労働衛生コンサルタント試験 2025年 労働衛生一般 問15

過重労働対策




問題文
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月桂冠とEXPERTの文字を支える手

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2025年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

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2025年度(令和07年度) 問15 難易度 受験者に嫌がられる個数問題であるが、内容は常識的なものであり正答率は高かった。
メンタルヘルス指針  3 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

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問15 厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に関する次のイ~ホの記述について、適切なものの数は(1)~(5)のうちどれか。

イ 心の健康づくり計画の策定、その実施体制の整備等の具体的な実施方策や個人情報の保護に関する規程等の策定等に当たっては、衛生委員会等において十分調査審議を行うことが必要である。

ロ 事業者は、業務を一時的なプロジェクト体制で実施する等、通常のラインによるケアが困難な業務形態にある場合には、実務において指揮命令系統の上位にある者等によりケアが行われる体制を整えるなど、ラインによるケアと同等のケアが確実に実施されるようにする。

ハ 衛生管理者等は、心の健康づくり計画に基づき、産業医等の助言、指導等を踏まえて、具体的な教育研修の企画及び実施、職場環境等の評価と改善、心の健康に関する相談ができる雰囲気や体制づくりを行う。

ニ 事業者は、管理監督者による日常の職場管理や労働者からの意見聴取の結果を通じ、また、ストレスチェック結果の集団ごとの分析の結果や面接指導の結果等を活用して、職場環境等の具体的問題点を把握する。

ホ 事業者は、衛生委員会等において調査審議し、産業医等の助言を受けながら職場復帰支援プログラムを策定し、休業の開始から通常業務への復帰に至るまでの一連の標準的な流れを明らかにするとともに、それに対応する職場復帰支援の手順、内容及び関係者の役割等について定める。

(1)一つ

(2)二つ

(3)三つ

(4)四つ

(5)五つ

正答(5)

【解説】

問15試験結果

試験解答状況
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本問は問題文にもあるように、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号/最終改正:平成27年11月30日健康保持増進のための指針公示第6号。以下「メンタルヘルス指針」という。)に関するものである。なお、「労働者の心の健康の保持増進のための指針について」(平成18年3月31日基発第0331001号)にも目を通しておくこと。

受験者にとってあまりありがたくない個数問題であり、しかもすべての肢が適切であるというやや戸惑わせる形式である。しかし、内容は、不適切だと疑う要素がほとんどないものばかりである。

イ 適切である。メンタルヘルス指針の3により、心の健康づくり計画の策定、その実施体制の整備等の具体的な実施方策や個人情報の保護に関する規程等の策定等に当たっては、衛生委員会等において十分調査審議を行うことが必要である。

仮に内容を知らなかったとしても、厚労省は、衛生委員会の役割を重視しており、衛生関連のほとんどすべての指針・ガイドライン類に、衛生委員会による調査審議を行うことについて定めている。この種の規定は正しいと考えてよい。

【衛生委員会等における調査審議】

3 衛生委員会等における調査審議

  メンタルヘルスケアの推進に当たっては、事業者が労働者等の意見を聴きつつ事業場の実態に即した取組を行うことが必要である。また、心の健康問題に適切に対処するためには、産業医等の助言を求めることも必要である。このためにも、労使、産業医、衛生管理者等で構成される衛生委員会等を活用することが効果的である。労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第22条において、衛生委員会の付議事項として「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」が規定されており、4に掲げる心の健康づくり計画の策定はもとより、その実施体制の整備等の具体的な実施方策や個人情報の保護に関する規程等の策定等に当たっては、衛生委員会等において十分調査審議を行うことが必要である

  (後略)

※ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号/最終改正:平成27年11月30日健康保持増進のための指針公示第6号)

なお、メンタルヘルス指針の3にもあるように、「労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項」は、衛生委員会の法定の調査審議事項である。

【労働安全衛生法】

(衛生委員会)

第18条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

一~三 (略)

 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

2~4 (略)

【労働安全衛生規則】

(衛生委員会の付議事項)

第22条 法第18条第1項第四号の労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項には、次の事項が含まれるものとする。

一~九 (略)

 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。

十一及び十二 (略)

ロ 適切である。メンタルヘルス指針の5の(2)の第3段落により、事業者は、業務を一時的なプロジェクト体制で実施する等、通常のラインによるケアが困難な業務形態にある場合には、実務において指揮命令系統の上位にある者等によりケアが行われる体制を整えるなど、ラインによるケアと同等のケアが確実に実施されるようにする必要がある。

仮に内容を知らない場合、誤っていると疑う要素があるとすればこの肢であろうか。政策的には「元の職場の上司がラインによるケアを行う」という規定にすることも考えられるからである。ここはやはり事前の学習に頼るしかないケースである。

