労働衛生コンサルタント試験 2025年 労働衛生関係法令 問03

化学物質等のリスクアセスメント




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2人で受験勉強する医療関係者

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更する(号番号等を除く)などの修正を行いました。

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2025年度(令和7年度) 問03 難易度 化学物質の自律的管理に関する問題。今後数年は、この関連で出題されるだろう。
化学物質管理  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。(中途段階なので、今後、修正があり得る。)
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問3 労働安全衛生法令に基づきリスクアセスメントをしなければならない危険物及び有害物(以下「リスクアセスメント対象物」という。)について事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場ごとに、化学物質管理者を選任し、その者に当該事業場における化学物質の管理に係る技術的事項を管理させなければならない。

(2)リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行ったときは、所定の事項について記録を作成し、次にリスクアセスメントを行うまでの期間(リスクアセスメントを行った日から起算して3年以内に当該リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行ったときは、3年間)保存しなければならない。

(3)がん原性物質であるリスクアセスメント対象物に関して、リスクアセスメントの結果等に基づき、労働者の健康障害を防止するために講じた措置の状況について、1年を超えない期間ごとに1回、定期に、記録を作成し、当該記録を3年間保存しなければならない。ただし、当該期間中に、当該リスクアセスメント対象物により著しく汚染される事態は生じていないものとする。

(4)リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者が、厚生労働大臣が定める濃度の基準を超えてリスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるときは、速やかに、当該労働者に対し、医師又は歯科医師が必要と認める項目について、医師又は歯科医師による健康診断を行い、結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

(5)リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行ったときは、当該リスクアセスメントの結果等、所定の事項を、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けること等の方法により、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。

正答(4)

【解説】

問1試験結果

試験解答状況
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本問の、各ABCの規制内容について、各選択肢で該当するものは、以下のようになる。

(1)正しい。安衛則 12 条の5第1項柱書により、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場ごとに、化学物質管理者を選任し、その者に当該事業場における化学物質の管理に係る技術的事項を管理させなければならない。

【労働安全衛生規則】

(化学物質管理者が管理する事項等)

第12条の5 事業者は、法第57条の3第1項の危険性又は有害性等の調査(主として一般消費者の生活の用に供される製品に係るものを除く。以下「リスクアセスメント」という。)をしなければならない令第18条各号に掲げる物及び法第57条の2第1項に規定する通知対象物(以下「リスクアセスメント対象物」という。)を製造し、又は取り扱う事業場ごとに、化学物質管理者を選任し、その者に当該事業場における次に掲げる化学物質の管理に係る技術的事項を管理させなければならない。ただし、法第57条第1項の規定による表示(表示する事項及び標章に関することに限る。)、同条第2項の規定による文書の交付及び法第57条の2第1項の規定による通知(通知する事項に関することに限る。)(以下この条において「表示等」という。)並びに第七号に掲げる事項(表示等に係るものに限る。以下この条において「教育管理」という。)を、当該事業場以外の事業場(以下この項において「他の事業場」という。)において行つている場合においては、表示等及び教育管理に係る技術的事項については、他の事業場において選任した化学物質管理者に管理させなければならない。

一~七 (略)

2~5 (略)

(2)正しい。安衛則 34 条の2の8第1項柱書により、リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行ったときは、所定の事項について記録を作成し、次にリスクアセスメントを行うまでの期間(リスクアセスメントを行った日から起算して3年以内に当該リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行ったときは、3年間)保存しなければならない。

なお、試験合格後の実務においては、リスクアセスメントの記録は永年保存するようにした方がよい。昔と違って、現在は電子データで残せる(※)ので場所をとらないし、保存媒体の性能も上がっているので、ほとんど保存のコストがかからない。将来、労働者に疾病が発症した場合には記録が重要となる。とりわけCMR物質(発がん性・変異原性・生殖毒性物質)については、永年保存することが望ましい。場合によっては、タイムスタンプを付与しておきたい。

