労働衛生コンサルタント試験 2024年 労働衛生関係法令 問09

有機溶剤中毒予防規則全般




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2人で受験勉強する医療関係者

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更する(号番号等を除く)などの修正を行いました。

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2024年度(令和6年度) 問09 難易度 有機則に関する問題は、2020 年度以降は毎年出題されている。基本的な内容で、合否を分けるレベル。
有機則の規定  3 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問9 有機溶剤中毒予防規則に関する次のイ~ニの記述について、労働安全衛生法令上、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

ただし、有機溶剤中毒予防規則に定める適用の除外及び設備の特例はないものとする。

イ 屋内作業場において第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務を行う作業場所に設置する上方吸引型の外付け式フードの局所排気装置は、0.5メートル/秒の制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。

ロ 事業者は、作業環境測定の評価の結果、第三管理区分に区分された場所については、直ちに、施設、作業方法等の点検を行い、その結果に基づき、作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第一管理区分又は第二管理区分となるようにしなければならない。

ハ 事業者は、ずい道の内部において第三種有機溶剤等を用いて行う有機取剤業務に常時従事する労働者に対し、6か月以内ごとに1回、定期に、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

ニ 事業者は、有機溶剤等を入れたことのあるタンクで有機溶剤の蒸気の発散するおそれがあるものの内部における業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に、有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具を使用させなければならない。

(1) イ  ハ

(2) イ  ニ

(3) ロ  ハ

(4) ロ  ニ

(5) ハ  ニ

正答(3)

【解説】

問9試験結果

試験解答状況
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本問の難易度は、この後の数問に比較するとかなり低い。絶対に落としてはならない問題である。

イ 誤り。有機則第5条により、屋内作業場において第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務を行う作業場所には局所排気装置を設ける等の措置を採らなければならない。

そして、この規定により、設置する局所排気装置は、同規則第 16 条第1項(表)により 1.0 メートル/秒の制御風速が必要である。

【有機溶剤中毒予防規則】

(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)

第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第1条第1項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第13条の2第1項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(局所排気装置の性能)

第16条 局所排気装置は、次の表の上欄に掲げる型式に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。

型式 制御風速(メートル/秒)
囲い式フード 〇・四
外付け式フード 側方吸引型 〇・五
下方吸引型 〇・五
上方吸引型 一・〇
備考 (略)

 前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該局所排気装置は、その換気量を、発散する有機溶剤等の区分に応じて、それぞれ第17条に規定する全体換気装置の換気量に等しくなるまで下げた場合の制御風速を出し得る能力を有すれば足りる。

 第6条第一項の規定により局所排気装置を設けた場合

 第8条第2項、第9条第1項又は第11条の規定に該当し、全体換気装置を設けることにより有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備及び局所排気装置を設けることを要しないとされる場合で、局所排気装置を設けたとき。

ロ 正しい。有機則第 28 条の3第1項の規定により、事業者は、作業環境測定の評価の結果、第三管理区分に区分された場所については、直ちに、施設、作業方法等の点検を行い、その結果に基づき、作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第一管理区分又は第二管理区分となるようにしなければならない。

【労働安全衛生法】

(作業環境測定)

第65条 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。

2~5 (略)

(作業環境測定の結果の評価等)

第65条の2 事業者は、前条第1項又は第5項の規定による作業環境測定の結果の評価に基づいて、労働者の健康を保持するため必要があると認められるときは、厚生労働省令で定めるところにより、施設又は設備の設置又は整備、健康診断の実施その他の適切な措置を講じなければならない。

2及び3 (略)

【有機溶剤中毒予防規則】

(評価の結果に基づく措置)

第28条の3 事業者は、前条第1項の規定による評価の結果、第三管理区分に区分された場所については、直ちに、施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第一管理区分又は第二管理区分となるようにしなければならない。

2~4 (略)

ハ 正しい。有機則第 29 条第1項の規定により、ずい道の内部において第三種有機溶剤等を用いて行う有機取剤業務に常時従事する労働者に対し、6か月以内ごとに1回、定期に、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

なお、ずい道の内部は有機則第2条第1項第一号のカッコ書きによりタンク等の内部に該当する。

【労働安全衛生法】

(健康診断)

第66条 (第1項 略)

 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。

3~5 (略)

【安全衛生法施行令】

(健康診断を行うべき有害な業務)

第22条 法第66条第2項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。

一~五 (略)

 屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所において別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるもの

2及び3 (略)

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 (第1項 略)

 (柱書 略)

一~五 (略)

 ずい道の内部

七~十一 (略)

(適用の除外)

第2条 第二章、第三章、第四章中第19条、第19条の2及び第24条から第26条まで、第七章並びに第九章の規定は、事業者が前条第1項第六号ハからルまでのいずれかに掲げる業務に労働者を従事させる場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、当該業務については、適用しない。

 屋内作業場等(屋内作業場又は前条第2項各号に掲げる場所をいう。以下同じ。)のうちタンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第2項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)以外の場所において当該業務に労働者を従事させる場合で、作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量が、次の表の上欄に掲げる区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる式により計算した量(以下「有機溶剤等の許容消費量」という。)を超えないとき。

(表 略)

 (略)

2及び3 (略)

(健康診断)

第29条 令第22条第1項第六号の厚生労働省令で定める業務は、屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあつては、タンク等の内部に限る。)における有機溶剤業務のうち、第3条第1項の場合における同項の業務以外の業務とする。

2~6 (略)

ニ 誤り。本肢の「有機溶剤等を入れたことのあるタンクで有機溶剤の蒸気の発散するおそれがあるものの内部における業務」は、有機則第 32 条第一号に該当する。従って、送気マスクの使用が必要である。

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~五 (略)

 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

イ~ル (略)

 有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。以下同じ。)の内部における業務

七~十一 (略)

 (略)

(送気マスクの使用)

第32条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。

 第1条第1項第六号ヲに掲げる業務

 (略)

2及び3 (略)

2025年04月20日執筆