衛生コンサルタントは名称独占資格か】

第3 指定制度、手数料、登録制度の改革の方向性について

1 指定制度、手数料

② 労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント、第一種作業環境測定士、第二種作業環境測定士の登録制度について

  労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントは、この資格がないとその業務に就けないといった業務独占の資格ではなく、コンサルタントを名乗って業をしてはいけないという名称独占の資格となっている

  (中略)

  コンサルタント試験は、労働災害防止についての技術、経験、ノウハウを評価するものであり、誰でもこうした能力を持っていれば合格することができ、例えコンサルタントの立場を使って、不適切な行為を行ったとしても、技術、経験、ノウハウを評価した試験結果を取り消すことはできない。このため、コンサルタントの品位の保持が図られるよう、不適切な行為を行った場合には「登録」を取り消して、コンサルタントを名乗って活動できないような制度にすることにより、コンサルタント制度に対する企業の信頼を守ろうというものである。

  (中略)

  以上の点を踏まえ、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント、第一種作業環境測定士、第二種作業環境測定士については、引き続き試験合格後に名簿への登録を求めるべきものと思量される。

※ 労働政策審議会安全衛生分科会「指定・登録制度改革検討専門委員会報告書」(2011年11月30日)(下線強調引用者)

行政がこのように考える法的な根拠は明確ではない。筆者自身が厚生労働省の担当者から聞き取ったところによると、安衛法第81条に「名称を用いて」という表現があること、及び同第84条に「登録を受けて、労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントとなることができる」とされていることなどがその根拠と考えられているようである。

【労働安全衛生法】

(業務)

第81条 労働安全コンサルタントは、労働安全コンサルタントの名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の安全の水準の向上を図るため、事業場の安全についての診断及びこれに基づく指導を行なうことを業とする。

 労働衛生コンサルタントは、労働衛生コンサルタントの名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の衛生の水準の向上を図るため、事業場の衛生についての診断及びこれに基づく指導を行なうことを業とする。

(登録)

第84条 労働安全コンサルタント試験又は労働衛生コンサルタント試験に合格した者は、厚生労働省に備える労働安全コンサルタント名簿又は労働衛生コンサルタント名簿に、氏名、事務所の所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けて、労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントとなることができる。

 (略)


イ 登録せずに労働安全衛生コンサルタントを名乗ることの是非

このように厚労省が、労働安全衛生コンサルタントでないものは、コンサルタントを名乗って業務を行ってはならないと公的な文書で明言しているのである。繰り返しになるが、たとえ安衛法違反にはならないとしても、登録をせずに労働安全衛生コンサルタントを名乗ることは望ましくはないといえる(※)

※ 筆者は、登録をするまでは、WEBサイトには「労働安全コンサルタント試験合格(未登録)」などと記していた。

また、仮に労働安全衛生コンサルタントを名乗って、労働安全衛生コンサルタントとしての業務を行い、報酬を得たり財産上の利益を得れば、詐欺罪(刑法第246条)に該当することもあり得ると考える。


2 有職者が労働衛生コンサルタントを名乗るための方法

(1)事務所名について

では、有職者は、退職して現実に事務所を設置するまでは労働安全衛生コンサルタントを名乗ることができないのだろうか。実は、そのようなことはないのである。

(公社)安全衛生技術試験協会のWEBサイト「労働安全・労働衛生コンサルタント登録についてよくあるご質問」にも、「コンサルタント事務所を開設していない場合でも登録することはできる」と記されているのである。

