労働衛生コンサルタント試験 2024年 労働衛生一般 問25

呼吸用保護具




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2024年度(令和06年度) 問25 難易度 呼吸用保護具に特化した問題は、2012年度以降は初出だが基本的な内容。確実に正答できる必要がある。
呼吸用保護具  2 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問25 呼吸用保護具に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)放射性物質による汚染のおそれのある区域内の作業で、オイルミストが混在する場合に使用する防じんマスクのろ過材の種類は RL3 である。

(2)有機ガス用防毒マスクの吸収缶は、メタノール、二硫化炭素については、除毒能力試験の試験用ガスに比べて破過時間が長くなる傾向がある。

(3)アンモニア用の直結式防毒マスクは、アンモニアの濃度が 1.5 %以下の大気中で使用するものである。

(4)吸収缶の破過を知るために、有毒ガス等の臭いに頼ることは、そのばく露限界値にかかわらず、適切ではない。

(5)ハロゲンガス用防毒マスクの吸収缶の色は灰色及び黒色で、二層に分けている。

正答(2)

【解説】

問25試験結果

試験解答状況
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呼吸用保護具に特化した問題は、本サイトが解説を掲示している 2012 年度以降は初めての出題である。しかし、内容は基本的なものであり、確実に正答できる必要がある。

呼吸用保護具に関しては、当サイトの「化学物質、粉じん等の保護具」を参照して頂きたい。

(1)正しい。令和5年5月 25 日基発 0525 第3号「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」の別表5によれば、「放射性物質がこぼれたとき等による汚染のおそれがある区域内の作業」について、「オイルミストが混在する」場合は、ろ過材の種類が RL3 の防じんマスが使用できるとされている。

【別表5】

粉じん等の種類及び作業内容に応じて選択可能な防じんマスク及び防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具

粉じん等の種類及び作業内容 オイルミストの有無 防じんマスク 防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具
種類 呼吸用インタフェースの種類 ろ過材の種類 種類 呼吸用インタフェースの種類 漏れ率の区分 ろ過材の種類
(略) (略) (略) (略) (略) (略) (略) (略) (略)

〇 電離則第38条

  放射性物質がこぼれたとき等による汚染のおそれがある区域内の作業又は緊急作業において使用する防じんマスク及び防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具

混在しない 取替え式 全面形面体 RS3、RL3 面体形 全面形面体 S級 PS3、PL3
半面形面体 RS3、RL3 半面形面体 S級 PS3、PL3
ルーズフィット形 フード S級 PS3、PL3
フェイスシールド S級 PS3、PL3
混在する 取替え式 全面形面体 RL3 面体形 全面形面体 S級 PL3
半面形面体 RL3 半面形面体 S級 PL3
ルーズフィット形 フード S級 PL3
フェイスシールド S級 PL3
(略) (略) (略) (略) (略) (略) (略) (略) (略)
※ 厚生労働省「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月 25 日基発 0525 第3号)より

(2)誤り。有機ガス用防毒マスクの吸収缶は、メタノール、二硫化炭素については、除毒能力試験の試験用ガスに比べて破過時間が著しく短い。

【防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について】

第3 防毒マスク及び G-PAPR の選択及び使用に当たっての留意事項

1 防毒マスク及びG-PAPRの選択及び使用

(5) 防毒マスク及びG-PAPRの吸収缶等の選択に当たっては、次に掲げる事項に留意すること。

ア~オ (略)

 メタノール、ジクロロメタン、二硫化炭素、アセトン等に対する破過時間は、防毒マスクの規格第7条及び改正規格第7条に規定される除毒能力試験の試験用ガスによる破過時間と比べて著しく短くなるので注意すること。この場合、使用時間の管理を徹底するか、対象物質に適した専用吸収缶について製造者に問い合わせること。

※ 厚生労働省「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月 25 日基発 0525 第3号)より

(3)正しい。防毒マスクの規格第2条第1項の表により、アンモニア用の直結式防毒マスクは、アンモニアの濃度が 1.5 %以下の大気中で使用するものである。

【防毒マスクの規格】

(防毒マスク等の種類)

第2条 防毒マスクは、次の表の下欄に掲げる形状及び使用の範囲により、それぞれ同表の上欄に掲げる種類に区分するものとする。

種類 形状及び使用の範囲
隔離式防毒マスク 吸収缶、連結管、吸気弁、面体、排気弁及びしめひもからなり、かつ、吸収缶によってガス又は蒸気をろ過した清浄空気を連結管を通して吸気弁から吸入し、呼気は排気弁から外気中に排出するものであって、ガス又は蒸気の濃度が2パーセント(アンモニアにあっては、3パーセント)以下の大気中で使用するもの
直結式防毒マスク 吸収缶、吸気弁、面体、排気弁及びしめひもからなり、かつ、吸収缶によってガス又は蒸気をろ過した清浄空気を吸気弁から吸入し、呼気は排気弁から外気中に排出するものであって、ガス又は蒸気の濃度が1パーセント(アンモニアにあっては、1.5パーセント)以下の大気中で使用するもの
直結式小型防毒マスク 吸収缶、吸気弁、面体、排気弁及びしめひもからなり、かつ、吸収缶によってガス又は蒸気をろ過した清浄空気を吸気弁から吸入し、呼気は排気弁から外気中に排出するものであって、ガス又は蒸気の濃度が0.1パーセント以下の大気中で使用する非緊急用のもの

2及び3 (略)

※ 厚生労働省「防毒マスクの規格」(平成2年9月26日労働省告示第68号)

(4)正しい。令和5年5月25日基発0525第3号「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」第3の2の(1)のウによれば、「着用者の感覚では、有毒ガス等の危険性を感知できないおそれがあるので、吸収缶の破過を知るために、有毒ガス等の臭いに頼るのは、適切ではない」とされている。

【防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について】

第3 防毒マスク及び G-PAPR の選択及び使用に当たっての留意事項

2 防毒マスク及び G-PAPR の吸収缶

(1) 防毒マスク又はG-PAPRの吸収缶の使用時間については、次の事項に留意すること。

ア及びイ (略)

 着用者の感覚では、有毒ガス等の危険性を感知できないおそれがあるので、吸収缶の破過を知るために、有毒ガス等の臭いに頼るのは、適切ではないこと。

エ及びオ (略)

※ 厚生労働省「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月 25 日基発 0525 第3号)より

(5)正しい。防毒マスクの規格第8条第5項の表により、ハロゲンガス用防毒マスクの吸収缶の色は灰色及び黒色で、二層に分けている。

【防毒マスクの規格】

(表示等)

第8条 (第1項~第4項 略)

 吸収缶は、次の表の上欄に掲げる種類に応じてそれぞれ同表の下欄に掲げる色により外部の側面が色分けされるとともに、色分け以外の方法によってその種類が表示されたものでなければならない。

種類
ハロゲンガス用防毒マスク用の吸収缶 灰色及び黒色(二層に分けること)
有機ガス用防毒マスク用の吸収缶 黒色
一酸化炭素用防毒マスク用の吸収缶 赤色
アンモニア用防毒マスク用の吸収缶 緑色
亜硫酸ガス用防毒マスク用の吸収缶 黄赤色

備考 防じん機能を有する防毒マスクにあっては、吸収缶のろ過材がある部分に白線を入れる。

※ 厚生労働省「防毒マスクの規格」(平成2年9月26日労働省告示第68号)