労働衛生コンサルタント試験 2025年 労働衛生関係法令 問10

特定化学物質障害予防規則全般




問題文
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2人で受験勉強する医療関係者

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更する(号番号等を除く)などの修正を行いました。

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2025年度(令和7年度) 問10 難易度 特化則は、ほぼ確実に出題される。例年、難問が多く正答率は低い。
特化則  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。(中途段階なので、今後、修正があり得る。)
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

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問10 特定化学物質による健康障害を予防するために事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

ただし、特定化学物質障害予防規則に定める適用の除外はないものとする。

(1)特別有機溶剤業務に常時従事する労働者について、当該業務に係る直近の連続した3回の特定化学物質健康診断(以下「健康診断」という。)の結果、新たに当該業務に係る特別有機溶剤による異常所見があると認められず、当該業務を行う場所について、作業環境測定の結果の評価の結果、直近の評価を含めて連続して3回、第一管理区分に区分され、当該業務について、直近の健康診断の実施後に作業方法を変更していないので、健康診断を1年以内ごとに1回、定期に行っている。

(2)管理第二類物質の粉じんが発散する屋内作業場において臨時の作業を行うとき、当該管理第二類物質を湿潤な状態にする措置を講じたので、当該管理第二類物質の粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置のいずれも設けずに作業を行っている。

(3)シアン化ナトリウムを含有する排液について、酸化・還元方式ではなく活性汚泥方式による排液処理装置を設けて処理を行っている。

(4)特定化学設備を設置する屋内作業場を有する建築物の避難階(直接地上に通ずる出入口のある階をいう。)以外の階について、その階から避難階に通ずる直通階段を一つ設け、併せて、避難用タラップを設けている。

(5)特定化学物質を運搬するとき、当該物質が漏れ、こぼれる等のおそれがないように、堅固な容器を使用し、当該容器の見やすい箇所に当該物質の名称及び取扱い上の注意事項を表示しているが、流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置は表示していない。

正答(1)

【解説】

問10試験結果

試験解答状況
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(1)違反となる。特化則関連の特殊健康診断の頻度の緩和(特化則第 39 条第4項)については、製造禁止物質及び特別管理物質に係る特殊健康診断の実施については除かれている。

特別管理物質とは、一言でいえば発がん性物質である。そして特別有機溶剤とは発がん性があるために、有機則から特化則に移された物であり、すべて特別管理物質なのである。

【特別有機溶剤はすべて特別管理物質に含まれる】

  • 特別有機溶剤:令別表第三第二号3の3、11の2、18の2から18の4まで、19の2、19の3、22の2から22の5まで及び33の2
  • 特別管理物質:令別表第三第二号3の2から6まで、8、8の2、11から12まで、13の2から15の2まで、18の2から19の5まで、21、22の2から22の5まで、23の2から24まで、26、27の2、29、30、31の2、32、33の2若しくは34の3に掲げる物

【特定化学物質障害予防規則】

(定義等)

第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一~三 (略)

三の二 特別有機溶剤 第二類物質のうち、令別表第三第二号3の3、11の2、18の2から18の4まで、19の2、19の3、22の2から22の5まで及び33の2に掲げる物をいう。

三の三 特別有機溶剤等 特別有機溶剤並びに別表第一第三号の三、第十一号の二、第十八号の二から第十八号の四まで、第十九号の二、第十九号の三、第二十二号の二から第二十二号の五まで、第三十三号の二及び第三十七号に掲げる物をいう。

四~七 (略)

2及び3 (略)

(作業の記録)

第38条の4 (前略)令別表第三第二号3の2から6まで、8、8の2、11から12まで、13の2から15の2まで、18の2から19の5まで、21、22の2から22の5まで、23の2から24まで、26、27の2、29、30、31の2、32、33の2若しくは34の3に掲げる物若しくは別表第一第三号の二から第六号まで、第八号、第八号の二、第十一号から第十二号まで、第十三号の二から第十五号の二まで、第十八号の二から第十九号の五まで、第二十一号、第二十二号の二から第二十二号の五まで、第二十三号の二から第二十四号まで、第二十六号、第二十七号の二、第二十九号、第三十号、第三十一号の二、第三十二号、第三十三号の二若しくは第三十四号の三に掲げる物(以下「特別管理物質」と総称する。)(後略)

一~三 (略)

(健康診断の実施)

第39条 事業者は、令第22条第1項第三号の業務(石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等(石綿則第2条第4項に規定する石綿分析用試料等をいう。)の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務及び別表第一第三十七号に掲げる物を製造し、又は取り扱う業務を除く。)に常時従事する労働者に対し、別表第三の上欄に掲げる業務の区分に応じ、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後同表の中欄に掲げる期間以内ごとに1回、定期に、同表の下欄に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。

2及び3 (略)

