問14 石綿による健康障害を予防するための措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)ろ過除じん方式による除じん装置及び電気除じん方式による除じん装置は、粉じんの粒径(重量法で測定した粒径分布において最大頻度を示す粒径をいう。)の大きさにかかわらず、石綿等の粉じんが発散する屋内作業場に設ける局所排気装置に設ける除じん装置として用いることができる。
(2)石綿等の粉じんが発散する屋内作業場で、当該粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置の設置が著しく困難なために設けた全体換気装置については、1年以内ごとに1回、定期に、所定の事項について自主検査を行わなければならない。
(3)石綿等を試験研究のため製造する作業については、石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから、石綿作業主任者を選任しなければならない。
(4)石綿使用建築物等解体等作業に係る業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、当該業務に関する衛生のための特別の教育を行い、所定の記録を作成して、これを3年間保存しておかなければならない。
(5)総トン数 20 トン以上の鋼製の船舶の解体工事を行おうとするときは、あらかじめ、事前調査(当該船舶の解体の作業に係る部分についての石綿等の使用の有無の調査をいう。)の結果に基づき記録を作成した事項その他の事項のうち、所定の事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更する(号番号等を除く)などの修正を行いました。
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| 2025年度(令和7年度) | 問14 | 難易度 | 石綿則は頻繁に改正されるが、改正された部分について出題されることが多い。 |
|---|---|---|---|
| 石綿則 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。(中途段階なので、今後、修正があり得る。)
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問14 石綿による健康障害を予防するための措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)ろ過除じん方式による除じん装置及び電気除じん方式による除じん装置は、粉じんの粒径(重量法で測定した粒径分布において最大頻度を示す粒径をいう。)の大きさにかかわらず、石綿等の粉じんが発散する屋内作業場に設ける局所排気装置に設ける除じん装置として用いることができる。
(2)石綿等の粉じんが発散する屋内作業場で、当該粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置の設置が著しく困難なために設けた全体換気装置については、1年以内ごとに1回、定期に、所定の事項について自主検査を行わなければならない。
(3)石綿等を試験研究のため製造する作業については、石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから、石綿作業主任者を選任しなければならない。
(4)石綿使用建築物等解体等作業に係る業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、当該業務に関する衛生のための特別の教育を行い、所定の記録を作成して、これを3年間保存しておかなければならない。
(5)総トン数 20 トン以上の鋼製の船舶の解体工事を行おうとするときは、あらかじめ、事前調査(当該船舶の解体の作業に係る部分についての石綿等の使用の有無の調査をいう。)の結果に基づき記録を作成した事項その他の事項のうち、所定の事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
正答(2)
【解説】
(1)正しい。石綿則第 18 条第1項の表は、ろ過除じん方式による除じん装置及び電気除じん方式による除じん装置は、粉じんの粒径(重量法で測定した粒径分布において最大頻度を示す粒径をいう。)の大きさにかかわらず、石綿等の粉じんが発散する屋内作業場に設ける局所排気装置に設ける除じん装置として用いることができるとしている。
【石綿障害予防規則】
(除じん)
第18条 事業者は、石綿等の粉じんを含有する気体を排出する製造設備の排気筒又は第12条第1項の規定により設ける局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置には、次の表の上欄に掲げる粉じんの粒径に応じ、同表の下欄に掲げるいずれかの除じん方式による除じん装置又はこれらと同等以上の性能を有する除じん装置を設けなければならない。
| 粉じんの粒径 (単位 マイクロメートル) |
除じん方式 |
|---|---|
| 5未満 | ろ過除じん方式 電気除じん方式 |
| 5以上20未満 | スクラバによる除じん方式 ろ過除じん方式 電気除じん方式 |
| 20以上 | マルチサイクロン(処理風量が毎分二十立方メートル以内ごとに一つのサイクロンを設けたものをいう。)による除じん方式 スクラバによる除じん方式 ろ過除じん方式 電気除じん方式 |
| 備考 この表における粉じんの粒径は、重量法で測定した粒径分布において最大頻度を示す粒径をいう。 | |
2及び3 (略)
これらの除じん装置については、粉じん則制定時の行政解釈に次のように示されている。
【除じん装置の種類等】
第三 規則の細部関係
一二 第一三条関係
(三)第一項の「ろ過除じん方式」とは、ろ層に含じん気体を通して粉じんをろ過捕集する原理による除じん方式をいい、バツグフイルタ(ろ布の袋)によるものと充てん層フイルタ(ろ布又はろ紙の幕)によるものとがあること。
(四)「電気除じん方式」とは、高電圧の直流又は交流のコロナ放電を利用して粉じんを荷電し、電気的引力により捕集する原理による除じん方式をいうこと。
(五)「サイクロンによる除じん方式」とは、含じん気体を円筒内で旋回させ、遠心力によつて外方に分離させる粉じんを落下させて捕集する原理によるものをいうこと。
なお、サイクロンを使用する場合には、二個以上のサイクロンを並列に接続したマルチサイクロンを使用することが望ましいこと。
(六)「スクラバによる除じん方式」とは、水等の液体を噴射又は起泡し、含じん気体中の粉じんを加湿凝集又は液面へ衝突拡散させて捕集する原理によるものをいい、一般に湿式または洗浄式除じん方式といわれるものであること。
※ 厚生労働省「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び粉じん障害防止規則の施行について」(昭和 54 年7月 26 日基発第 382 号)
サイクロンによる除じん方式は気流を旋回させて遠心力で除じんするため、小さな粒子は除じんしきれないのである。また、スクバラ方式は水滴を吹き付ける方式なので、サイクロン方式ほどではないにしてもやはり小さな粉じんは除ききれない。
これに対し、ろ過式除じん方式では、粒子径によって除じん効率は異なる(※1)ものの、ある粒子径のものはまったく除じんできないということではない。また、電気除じん方式(コットレル)は、粒子径の影響も受けるが、それよりも粒子の電気抵抗に大きく影響されるという特徴がある(※2)。