【ラインによるケアの補完】

5 4つのメンタルヘルスケアの推進

(2)ラインによるケア

  (前略)

  なお、業務を一時的なプロジェクト体制で実施する等、通常のラインによるケアが困難な業務形態にある場合には、実務において指揮命令系統の上位にいる者等によりケアが行われる体制を整えるなど、ラインによるケアと同等のケアが確実に実施されるようにするものとする。

※ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号/最終改正:平成27年11月30日健康保持増進のための指針公示第6号)

ハ 適切である。メンタルヘルス指針の5の(3)のイにより、衛生管理者等は、心の健康づくり計画に基づき、産業医等の助言、指導等を踏まえて、具体的な教育研修の企画及び実施、職場環境等の評価と改善、心の健康に関する相談ができる雰囲気や体制づくりを行うものとされている。

メンタルヘルス指針では、「メンタルヘルス管理者」などの特別な管理者を新設することはしていない(※)。このため衛生管理者がスーパバイザーとしての役割を果たすのである。

※ 化学物質関連の行政指導通達などでは、特別な管理者を新設することがあった。現在は省令で義務づけられている化学物質管理者や保護具着用管理責任者は、かつては行政指導通達で定められていたのである。

【衛生管理者の役割】

5 4つのメンタルヘルスケアの推進

(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケア

イ 衛生管理者等

  衛生管理者等は、心の健康づくり計画に基づき、産業医等の助言、指導等を踏まえて、具体的な教育研修の企画及び実施、職場環境等の評価と改善、心の健康に関する相談ができる雰囲気や体制づくりを行う。またセルフケア及びラインによるケアを支援し、その実施状況を把握するとともに、産業医等と連携しながら事業場外資源との連絡調整に当たることが効果的である。

※ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号/最終改正:平成27年11月30日健康保持増進のための指針公示第6号)

ニ 適切である(※)。メンタルヘルス指針の6の(2)のアにより、事業者は、管理監督者による日常の職場管理や労働者からの意見聴取の結果を通じ、また、ストレスチェック結果の集団ごとの分析の結果や面接指導の結果等を活用して、職場環境等の具体的問題点を把握するものとされている。

※ 本肢には誤っていると考える要素がほとんどない。

【職場環境等の具体的問題点の把握】

6 メンタルヘルスケアの具体的進め方

(2)職場環境等の把握と改善

ア 職場環境等の評価と問題点の把握

  職場環境等を改善するためには、まず、職場環境等を評価し、問題点を把握することが必要である。このため、事業者は、管理監督者による日常の職場管理や労働者からの意見聴取の結果を通じ、また、ストレスチェック結果の集団ごとの分析の結果や面接指導の結果等を活用して、職場環境等の具体的問題点を把握するものとする

  事業場内産業保健スタッフ等は、職場環境等の評価と問題点の把握において中心的役割を果たすものであり、職場巡視による観察、労働者及び管理監督者からの聞き取り調査、産業医、保健師等によるストレスチェック結果の集団ごとの分析の実施又は集団ごとの分析結果を事業場外資源から入手する等により、定期的又は必要に応じて、職場内のストレス要因を把握し、評価するものとする。

※ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号/最終改正:平成27年11月30日健康保持増進のための指針公示第6号)

ホ 適切である(※)。メンタルヘルス指針の6の(4)の①により、事業者は、衛生委員会等において調査審議し、産業医等の助言を受けながら職場復帰支援プログラムを策定し、休業の開始から通常業務への復帰に至るまでの一連の標準的な流れを明らかにするとともに、それに対応する職場復帰支援の手順、内容及び関係者の役割等について定めるものとされている。

※ 本肢には誤っていると考える要素がほとんどない。なお、職場復帰支援プログラムは、職場復帰支援の手引きにも定められている。

【職場環境等の具体的問題点の把握】

6 メンタルヘルスケアの具体的進め方

(4)職場復帰における支援

  メンタルヘルス不調により休業した労働者が円滑に職場復帰し、就業を継続できるようにするため、事業者は、その労働者に対する支援として、次に掲げる事項を適切に行うものとする。

 衛生委員会等において調査審議し、産業医等の助言を受けながら職場復帰支援プログラムを策定すること。職場復帰支援プログラムにおいては、休業の開始から通常業務への復帰に至るまでの一連の標準的な流れを明らかにするとともに、それに対応する職場復帰支援の手順、内容及び関係者の役割等について定めること。

②~④ (略)

※ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号/最終改正:平成27年11月30日健康保持増進のための指針公示第6号)