【事務所開設なしで登録は可能か】

Q コンサルタント事務所を開設していない場合でも登録することはできますか。

A 労働安全・労働衛生コンサルタント試験の合格証があれば、登録申請をすることができます。

※ (公社)安全衛生技術試験協会のWEBサイト「労働安全・労働衛生コンサルタント登録についてよくあるご質問

では、登記申請書には、事務所の名称・所在地はどのように書くべきなのだろうか。それについては、次のように記されているのである。

【事務所開設なしで登録は可能か】

Q 初めて登録する際、コンサルタント登録申請書(様式第3号)の④の事務所の名称及び所在地は、記入する必要がありますか。

A 事務所の名称及び所在地は、登録証に記載されますので申請書に記入がないと登録できません。

  名称については、姓の後ろに「労働安全(衛生)コンサルタント事務所」などとし、また、所在地については、自宅の住所で登録される方が多くみられます。

例:山田太郎さんが登録する場合「山田労働安全コンサルタント事務所」

※ (公社)安全衛生技術試験協会のWEBサイト「労働安全・労働衛生コンサルタント登録についてよくあるご質問

要するに、事務所には実態がなくてもかまわないというのである。法人化する必要もないし、法人にしないのであれば、法人登記や社会保険(健康保険・厚生年金)への加入も必要ない。また、個人事業の開業届出(所得税法第229条)を出す必要もない。また、人を雇わなければ、労働保険(労災保険及び雇用保険)の加入の必要もない。

そればかりか、事業の実績がなくてもかまわない。実績がないからという理由で登録を取り消せなどとは言われないのである。

日本の法体系の下では、事務所名(屋号)を名乗るだけなら、誰でも自由に行ってよいのである。従って、好きな事務所名(※)を決めて登録すればよい。

※ もちろん、会社でもないのに株式会社などの言葉を名称に付けることは法令で禁止されている。また、シャネルやディズニーなど有名企業の登記された商号を用いてはならないし、近くに類似した労働安全衛生コンサルタント事務所(や弁護士事務所など)があるときにそれと紛らわしい名称を付けてもいけない(不正競争防止法第2条第1項第一号)。

なお、最寄りの監督署の名前を付すなど、行政とのつながりがあるかのような名称も避けた方が良いと思う。

また、住所を自宅にする場合、事務所名の看板を掲げるのでない限り、必ず住所に「○○方」などを付けて、郵便物が届くようにしておくこと。届け出た住所に郵便物が届くことはまずないが、厚労省からの公式文書が届く可能性は否定できない。なお、バーチャル事務所を用いる場合も郵便物は受け取れるようにしておく必要がある。


(2)勤務先の許可の問題

登録に関して法律的な障壁はないにしても、現実に起き得る問題として、勤務先が副業を禁止している場合、労働安全衛生コンサルタント事務所を登録することで、勤務先からあらぬ疑いを受ける恐れがあることである。

厚生労働省が 2024 年9月に行った調査(※)によると、「労働者に、非雇用(フリーランス等)での副業・兼業を認めている」のは、13.2 %にすぎないとされている。

※ 厚生労働省「労働時間制度等に関する実態調査」。なお、(独法)労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査」(2024年7月)によれば、「副業を行っており、本業の就業形態が雇用者の人(n=8,984)に対し、本業の勤め先で副業が禁止されているかを尋ねたところ、11.0 %が「禁止されている」と回答」したとされる。

労働安全衛生コンサルタントの業務を副業として行う気がなくても、適当な事務所名を付けて登録を受ければ、勤務先から副業をしていると疑われるのではないかという不安は感じるだろう。このため、労働安全衛生コンサルタントの登録を受けることを迷う合格者がいることも事実である。

これについては、勤務先に対して率直に相談するしかないのではないだろうか。そして勤務先が登録を認めないのであれば、筆者としては登録は見合わせた方が良いと思う(※)。しかし、勤務先は意外と登録に理解を示すことが多いようである。

※ 労働安全衛生コンサルタントに登録したからと言って、実際に副業を行っていないにもかかわらず、会社等がその労働者を処罰することが可能かについては、ここでは論じないが別な問題である。

中には、勤務先に相談したところ、勤務先の住所に会社名を付した事務所をおくように勧められ、登録料も勤務先が出してくれたという例まである(※)。このケースでは、会社支給の名刺に労働安全コンサルタントの肩書も印刷してくれて、関係会社に対する安全指導等を行うこともあるとのことである。

※ 退職時には変更届が必要となる(コンサルタント則第18条)。


3 最後に

打ち合わせをする男女

※ イメージ図(©photoAC)

以上のことから分かるように、試験に合格したからと言って、たとえ業務を行わなくても、登録をせずに労働安全衛生コンサルタントを名乗ることは望ましいことではない。

適当な事務所名と自宅等の住所を事務所として登録することは可能なのであるから、労働安全衛生コンサルタントを名乗るのであれば登録はするべきである。

※ 登録の手続きは、(公財)安全衛生技術試験協会の「労働安全・労働衛生コンサルタント 資格登録申請(新規登録)」を参照されたい。


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