※1 ある粒子径が最も除じんしにくく、それより大きくても小さくても除じん効率は上がる。
※2 福田正則「除じん・集じん技術」
(2)誤り。定期自主検査を行わなければならないものを定める石綿則第 21 条は、全体換気装置には定期自主検査を義務付けていない。
【労働安全衛生法】
(定期自主検査)
第45条 事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。
2~4 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(定期に自主検査を行うべき機械等)
第15条 法第45条第1項の政令で定める機械等は、次のとおりとする。
一~八 (略)
九 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置で、厚生労働省令で定めるもの
十及び十一 (略)
2 (略)
【石綿障害予防規則】
(定期自主検査を行うべき機械等)
第21条 令第15条第1項第九号の厚生労働省令で定める局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び除じん装置(石綿等に係るものに限る。)は、次のとおりとする。
一 第12条第1項の規定に基づき設けられる局所排気装置
二 第12条第1項の規定に基づき設けられるプッシュプル型換気装置
三 第18条第1項の規定に基づき設けられる除じん装置
(3)正しい。石綿則第 19 条により、石綿等を試験研究のため製造する作業については、石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから、石綿作業主任者を選任しなければならない。
なお、本肢の作業は、「試験研究のため取り扱う作業」ではなく「試験研究のため製造する作業」である。従って、作業主任者の選任は必要である。おそらく出題者には引っ掛け問題にする意図はなかったと思うが、結果的に引っ掛け問題のようになっている。こんな問題に引っかかってはいけない。
【労働安全衛生法】
(作業主任者)
第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
【労働安全衛生法施行令】
(作業主任者を選任すべき作業)
第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。
一~八 (略)
二十三 石綿若しくは石綿をその重量の0.1パーセントを超えて含有する製剤その他の物(以下「石綿等」という。)を取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業を除く。)又は石綿等を試験研究のため製造する作業若しくは第16条第1項第四号イからハまでに掲げる石綿で同号の厚生労働省令で定めるもの若しくはこれらの石綿をその重量の0.1パーセントを超えて含有する製剤その他の物(以下「石綿分析用試料等」という。)を製造する作業
【石綿障害予防規則】
(石綿作業主任者の選任)
第19条 事業者は、令第6条第二十三号に掲げる作業については、石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから、石綿作業主任者を選任しなければならない。
(4)正(安衛法第 59 条第3項・安衛則第 36 条第三十七号・石綿則第4条第1項)石綿使用建築物等解体等作業に係る業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、当該業務に関する衛生のための特別の教育を行い、所定の記録を作成して、これを3年間保存しておかなければならない。
【労働安全衛生法】
(安全衛生教育)
第59条 (第1項 略)
2 (略)
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
【労働安全衛生規則】
(特別教育を必要とする業務)
第36条 法第59条第3項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
一~三十六 (略)
三十七 石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)第4条第1項に掲げる作業に係る業務
三十八~四十 (略)
【石綿障害予防規則】
(作業計画)
第4条 事業者は、石綿等が使用されている解体等対象建築物等(前条第5項ただし書の規定により石綿等が使用されているものとみなされるものを含む。)の解体等の作業(以下「石綿使用建築物等解体等作業」という。)を行うときは、石綿による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、作業計画を定め、かつ、当該作業計画により石綿使用建築物等解体等作業を行わなければならない。
2及び3 (略)
(5)正(石綿則第4条の2第1項第四号・同条第2項第五号)総トン数 20 トン以上の鋼製の船舶の解体工事を行おうとするときは、あらかじめ、事前調査(当該船舶の解体の作業に係る部分についての石綿等の使用の有無の調査をいう。)の結果に基づき記録を作成した事項その他の事項のうち、所定の事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
【労働安全衛生法】
(報告等)
第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
2及び3 (略)
【石綿障害予防規則】
(事前調査及び分析調査)
第3条 (第1項~第6項 略)
7 事業者は、事前調査又は分析調査(以下「事前調査等」という。)を行ったときは、当該事前調査等の結果に基づき、次に掲げる事項(第三項第三号から第八号までの場合においては、第一号から第四号までに掲げる事項に限る。)の記録を作成し、これを事前調査を終了した日(分析調査を行った場合にあっては、解体等の作業に係る全ての事前調査を終了した日又は分析調査を終了した日のうちいずれか遅い日)(第三号及び次項第一号において「調査終了日」という。)から三年間保存するものとする。
一~四 (略)
五 事前調査を行った建築物、工作物又は船舶の構造
六及び七 (略)
八 第六号の部分における材料ごとの石綿等の使用の有無(第五項ただし書の規定により石綿等が使用されているものとみなした場合は、その旨を含む。)及び石綿等が使用されていないと判断した材料にあっては、その判断の根拠
九及び十 (略)
8及び9 (略)
(事前調査の結果等の報告)
第4条の2 事業者は、次のいずれかの工事を行おうとするときは、あらかじめ、電子情報処理組織(厚生労働省の使用に係る電子計算機と、この項の規定による報告を行う者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用して、次項に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
一~三 (略)
四 船舶(総トン数20トン以上の船舶に限る。)の解体工事又は改修工事
2 前項の規定により報告しなければならない事項は、次に掲げるもの(第三条第三項第三号から第八号までの場合においては、第一号から第四号までに掲げるものに限る。)とする。
一~四 (略)
五 第3条第7項第五号、第八号及び第九号に掲げる事項の概要
六及び七 (略)
3~5 (略)





