労働衛生コンサルタント試験 2025年 労働衛生関係法令 問07

労働安全衛生法令に基づく計画の届出・報告等




問題文
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2人で受験勉強する医療関係者

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更する(号番号等を除く)などの修正を行いました。

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2025年度(令和7年度) 問07 難易度 基本的な内容であるが、やや細かな肢もあり、難問だったようだ。
届出・報告等  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。(中途段階なので、今後、修正があり得る。)
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問7 労働安全衛生法令に基づく計画の届出、報告等に関する次のイ~ニの記述について、労働安全衛生法令上、誤っているもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

イ 事業者は、特定化学物質障害予防規則の規定により設ける排液処理装置を設置しようとするときは、その計画について、届書に、排液処理の業務の概要等を記載した書面並びに周囲の状況及び四隣との関係を示す図面等を添えて、当該工事の開始の日の 14 日前までに、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。

ロ 事業者は、ゲージ圧力が 100 キロパスカル以上の圧気工法による作業を行う仕事を開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の 30 日前までに、厚生労働大臣に届け出なければならない。

ハ 事業者は、労働者が労働災害により休業した場合において、休業の日数が4日に満たないときは、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び 10 月から 12 月までの期間における当該事実について、それぞれの期間における最後の月の翌翌月末日までに、所定の事項及び休業日数を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

ニ 事業者は、化学物質又は化学物質を含有する製剤を製造し、又は取り扱う業務を行う事業場において、1年以内に2人以上の労働者が同種のがんに罹患したことを把握したときは、当該罹患が業務に起因するかどうかについて、遅滞なく、医師の意見を聴かなければならない。

(1)イ

(2)イ  ロ  ハ

(3)ロ  ハ

(4)ロ  ハ  ニ

(5)ハ  ニ

正答(2)

【解説】

問7試験結果

試験解答状況
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イ 誤り。安衛法第 88 条第1項(安衛則第 85 条・同別表第七第二十号)により、当該工事の開始の日の 14 日前ではなく 30 日前までに届け出ればよい。なお届け出るべき内容は正しい。

【労働安全衛生法】

(計画の届出等)

第88条 事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、第28条の2第1項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。

2~7 (略)

【労働安全衛生規則】

(計画の届出をすべき機械等)

第85条 法第88条第1項の厚生労働省令で定める機械等は、法に基づく他の省令に定めるもののほか、別表第七の上欄に掲げる機械等とする。ただし、別表第七の上欄に掲げる機械等で次の各号のいずれかに該当するものを除く。

一及び二 (略)

別表第七 (第八十五条、第八十六条関係)

(略) (略) (略)
(略) (略) (略)

二十 特化則第11条第1項の排液処理装置

一 一・三―ブタジエン等を製造し、若しくは取り扱う設備から試料を採取し、又は当該設備の保守点検を行う作業の概要

二 一・三―ブタジエン等のガスの発散源を密閉する設備にあつては、密閉の方式、主要構造部分の構造の概要及びその機能

三 全体換気装置にあつては、型式、主要構造部分の構造の概要及びその機能

一 周囲の状況及び四隣との関係を示す図面

二 作業場所の全体を示す図面

三 一・三―ブタジエン等のガスの発散源を密閉する設備又は全体換気装置の図面

四 局所排気装置が設置されている場合にあつては、局所排気装置摘要書(様式第二十五号)

五 プッシュプル型換気装置が設置されている場合にあつてはプッシュプ

(略) (略) (略)

ロ 誤り。安衛法第 88 条第2項の届出の対象は、安衛則第 89 条に定められている。同条第六号に定められているのは、ゲージ圧力が 0.3 メガパスカル以上の圧気工法である。100 キロパスカル以上ではない。

ただ、労働衛生コンサルタントの試験問題としては、やや細かすぎるのではないかという気がしないでもない。

【労働安全衛生法】

(計画の届出等)

第88条 (第1項 略)

 事業者は、建設業に属する事業の仕事のうち重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の30日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に届け出なければならない。

3~7 (略)

【労働安全衛生規則】

(仕事の範囲)

第89条 法第88条第2項の厚生労働省令で定める仕事は、次のとおりとする。

一~五 (略)

 ゲージ圧力が0.3メガパスカル以上の圧気工法による作業を行う仕事

ハ 誤り。休業日数が1日~3日までの労働災害の労働者死傷病報告の提出は、安衛則第 97 条第2項により、3か月分をまとめて翌月末日までに提出する。翌々月末日ではない。

※ なお、労働者死傷病報告については、2項による提出率は極めて悪いのが実態である。これは、休業4日以上の労働災害の場合、休業補償を請求すると監督署で労働者死傷病報告を出しているか確認されるので報告されるのだが、3日以下の場合休業補償がされないので確認がされないままとなるからである。

【労働安全衛生法】

(報告等)

第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

2及び3 (略)

【労働安全衛生規則】

(労働者死傷病報告)

第97条 (第1項 略)

 前項の場合において、休業の日数が4日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの期間における当該事実について、それぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、電子情報処理組織を使用して、同項各号(第九号を除く。)に掲げる事項及び休業日数を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

ニ 正しい。安衛則第 97 条の2第1項により、事業者は、化学物質又は化学物質を含有する製剤を製造し、又は取り扱う業務を行う事業場において、1年以内に2人以上の労働者が同種のがんに罹患したことを把握したときは、当該罹患が業務に起因するかどうかについて、遅滞なく、医師の意見を聴かなければならない。

これは、第2項の報告につなげるための制度で、有識者の意見によって、化学物質の自律的管理に合わせて規定されたものである。

【労働安全衛生法】

(報告等)

第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

2及び3 (略)

【労働安全衛生規則】

(疾病の報告)

第97条の2 事業者は、化学物質又は化学物質を含有する製剤を製造し、又は取り扱う業務を行う事業場において、1年以内に2人以上の労働者が同種のがんに罹患したことを把握したときは、当該罹患が業務に起因するかどうかについて、遅滞なく、医師の意見を聴かなければならない。

 事業者は、前項の医師が、同項の罹患が業務に起因するものと疑われると判断したときは、遅滞なく、次に掲げる事項について、所轄都道府県労働局長に報告しなければならない。

一~三 (略)

2025年12月02日執筆