※ 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律第3条の規定(並びに厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令第3条及び別表第一の表一)により、この保存は電子データで行うことができる。

【労働安全衛生法】

(書類の保存等)

第103条 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、この法律又はこれに基づく命令の規定に基づいて作成した書類(次項及び第3項の帳簿を除く。)を、保存しなければならない。

2及び3 (略)

【労働安全衛生規則】

(リスクアセスメントの結果等の記録及び保存並びに周知)

第34条の2の8 事業者は、リスクアセスメントを行つたときは、次に掲げる事項について、記録を作成し、次にリスクアセスメントを行うまでの期間(リスクアセスメントを行つた日から起算して3年以内に当該リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行つたときは、3年間)保存するとともに、当該事項を、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。

一~四 (略)

 (略)

(3)正しい。安衛則 577 条の2第 11 項の規定により、がん原性物質であるリスクアセスメント対象物に関して、リスクアセスメントの結果等に基づき、労働者の健康障害を防止するために講じた措置の状況について、1年を超えない期間ごとに1回、定期に、記録を作成し、当該記録を3年間保存しなければならない。ただし、当該期間中に、当該リスクアセスメント対象物により著しく汚染される事態は生じていないものとする。

【労働安全衛生法】

(書類の保存等)

第103条 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、この法律又はこれに基づく命令の規定に基づいて作成した書類(次項及び第3項の帳簿を除く。)を、保存しなければならない。

2及び3 (略)

【労働安全衛生規則】

(ばく露の程度の低減等)

第577条の2 事業者は、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場において、リスクアセスメントの結果等に基づき、労働者の健康障害を防止するため、代替物の使用、発散源を密閉する設備、局所排気装置又は全体換気装置の設置及び稼働、作業の方法の改善、有効な呼吸用保護具を使用させること等必要な措置を講ずることにより、リスクアセスメント対象物に労働者がばく露される程度を最小限度にしなければならない。

2~10 (略)

11 事業者は、次に掲げる事項(第三号については、がん原性物質を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に限る。)について、1年を超えない期間ごとに1回、定期に、記録を作成し、当該記録を3年間(第二号(リスクアセスメント対象物ががん原性物質である場合に限る。)及び第三号については、30年間)保存するとともに、第一号及び第四号の事項について、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。

 第1項、第2項及び第8項の規定により講じた措置の状況

二及び三 (略)

12 (略)

(4)誤り。リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者が、厚生労働大臣が定める濃度の基準を超えてリスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるときは、安衛則第 577 条の2第4項により、速やかに、当該労働者に対し、医師又は歯科医師が必要と認める項目について、医師又は歯科医師による健康診断を行行わな得ればならない。

しかし、その結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならないとする規定はない。

【労働安全衛生規則】

(ばく露の程度の低減等)

第577条の2 (第1項~第3項 略)

 事業者は、次に掲げる事項(第三号については、がん原性物質を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に限る。)について、1年を超えない期間ごとに1回、定期に、記録を作成し、当該記録を3年間(第二号(リスクアセスメント対象物ががん原性物質である場合に限る。)及び第三号については、30年間)保存するとともに、第一号及び第四号の事項について、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。

5~12 (略)

(5)正しい。安衛則 34 条の2の8の規定により、リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行ったときは、当該リスクアセスメントの結果等、所定の事項を、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けること等の方法により、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。

【労働安全衛生規則】

(リスクアセスメントの結果等の記録及び保存並びに周知)

第34条の2の8 事業者は、リスクアセスメントを行つたときは、次に掲げる事項について、記録を作成し、次にリスクアセスメントを行うまでの期間(リスクアセスメントを行つた日から起算して3年以内に当該リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行つたときは、3年間)保存するとともに、当該事項を、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。

一及び二 (略)

 当該リスクアセスメントの結果

 (略)

 前項の規定による周知は、次に掲げるいずれかの方法により行うものとする。

 当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けること。

二及び三 (略)

2025年11月29日執筆