 第1項の業務(令第16条第1項各号に掲げる物(同項第四号に掲げる物及び同項第九号に掲げる物で同項第四号に係るものを除く。)及び特別管理物質に係るものを除く。)が行われる場所について第36条の2第1項の規定による評価が行われ、かつ、次の各号のいずれにも該当するときは、当該業務に係る直近の連続した3回の第1項の健康診断(当該健康診断の結果に基づき、前項の健康診断を実施した場合については、同項の健康診断)の結果、新たに当該業務に係る特定化学物質による異常所見があると認められなかつた労働者については、当該業務に係る第1項の健康診断に係る別表第三の規定の適用については、同表中欄中「6月」とあるのは、「1年」とする。

 当該業務を行う場所について、第36条の2第1項の規定による評価の結果、直近の評価を含めて連続して3回、第一管理区分に区分された(第2条の3第1項の規定により、当該場所について第36条の2第1項の規定が適用されない場合は、過去1年6月の間、当該場所の作業環境が同項の第一管理区分に相当する水準にある)こと。

 当該業務について、直近の第1項の規定に基づく健康診断の実施後に作業方法を変更(軽微なものを除く。)していないこと。

5~7 (略)

(2)違反にならない。特化則第5条第1項但書(及び第2項)により、管理第二類物質の粉じんが発散する屋内作業場において臨時の作業を行うときは、その管理第二類物質を湿潤な状態にする措置を講じれば、その管理第二類物質の粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置のいずれも設けずに作業を行っても違反とはならない。

【特定化学物質障害予防規則】

第5条 事業者は、特定第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんが発散する屋内作業場(特定第二類物質を製造する場合、特定第二類物質を製造する事業場において当該特定第二類物質を取り扱う場合、燻くん蒸作業を行う場合において令別表第三第二号5、15、17、20若しくは31の2に掲げる物又は別表第一第五号、第十五号、第十七号、第二十号若しくは第三十一号の二に掲げる物(以下「臭化メチル等」という。)を取り扱うとき、及び令別表第三第二号30に掲げる物又は別表第一第三十号に掲げる物(以下「ベンゼン等」という。)を溶剤(希釈剤を含む。第38条の16において同じ。)として取り扱う場合に特定第二類物質のガス、蒸気又は粉じんが発散する屋内作業場を除く。)又は管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんが発散する屋内作業場については、当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。ただし、当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置の設置が著しく困難なとき、又は臨時の作業を行うときは、この限りでない

 事業者は、前項ただし書の規定により特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けない場合には、全体換気装置を設け、又は当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質を湿潤な状態にする等労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講じなければならない。

(3)違反にならない。特化則第 11 条第1項に適合している。シアン化ナトリウムを含有する排液について、酸化・還元方式のみならず、活性汚泥方式による排液処理装置も認められている。

【特定化学物質障害予防規則】

(排液処理)

第11条 事業者は、次の表の上欄に掲げる物を含有する排液(第一類物質を製造する設備からの排液を除く。)については、同表の下欄に掲げるいずれかの処理方式による排液処理装置又はこれらと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない。

処理方式
(略) (略)
シアン化ナトリウム 酸化・還元方式
活性汚でい方式
(略) (略)

2及び3 (略)

(4)違反にならない。特化則第 18 条第2項により、特定化学設備を設置する屋内作業場を有する建築物の避難階(直接地上に通ずる出入口のある階をいう。)以外の階について、その階から避難階に通ずる直通階段を一つ設け、併せて、避難用タラップを設ければ違反とはならない。

【特定化学物質障害予防規則】

(出入口)

第18条 事業者は、特定化学設備を設置する屋内作業場及び当該作業場を有する建築物の避難階(直接地上に通ずる出入口のある階をいう。以下同じ。)には、当該特定化学設備から第三類物質等が漏えいした場合に容易に地上の安全な場所に避難することができる二以上の出入口を設けなければならない。

 事業者は、前項の作業場を有する建築物の避難階以外の階については、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段又は傾斜路を設けなければならない。この場合において、それらのうちの一については、すべり台、避難用はしご、避難用タラツプ等の避難用器具をもつて代えることができる。

 (略)

(5)違反にならない。特化則第 25 条第2項により、特定化学物質を運搬するときは、その物質の名称及び取扱い上の注意事項を表示しなければならないが、流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置を表示しろとまではされていない。

なお、安衛則第 33 条による表示は、すべての特定化学物質等について適用があるが、こちらは運搬するための容器には適用がなく、かつ、流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置を表示しろとまではされていない。

【労働安全衛生規則】

第33条の2 事業者は、令第17条に規定する物又は令第18条各号に掲げる物を容器に入れ、又は包装して保管するとき(法第57条第1項の規定による表示がされた容器又は包装により保管するときを除く。)は、当該物の名称及び人体に及ぼす作用について、当該物の保管に用いる容器又は包装への表示、文書の交付その他の方法により、当該物を取り扱う者に、明示しなければならない。

【特定化学物質障害予防規則】

(容器等)

第25条 事業者は、特定化学物質を運搬し、又は貯蔵するときは、当該物質が漏れ、こぼれる等のおそれがないように、堅固な容器を使用し、又は確実な包装をしなければならない。

 事業者は、前項の容器又は包装の見やすい箇所に当該物質の名称及び取扱い上の注意事項を表示しなければならない。

3~5 (略)

2025年12月02日執筆