問8 労働安全衛生規則の衛生基準に関する次のイ~ホの記述について、労働安全衛生法令上、誤っているもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
イ 事業者は、労働者の飲用に供する水については、所定の水質基準に適合したものとし、当該水を十分供給するようにしなければならない。
ロ 事業者は、身体又は被服を汚染するおそれのある業務に労働者を就かせるときは、当該労働者ごとに被服を保管することができる更衣設備を設けなければならない。
ハ 事業者は、労働者の被服が著しく湿潤する作業場においては、被服の乾燥設備を設けなければならない。
ニ 事業者は、暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場においては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置により、室温を常時、18 度以上 28 度以下に保たなければならない。
ホ 事業者は、事業場において、労働者に対し、1日 300 食以上の給食を行うときは、管理栄養士を配置しなければならない。
(1)イ ロ ホ
(2)イ ハ ニ
(3)イ ハ ホ
(4)ロ ハ ニ
(5)ロ ニ ホ
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更する(号番号等を除く)などの修正を行いました。
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| 2025年度(令和7年度) | 問08 | 難易度 | やや細かい内容もあり難問だったようだが、できれば正答しておきたい問題。 |
|---|---|---|---|
| 衛生基準 | 4 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。(中途段階なので、今後、修正があり得る。)
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問8 労働安全衛生規則の衛生基準に関する次のイ~ホの記述について、労働安全衛生法令上、誤っているもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
イ 事業者は、労働者の飲用に供する水については、所定の水質基準に適合したものとし、当該水を十分供給するようにしなければならない。
ロ 事業者は、身体又は被服を汚染するおそれのある業務に労働者を就かせるときは、当該労働者ごとに被服を保管することができる更衣設備を設けなければならない。
ハ 事業者は、労働者の被服が著しく湿潤する作業場においては、被服の乾燥設備を設けなければならない。
ニ 事業者は、暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場においては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置により、室温を常時、18 度以上 28 度以下に保たなければならない。
ホ 事業者は、事業場において、労働者に対し、1日 300 食以上の給食を行うときは、管理栄養士を配置しなければならない。
(1)イ ロ ホ
(2)イ ハ ニ
(3)イ ハ ホ
(4)ロ ハ ニ
(5)ロ ニ ホ
正答(5)
【解説】
イ 正しい。安衛則第 627 条の規定により、事業者は、労働者の飲用に供する水については、所定の水質基準に適合したものとし、当該水を十分供給するようにしなければならない。
法令の問題については、厳密にいえば法律の規定の内容に則しているかどうかが問われているわけだが、「その方が望ましい」という内容であれば、正しいとしてよい。
【労働安全衛生規則】
(給水)
第627条 事業者は、労働者の飲用に供する水その他の飲料を、十分供給するようにしなければならない。
2 事業者は、水道法(昭和32年法律第177号)第3条第9項に規定する給水装置以外の給水に関する設備を設けて飲用し、又は食器の洗浄に使用する水を供給するときは、当該水について次に定めるところによらなければならない。
一 地方公共団体等の行う水質検査により、水道法第4条の規定による水質基準に適合していることを確認すること。
二 給水せんにおける水に含まれる遊離残留塩素の含有率を100万分の0.1(結合残留塩素の場合は、100万分の0.4)以上に保持するようにすること。ただし、供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれのあるとき又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含むおそれのあるときは、100万分の0.2(結合残留塩素の場合は、100万分の1.5)以上にすること。
三 有害物、汚水等によつて水が汚染されないように、適当な汚染防止の措置を講ずること。
ロ 誤り。安衛則第 625 条には、身体又は被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、洗眼、洗身若しくはうがいの設備、更衣設備又は洗たくのための設備を設けなければならないとはされているが、当該労働者ごとに被服を保管することができるようにせよとまではされていない。
法令は、必要のないことまでは義務付けないのである。身体又は被服を汚染するおそれのある業務に労働者を就かせるのであれば、すべての作業者の被服が汚染されるおそれがある。労働者ごとに被服を保管することができる更衣設備を設けても汚染防止の意味はないだろう。
【労働安全衛生規則】
(洗浄設備等)
第625条 事業者は、身体又は被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、洗眼、洗身若しくはうがいの設備、更衣設備又は洗たくのための設備を設けなければならない。
2 事業者は、前項の設備には、それぞれ必要な用具を備えなければならない。
ハ 正しい。安衛則第 626 条の規定により、事業者は、労働者の被服が著しく湿潤する作業場においては、被服の乾燥設備を設けなければならない。
濡れたら乾かさないと、次の勤務のときに濡れたままの作業服を着ることになりかねない。これは、乾かすことに意味があり、かつ望ましい(というよりやるべき)ことである。
【労働安全衛生規則】
(被服の乾燥設備)
第626条 事業者は、労働者の被服が著しく湿潤する作業場においては、被服の乾燥設備を設けなければならない。
ニ 誤り。法令は、不可能なことまでは要求しない。事務所ではないのである。冷凍庫内は別としても、さすがに、室温を常時、18 度以上 28 度以下に保てる作業場ばかりではないだろう(※)。
※ なお、口述試験対策として、令和7年5月20日基発0520第6号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」が、「安衛則第 606 条の「暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるもの」には、屋内作業場であって、改正安衛則第 612 条の2第1項に定める「熱中症を生ずるおそれのある作業」(中略)が行われるものが含まれること」としていることを覚えておくこと。
なお、事務所則第4条は、「室の気温が 10 度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない」とし、同規則第5条第3項は「空気調和設備を設けている場合は、室の気温が 17 度以上 28 度以下」にすることを努力義務としている。
【労働安全衛生規則】
(温湿度調節)
第606条 事業者は、暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければならない。
【事務所衛生基準規則】
(温度)
第4条 事業者は、室の気温が10度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない。
2 事業者は、室を冷房する場合は、当該室の気温を外気温より著しく低くしてはならない。ただし、電子計算機等を設置する室において、その作業者に保温のための衣類等を着用させた場合は、この限りでない。
(温度)
第5条 (第1項及び第2項 略)
3 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が17度以上28度以下及び相対湿度が40パーセント以上70パーセント以下になるように努めなければならない。
ホ 誤り。安衛則第 632 条により、事業者は1回 100 食以上又は1日 250 食以上の給食を行うときは、栄養士又は管理栄養士を置くように努めなければならないとされている。1日 300 食以上ではないし、「栄養士又は管理栄養士」であり管理栄養士(※)に限定されてはおらず、義務ではなく努力義務である。
※ 栄養士の資格は養成施設の卒業によって取得でき、健康な者に対して栄養指導や給食の管理の業務を行う。これに対し、管理栄養士は養成施設を卒業するとともに資格試験に合格する必要があり、病気や高齢のために食事がとりづらい者に対しても栄養指導や給食の管理を行うことができる。管理栄養士は通常の事業場に必ず配置しなければならないようなものではない。
これは、数字又は資格の内容を覚えておかないと正答できない。やや難しかったか。
【労働安全衛生規則】
(栄養士又は管理栄養士)
第632条 事業者は、事業場において、労働者に対し、1回100食以上又は1日250食以上の給食を行うときは、栄養士又は管理栄養士を置くように努めなければならない。
2 (略)





