労働衛生コンサルタント試験 2024年 労働衛生関係法令 問06

労働安全衛生法令に基づく免許




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2人で受験勉強する医療関係者

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更する(号番号等を除く)などの修正を行いました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2024年度(令和6年度) 問06 難易度 免許に関する問題は、2012 年度以来では初出。安全衛生担当者以外には難問だったか。
免許  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問6 労働安全衛生法令に基づく免許に関する次のイ~二の記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

イ 事業者は、潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコックを操作する業務については、潜水士免許を受けた者でなければ、就かせてはならない。

ロ 事業者は、医師、歯科医師及び労働衛生コンサルタントについては、第一種衛生管理者免許を受けていない者であっても、衛生管理者として選任することができる。

ハ 満 20 歳に満たない者は、エックス線作業主任者免許を受けることができない。

ニ 高圧室内作業主任者がその職務に従事するときは、高圧室内作業主任者免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない。

(1) イ  ハ  ニ

(2) イ  ニ

(3) ロ  ハ

(4) ロ  ニ

(5) ロ

正答(5)

【解説】

問6試験結果

試験解答状況
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労働衛生コンサルタント試験では、免許(衛生管理者、作業主任者及び就業制限)関連の問題は、2012 年度以来では初出である。正答の肢への回答が最も多かったものの、正答率は 50 %を下回った。

なお、衛生管理者及び作業主任者はもちろんのことであるが、就業制限業務も(安全コンサルタントで頻出であるが)衛生コンサルタントにとっても必要な知識である。これを機会に基本的なことは覚えておくようにしたい。

イ 誤り。安衛令第 20 条には、「潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコックを操作する業務」は定められていない。なお、同条第九号は「潜水器を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う業務」となっている。

本肢の「潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコックを操作する業務」は、安衛法第 59 条第3項による特別教育の対象となっている(安衛則第 36 条第二十三号)。

【労働安全衛生法】

(安全衛生教育)

第59条 (第1項及び第2項 略)

 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

(就業制限)

第61条 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。

2~4 (略)

【安全衛生法施行令】

(就業制限に係る業務)

第20条 法第61条第1項の政令で定める業務は、次のとおりとする。

一~八 (略)

 潜水器を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う業務

十~十六 (略)

【労働安全衛生規則】

(特別教育を必要とする業務)

第36条 法第59条第3項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。

一~二十二 (略)

二十三 潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコツクを操作する業務

二十四~四十一 (略)

安衛法第 61 条の構造

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なお、就業制限業務に関する安衛法第 61 条の文章は、やや分かりにくい構造となっているので、図解したものを付しておく。条文上は「免許を受けた者」と「技能講習を修了した者」は「厚生労働省令で定める資格を有する者」の例示として挙げられているだけだが、実際には免許を受けた者と技能講習を修了した者がほとんどである。

ところで、(作業主任者の場合とは異なり)就業制限の分野では免許は技能講習の上位資格と位置付けられている。このため、免許を有するものは下位の技能講習を必要とする業務を行うことができるが、逆は許されない。

ロ 正しい。安衛法第 12 条第1項及び安衛則第 10 条の規定により、医師、歯科医師及び労働衛生コンサルタント(※)については、第一種衛生管理者免許を受けていない者であっても、衛生管理者として選任することができる。

※ 産業医の要件とは異なり、「試験の区分が保健衛生であるもの」に限られないので、誤解しないこと。産業医の要件(安衛法第 13 条第2項)については、安衛則第 14 条第2項第三号の規定により、衛生コンサルタントである医師についてはその試験の区分が保健衛生であるものに限られる。

【労働安全衛生法】

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(衛生管理者の資格)

第10条 法第12条第1項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。

 医師

 歯科医師

 労働衛生コンサルタント

 前三号に掲げる者のほか、厚生労働大臣の定める者

ハ 誤り。安衛法第 72 条第2項(第二号)及び電離則第 49 条の規定により、満 18 歳に満たない者は、エックス線作業主任者免許を受けることができない。

なお、満 20 歳に満たない者が受けることができないのは、高圧室内作業主任者免許(高圧則第 48 条)のみである。

※ 技能講習の場合は、業務そのものに年齢制限がある場合でも技能講習を受けることは可能である。詳細は「18歳未満の者の技能講習受講の可否」を参照してほしい。

【労働安全衛生法】

(免許)

第72条 (第1項 略)

 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えない。

 (略)

 前号に掲げる者のほか、免許の種類に応じて、厚生労働省令で定める者

3及び4 (略)

【電離放射線障害防止規則】

(エツクス線作業主任者免許の欠格事由)

第49条 エツクス線作業主任者免許に係る法第72条第2項第二号の厚生労働省令で定める者は、満18歳に満たない者とする。

ニ 誤り。作業主任者について定める安衛法第 14 条には、就業制限業務に関する第 61 条第3項のような規定はない。従って、高圧室内作業主任者がその職務に従事するときは、高圧室内作業主任者免許証その他その資格を証する書面を携帯する必要はない。

なお、作業主任者の場合であっても就業制限の場合であっても、資格者には免許証(安衛法第 72 条第1項)又は技能講習修了証(安衛法第 76 条第2項)は交付される。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

(就業制限)

第61条 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。

 (略)

 第一項の規定により当該業務につくことができる者は、当該業務に従事するときは、これに係る免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない。

 (略)

(免許)

第72条 第12条第1項、第14条又は第61条第1項の免許(以下「免許」という。)は、第75条第1項の免許試験に合格した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者に対し、免許証を交付して行う。

2~4 (略)

(技能講習)

第76条 第14条又は第61条第1項の技能講習(以下「技能講習」という。)は、別表第18に掲げる区分ごとに、学科講習又は実技講習によつて行う。

 技能講習を行なつた者は、当該技能講習を修了した者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、技能講習修了証を交付しなければならない。

 (略)

2025年04月20日執筆