問11 熱中症に関する次のイ~ニの記述について、適切なもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
イ 熱中症の重症度分類において、Ⅳ度のみ症状に意識障害や枢神経症状が含まれる。
ロ 職場における熱中症による休業4日以上の死傷者数は、令和元年から令和5年の5年間において、500 人を下回った年はない。
ハ 代謝率レベルの高い作業を行うときの WBGT 基準値は、代謝率レベルの低い作業より高くなる。
ニ 作業中の衣類は、暑熱環境において健康影響を受けるかどうかの要因に含まれ、衣類の組合せに応じた着衣補正値を WBGT 値に加算する。
(1)イ ロ ハ
(2)イ ハ
(3)イ ニ
(4)ロ ハ ニ
(5)ロ ニ
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2025年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
| 2025年度(令和07年度) | 問11 | 難易度 | 記憶問題と思考問題の組み合わせであるが、基礎的な内容である。正答できないと合格は難しい。 |
|---|---|---|---|
| 熱中症対策 | 2 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問11 熱中症に関する次のイ~ニの記述について、適切なもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
イ 熱中症の重症度分類において、Ⅳ度のみ症状に意識障害や枢神経症状が含まれる。
ロ 職場における熱中症による休業4日以上の死傷者数は、令和元年から令和5年の5年間において、500 人を下回った年はない。
ハ 代謝率レベルの高い作業を行うときの WBGT 基準値は、代謝率レベルの低い作業より高くなる。
ニ 作業中の衣類は、暑熱環境において健康影響を受けるかどうかの要因に含まれ、衣類の組合せに応じた着衣補正値を WBGT 値に加算する。
(1)イ ロ ハ
(2)イ ハ
(3)イ ニ
(4)ロ ハ ニ
(5)ロ ニ
正答(5)
【解説】
熱中症に関する問題は、頻出している。とくに 2024 年6月に改正安衛則が施行(※)されるなど、熱中症に対する関心が高くなっており、正答率は高かった。
※ この年のコンサルタント試験は2024 年4月1日時点で施行されていたものが前提となるため、改正後の条文は試験問題の範囲ではない。
イについては、医学的な内容でやや高度な内容ではあるが、2024 年後半に行政が盛んに行った熱中症対策関連の研修を受けていれば、その中で説明を受けることもあっただろう。また、本問は、イの正誤が分からなくても正答は可能である。
イ 適切ではない。図は、日本救急医学会のガイドライン(※)の熱中症の重症度分類が 2024 年に改正されたときの概念図である。それまで3段階に分かれていた重症度分類は、このときに4段階に分かれた。
※ (一社)日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン 2024」(2024 年7月)
ここで、新しい4段階の各重症度の意義は、次のように定められている。これは覚えておく必要がある。
| 重症度 | 症状 |
|---|---|
| Ⅰ度 |
めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)、意識障害を認めない |
| Ⅱ度 |
頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下(JCS ≦ 1) |
| Ⅲ度 (2024) |
下記の3つのうちいずれかを含む ・ 中枢神経症状(意識障害 JCS ≧ 2、小脳症状、けいれん発作) ・ 肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害) ・ 血液凝固異常(急性期 DIC 診断基準(日本救急医学会)にて DIC と診断) |
| Ⅳ度 |
深部体温 40.0 ℃以上かつ GCS ≦ 8 |
ここで、本表に使用されている用語のうち、意識障害や枢神経症状に関するものの意味は、次のようなものである。
| 用語 | 意義 |
|---|---|
| JCS | Japan coma scale(日本で使用されている意識障害の評価方法のひとつ。0から 300 の間で表現される。0が正常な状態で、数字が大きくなるほど、重度の意識障害であることを意味する。) |
| DIC | Disseminated intravascular coagulation (播種性血管内凝固症候群) |
| GCS | Glasgow coma scale(Teasdale Gらによって1974 年に発表された意識レベルの評価指標。世界的に広く使用され、世界標準となっている。合計スコアが8点未満になると昏睡とみなされる。 |
JCS の判断基準は次のようになっている。すなわち、JCS が0(ゼロ)のときのみ「症状に意識障害や枢神経症状が含まれない」ということになる。
| Ⅲ.刺激をしても覚醒しない状態(3桁の点数で表現) (deep coma、coma、semicoma) |
|---|
| 300.痛み刺激に全く反応しない 200.痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる 100.痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする |
| Ⅱ.刺激すると覚醒する状態(2桁の点数で表現) (stupor、lethargy、hypersomnia、somnolence、drowsiness) |
| 30.痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する 20.大きな声または体を揺さぶることにより開眼する 10.普通の呼びかけで容易に開眼する |
| Ⅰ.刺激しないでも覚醒している状態(1桁の点数で表現) (delirium、confusion、senselessness) |
| 3.自分の名前、生年月日が言えない 2.見当識障害がある 1.意識清明とは言えない |
※ R:Restlessness(不穏)、I:Incontinence(失禁)、A:Apallic stateまたはAkinetic mutism
※ 太田富雄他「急性期意識障害の新しいgradingとその表現法.(いわゆる3-3-9度方式)」(第3回脳卒中の外科研究会講演集 1975)
従って、熱中症の重症度分類において、JCS≦1の場合はⅡ度と判断されるのであるから、意識障害が含まれないのは、Ⅰ度のみということになる。
なお、実務においてこのことは覚えておかなければならない。意識障害が少しでもあれば、医療搬送の必要があるということである(※)。
※ 労働災害ではないが、大学の部活や学校行事の登山で、意識障害があるにもかかわらず医療搬送をせず、民事賠償請求が認められたケースがある。
ロ 適切である。職場における熱中症による休業4日以上の死傷者数は、2019 年(令和元年)から2023 年(令和5年)の5年間において、500 人を下回った年はない。
なお、熱中症の発生状況は今後とも出題される可能性が高い。最近は労働衛生関係の統計はかなり細かな内容が問われることがあるので、本サイトの「熱中症による労働災害の発生状況」の各グラフに目を通して、その傾向等を把握しておいてほしい(※)。
※ 口述試験で問われる可能性もあるが、口述試験は筆記試験ほど細かな内容は問われない傾向がある。
ハ 適切ではない。WBGT 基準値とは、既往症がない健康な成年男性を基準に、ばく露されてもほとんどの者が有害な影響を受けないレベルに相当するものとして、「職場における熱中症予防基本対策要綱」(令和3年4月20日基発0420第3号/最終改正:令和7年5月20日基発0520第7号。以下「熱中症対策要綱」という。)の表1-1において国が設定した基準である。
当然のことだが、代謝率レベルの高い作業を行うときは、より低い WBGT 値でも熱中症のリスクが高まるので、WBGT 基準値は、代謝率レベルの高い作業では低い作業よりも低くなる。
ニ 適切である。熱中症対策要綱の第1の2により、衣類の組合せに応じた着衣補正値を WBGT 値に加算することとされている。すなわち、作業中の衣類は、暑熱環境において健康影響を受けるかどうかの要因に含まれる。
【衣類の組合せと熱中症リスク】
第1 WBGT 値(暑さ指数)の活用
2 WBGT値に係る留意事項
表1-2に掲げる衣類を着用して作業を行う場合にあっては、式①又は②により算出されたWBGT値に、それぞれ表1-2に掲げる着衣補正値を加える必要があること。
また、WBGT 基準値は、健康な労働(作業)者を基準に、ばく露されてもほとんどの者が有害な影響を受けないレベルに相当するものとして設定されていることに留意すること。
※ 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱」(令和3年4月20日基発0420第3号/最終改正:令和7年5月20日基発0520第7号)より





