問1 常時使用する労働者が2000人で、硝酸を取り扱う作業があり、有害な業務として硝酸を取り扱う業務に常時20人の労働者を従事させている事業場の安全衛生管理体制に関する次のイ〜ホの記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみを全て挙げたものは(1)〜(5)のうちどれか。
ただし、硝酸を取り扱う業務の他に有害な業務はなく、硝酸を取り扱う作業は、試験研究のために行うものではないものとする。また、衛生管理者の選任の特例はないものとする。
イ 2人以上の産業医を選任しなければならない。
ロ その事業場に専属の産業医を選任しなければならない。
ハ 5人以上の衛生管理者を選任しなければならない。
ニ 衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けたもののうちから選任しなければならない。
ホ 特定化学物質作業主任者を選任しなければならない。
(1)イ ハ
(2)イ ハ ニ
(3)ロ ニ ホ
(4)ロ ホ
(5)ニ ホ
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更する(号番号等を除く)などの修正を行いました。
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| 2025年度(令和7年度) | 問01 | 難易度 | 総括安全衛生管理者及び産業医は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。 |
|---|---|---|---|
| 労働安全衛生管理体制 | 2 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。(中途段階なので、今後、修正があり得る。)
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問1 常時使用する労働者が 2000 人で、硝酸を取り扱う作業があり、有害な業務として硝酸を取り扱う業務に常時20人の労働者を従事させている事業場の安全衛生管理体制に関する次のイ〜ホの記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、硝酸を取り扱う業務の他に有害な業務はなく、硝酸を取り扱う作業は、試験研究のために行うものではないものとする。また、衛生管理者の選任の特例はないものとする。
イ 2人以上の産業医を選任しなければならない。
ロ その事業場に専属の産業医を選任しなければならない。
ハ 5人以上の衛生管理者を選任しなければならない。
ニ 衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けたもののうちから選任しなければならない。
ホ 特定化学物質作業主任者を選任しなければならない。
(1)イ ハ
(2)イ ハ ニ
(3)ロ ニ ホ
(4)ロ ホ
(5)ニ ホ
正答(4)
【解説】
イ 誤り。安衛則第 13 条第1項第四号の規定により2人以上の産業医を選任しなければならないのは、常時 3,000人を超える労働者を使用する事業場である。本肢の事業場は、常時使用する労働者が 2,000 人であるので、2人以上の産業医を選任する義務はない。
【労働安全衛生法】
(産業医等)
第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
2~6 (略)
【労働安全衛生規則】
(産業医の選任等)
第13条 法第13条第1項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一~三 (略)
四 常時3,000人をこえる労働者を使用する事業場にあつては、2人以上の産業医を選任すること。
2~4 (略)
ロ 正しい。こに事業場では常時使用する労働者が 2,000 人であり、安衛則第 13 条第1項第三号により専属の産業医を選任しなければならない。
なお、硝酸を取り扱う業務には常時20人の労働者を従事させているのみなので、こちらは同号には該当しない。
【労働安全衛生法】
(産業医等)
第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
2~6 (略)
【労働安全衛生規則】
(産業医の選任等)
第13条 法第13条第1項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一及び二 (略)
三 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場にあつては、その事業場に専属の者を選任すること。
イ~ル (略)
ヲ 水銀、砒ひ素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ワ及びカ (略)
四 (略)
2~4 (略)
ハ 誤り。本肢の事業場は、常時使用する労働者が 2,000 人であるので、4人以上の衛生管理者を選任すればよい(※)。
※ 現実には、2,000 人の規模の事業場では、新規採用や退職で労働者数は数人単位で日々変動するし、「常時雇用する」に該当するかどうかが微妙という労働者がいることも多い。常時雇用する労働者が、2,000 人ちょうどというような場合には、人数が変動することが絶対にないような会社か、ごく一時的に 2,000 人になるだけというような場合を除いて5人選任しておく方が無難である。
【労働安全衛生法】
(衛生管理者)
第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し(中略)なければならない。
2 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(衛生管理者を選任すべき事業場)
第4条 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。
【労働安全衛生規則】
(衛生管理者の選任)
第7条 法第12条第1項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一~三 (略)
四 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。
| 事業場の規模 (常時使用する労働者数) |
衛生管理者数 |
|---|---|
| 50人以上200以下 | 1人 |
| 200人を超え500人以下 | 2人 |
| 500人を超え1,000人以下 | 3人 |
| 1,000人を超え2,000人以下 | 4人 |
| 2,000人を超え3,000人以下 | 5人 |
| 3,000人を超える場合 | 6人 |
五及び六 (略)
2及び3 (略)
ニ 誤り。衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けたもののうちから選任しなければならないのは、安衛則第7条第1項第六号の規定により、常時 500 人を超える労働者を使用する事業場で、かつ、坑内労働又は一定の有害業務に 30 人以上の労働者を従事させるものである。
本肢の事業場は。常時 500 人を超える労働者を使用する事業場ではあるが、坑内労働はなく、有害業務(硝酸の蒸気を発散する場所における業務)については、「有害な業務として硝酸を取り扱う業務に常時 20 人の労働者を従事させている」とあり、「硝酸を取り扱う業務の他に有害な業務はな(い)」のであるから、衛生工学衛生管理者免許を受けたもののうちか衛生管理者を選任する義務はない。
【労働安全衛生法】
(衛生管理者)
第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し(中略)なければならない。
2 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(衛生管理者を選任すべき事業場)
第4条 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。
【労働安全衛生規則】
(衛生管理者の選任)
第7条 法第12条第1項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一~五 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則第18条第一号、第三号から第五号まで若しくは第九号に掲げる業務に常時30人以上の労働者を従事させるものにあつては、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任すること。
六 (略)
2及び3 (略)
【労働基準法施行規則】
第18条 (柱書略)
一~八 (略)
九 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務
十 (略)
ホ 正しい。本肢の事業場は、特定化学物質である硝酸を取り扱う作業があるので、特定化学物質作業主任者を選任しなければならない。
【労働安全衛生法】
(作業主任者)
第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
【労働安全衛生法施行令】
(作業主任者を選任すべき作業)
第6 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。
一~十七 (略)
十八 別表第三に掲げる特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業及び同表第二号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に係るものを製造し、又は取り扱う作業で厚生労働省令で定めるものを除く。)
十九~二十三 (略)
別表第三 特定化学物質(第六条、第十五条、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)
一 (略)
二 (略)
三 第三類物質
1~3 (略)
4 硝酸
5~9 (略)





