労働衛生コンサルタント試験 2024年 労働衛生関係法令 問08

労働安全衛生規則の衛生基準




問題文
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2人で受験勉強する医療関係者

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更する(号番号等を除く)などの修正を行いました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2024年度(令和6年度) 問08 難易度 本年度の安衛則の衛生基準は、かなり詳細な知識が問われたせいか、難問は高かったようだ。
安衛則の衛生基準  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問8 労働安全衛生規則の衛生基準に関する次のイ~ホの記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

イ 事業者は、強烈な騒音を発する場所において、業務の一部を請負人に請け負わせるときは、当該業務を行う労働者と請負人に使用させるために必要な数の耳栓その他の保護具を備えなければならない。

ロ 事業者は、高温による健康障害を防止するために必要な措置を講じて人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときを除き、坑内における気温は 28 度以下としなければならない。

ハ 事業者は、有害な光線又は超音波にさらされる場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止しなければならない。

ニ 事業者は、労働者を屋外で就業させる場合には、塩及び労働者の飲用に供する水その他の飲料を、十分供給するようにしなければならない。

ホ 同時に就業する労働者の数が常時 10 人以内である事業場においては、四方を壁等で囲まれた1個の便房により構成される独立個室型の便所を1か所設ければ、男性用、女性用に区別した便所を設ける必要はない。

(1) イ  ロ  ハ

(2) イ  ハ  ニ

(3) ロ  ニ  ホ

(4) ロ  ホ

(5) ハ  ホ

正答(5)

【解説】

問8試験結果

試験解答状況
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本問も正答の肢に回答した受験者の割合は、他の肢を下回った。本問の肢にはここ数年で改正されたものがあるが、本質的な改正とも思えずそのために難易度が上がったとは思えない。

イ 誤り。安衛則第第 595 条第1項にあるように耳栓その他の保護具は、自社の労働者に使用させるために備えておけばよい。

請負人の労働者が使用する保護具については、同条第2項にあるように、請負人に対して保護具の必要があることを周知する必要がある。実際に保護具を準備するのは、請負人である。

【労働安全衛生規則】

(騒音障害防止用の保護具)

第595条 事業者は、強烈な騒音を発する場所における業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、耳栓その他の保護具を備えなければならない。

 事業者は、前項の業務の一部を請負人に請け負わせるときは、当該請負人に対し、耳栓その他の保護具について、備えておくこと等によりこれらを使用することができるようにする必要がある旨を周知させなければならない。

3及び4 (略)

ロ 誤り。安衛則第第 611 条により、業者は、高温による健康障害を防止するために必要な措置を講じて人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときを除き、坑内における気温は 37 度以下としなければならない。28 度以下ではない。

なお、安衛則第 589 条により、行内の気温が 28 度を超える場合は作業環境測定が必要となることと混同しないようにする必要がある。

【労働安全衛生法】

(作業環境測定)

第65条 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。

2~5 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(作業環境測定を行うべき作業場)

第21条 法第65条第1項の政令で定める作業場は、次のとおりとする。

一~三 (略)

 坑内の作業場で、厚生労働省令で定めるもの

五~十 (略)

【労働安全衛生規則】

第589条 令第21条第四号の厚生労働省令で定める坑内の作業場は、次のとおりとする。

 (略)

 気温が28度をこえ、又はこえるおそれのある坑内の作業場

 (略)

(坑内の気温)

第611条 事業者は、坑内における気温を37度以下としなければならない。ただし、高温による健康障害を防止するため必要な措置を講じて人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときは、この限りでない。

ハ 正しい。安衛則第 585 条の規定により、事業者は、有害な光線又は超音波にさらされる場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止しなければならない。

なお、立入禁止とするのは、自社の労働者に限られないことに留意すること。

【労働安全衛生規則】

(立入禁止等)

第585条 事業者は、次の場所に関係者以外の者が立ち入ることについて、禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により禁止するとともに、表示以外の方法により禁止したときは、当該場所が立入禁止である旨を見やすい箇所に表示しなければならない。

一及び二 (略)

 有害な光線又は超音波にさらされる場所

四~七 (略)

 (略)

ニ 誤り。このような規定はない。なお、安衛則第 617 条及び第 627 条は、労働者を屋外で就業させる場合には、塩及び労働者の飲用に供する水その他の飲料を、十分供給するようにしなければならないとは定めていない。

常識で考えても、屋外で就業する場合、冬季であれば寒い状況となろう。1年を通して常に、塩及び労働者の飲用に供する水その他の飲料を十分供給しなければならないという規定があるはずがない。

【労働安全衛生規則】

(発汗作業に関する措置)

第617条 事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない。

(給水)

第627条 事業者は、労働者の飲用に供する水その他の飲料を、十分供給するようにしなければならない。

 (略)

ホ 正しい。安衛則第 628 条の2第1項の規定により、同時に就業する労働者の数が常時 10 人以内である事業場においては、四方を壁等で囲まれた1個の便房により構成される独立個室型の便所を1か所設ければ、男性用、女性用に区別した便所を設ける必要はない。

【労働安全衛生規則】

(独立個室型の便所の特例)

第628条の2 前条第1項第一号から第四号までの規定にかかわらず、同時に就業する労働者の数が常時10人以内である場合は、男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた1個の便房により構成される便所(次項において「独立個室型の便所」という。)を設けることで足りるものとする。

 (略)

2025年04月20日執筆