問7 電離放射線に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)ベータ線は電子からなる粒子線で、1価のマイナスの電荷を持っている。
(2)放射線防護のための線量として、吸収線量に放射線加重(荷重)係数で重み付けした等価線量を用いる。
(3)電離放射線が物質を透過する際に、原子又は分子から電子を放出させることを電離作用という。
(4)電磁波であるエックス線は、粒子線である中性子線より物質を透過する力が強い。
(5)エックス線とガンマ線の違いは波長によるものではない。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2025年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
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| 2025年度(令和07年度) | 問07 | 難易度 | 問題がやや不適切である。出題ミスといってもよいのではなかろうか。 |
|---|---|---|---|
| 電離放射線 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問7 電離放射線に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)ベータ線は電子からなる粒子線で、1価のマイナスの電荷を持っている。
(2)放射線防護のための線量として、吸収線量に放射線加重(荷重)係数で重み付けした等価線量を用いる。
(3)電離放射線が物質を透過する際に、原子又は分子から電子を放出させることを電離作用という。
(4)電磁波であるエックス線は、粒子線である中性子線より物質を透過する力が強い。
(5)エックス線とガンマ線の違いは波長によるものではない。
正答:試験協会は(4)とする。(1)と(4)は、やや不明瞭。
【解説】
電離放射線に関する出題は、過去問でも非常に多く、(1)と(4)以外は、過去問の学習によって正答可能である。
なお、(1)については、やや厳格性を欠くが正しい肢と言ってよいであろう。問題は(4)であるが、電磁波であるエックス線は、物質によって透過する力が異なるので、どちらが透過力が強いなどと言えるようなものではない。
問題が厳密性を欠くばかりか、拙劣という印象さえ受ける。出題ミスというより他はない。
(1)正しいとしてよいであろう。一般には、ベータ線とは電子からなる粒子線のことであり、これは1価のマイナスの電荷を持っている。
ただし、厳密には、これはベータマイナス(β-)線の定義である。ベータプラス(β+)線は、陽電子の流れで陽電子は1価のプラスの電荷をもつ。
環境省のサイト「親子で学ぶ放射能サイト」の「ベータ(β)線ってなんだろう?」には、明確に「ベータ(β)線とは、高速で飛び出す電子(β-)又は陽電子(β+)で構成される粒子線
」と記されている。
※ 図は、環境省のサイト「親子で学ぶ放射能サイト」の「ベータ(β)線ってなんだろう?」より引用
従って、誤りと解する余地もある。
(2)正しい。これは等価線量の定義である。なお、本肢は、2016年度の問04の解説を読んでおけば正しいと分かる。
等価線量 = 吸収線量 × 放射線加重係数
| 放射線の種類 | 放射線加重係数 |
|---|---|
| ガンマ線、エックス線、ベータ線 | 1 |
| 陽子線 | 2 |
| アルファ線、重イオン | 20 |
| 中性子線 | 2.5~20 |
(3)正しい。これは電離作用の定義である。例えば、環境省「放射線の電離作用-電離放射線の性質」は「放射線が物質中を通過する場合、持っているエネルギーにより、物質を構成している原子が持つ軌道電子を弾き出して、陽電荷を帯びた状態の原子(又は陽イオンの分子)と自由な電子とに分離します。これを電離作用といいます
」とする。
【放射線の電離作用】
第1章 放射線の基礎知識
1.3 放射線
放射線の電離作用-電離放射線の性質
放射線が物質中を通過する場合、持っているエネルギーにより、物質を構成している原子が持つ軌道電子を弾き出して、陽電荷を帯びた状態の原子(又は陽イオンの分子)と自由な電子とに分離します。これを電離作用といいます。
電離作用を持つ電離放射線の中には、物質を直接電離するものと、間接的に電離するものがあります。
α(アルファ)線、β(ベータ)線等の電荷を持った粒子線は、物質を直接電離します。特にα線は、電離密度が高く、β線等の数百倍の密度の電離を引き起こします。
γ(ガンマ)線、X(エックス)線は、物質との相互作用によって発生した二次電子によって、物質を間接的に電離します。
※ 環境省「放射線の電離作用-電離放射線の性質」(放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和6年度版))より
(4)誤り。電磁波であるエックス線は、アルミニウムの薄い板などは透過してしまうが、鉛や鉄の厚い板で弱めることができる。しかし、水は簡単に透過してしまう。
これに対し、電荷を持たない粒子線である中性子線は、アルミニウムの薄い板はもちろんのこと、鉛や鉄の厚い板も簡単に透過してしまう。しかし、水素を含む物質(水やコンクリート)で弱めることができる。
要するに、どちらの透過力が強いなどと比べられるようなものではないという意味では、誤りと言うべきだろうか。しかし、エックス線と中性子線の強弱を問う問題など、不適切というより他はない。
【放射線の透過力】
第1章 放射線の基礎知識
1.3 放射線
放射線の透過力
電荷を持つ粒子や電磁波は、物質と相互作用し、エネルギー(速度)を失い、最終的には止まります。
α(アルファ)線は電離する量が極めて多いので、紙1枚で止まります。β(ベータ)線は、エネルギーによりますが、空気中では数m程度飛び、プラスチック1 cm、アルミ板2~4 mm 程度で止まります。γ(ガンマ)線・X(エックス)線はα線やβ線よりも透過力が高く、これもエネルギーにより、空気中の原子と衝突しながら次第にエネルギーを失い、空気中を数十mから数百m飛びます。一方、密度の高い鉛や鉄の厚い板によって止めることができるため、放射線発生装置からのγ線やX線は、鉄等を用いて遮へいすることができます。
電荷を持たない中性子は、衝突によりエネルギーを失い、その後、物質との相互作用等で吸収されます。すなわち、中性子は、物質を構成する原子核と直接衝突することでエネルギー(速度)を失います。質量がほぼ同じである陽子(水素の原子核)と衝突する場合に最も効果的にエネルギーを失います。
※ 環境省「放射線の電離作用-電離放射線の性質」(放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和6年度版))より
(5)正しい。エックス線とガンマ線の違いは、発生機構の違いによるのである。ガンマ線は、放射性核種の原子核崩壊によって発生する。一方、エックス線は軌道電子の遷移によって発生するのである。周波数が同じであれば、ガンマ線とエックス線は同じものであり、区別することはできない。
なお、エックス線の周波数は3×1016以上、ガンマ線は3×1019以上である
【エックス線とガンマ線の違い】
第1章 放射線の基礎知識
1.3 放射線
電磁波の仲間
電磁波とは、電界(電場)と磁界(磁場)が相互に作用しながら空間を伝播する波のことです。波長が短くなる(周波数が高くなる)ほど、電磁波のエネルギーは高くなります。また放射線のエネルギーは電子ボルト(eV)で表されます。1eV は1.6 x 10-19 ジュール(J)です。
X(エックス)線とγ(ガンマ)線は、発生のメカニズムの違いがありますが、どちらもエネルギーの高い電磁波です。
このように電磁波は、文字どおり波としての振る舞いをすることもあることから、図に示すように電磁波が進む方向に対し直角な波型に表すことがあります。
電離放射線の種類
粒子線の仲間には、α(アルファ)線、β(ベータ)線、中性子線等が含まれます。
α線とは、陽子2個と中性子2個からなるヘリウム原子核が高速で飛び出したもの、β線は原子核から飛び出した電子です。そのほかに中性子線や陽子線も粒子線の仲間です。
γ(ガンマ)線とX(エックス)線は電磁波の仲間です。α線、β線、γ線が原子核から放出されるのに対し、健康診査等で行われるX線検査で利用されるX線は原子核の外側で発生する電磁波です。X線検査の際には、X線管で発生させるX線が利用されます。X線には、制動X線と特性X線があります(上巻P16「医療で使われるエックス線と発生装置」)。
※ 環境省「放射線の電離作用-電離放射線の性質」(放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和6年度版))より





