労働衛生コンサルタント試験 2024年 労働衛生一般 問20

局所排気装置等




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

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2024年度(令和06年度) 問20 難易度 局所排気装置に関するごく基本的な知識問題。過去問も多く正答できなければならない問題である。
局所排気装置等  2 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問20 局所排気装置に関する次のイ~ニの記述について、適切でないものの組合せは、(1)~(5)のうちどれか。

イ 外付け式フードでは、熱による上昇気流がある場合などを除き、一般に、上方吸引型より下方吸引型の方が有効である。

ロ 固い式フードの制御風速は、フード開口面における最小風速である。

ハ 囲い式フードのうちのドラフトチェンパー型、カバー型及び建築ブース型では、建築ブース型が最も排気効果が高い。

ニ 抑制濃度とは、局所排気装置を稼働させた状態で、単位作業場所において、作業が行われる時間のうち、空気中の有害物の濃度が最も高くなると思われる位置及び時間において行われた測定によって得られた濃度である。

(1)イ  ロ

(2)イ  ニ

(3)ロ  ハ

(4)ロ  ニ

(5)ハ  ニ

正答(5)

【解説】

問20試験結果

試験解答状況
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イ 適切である。外付け式フードには、「下方吸引型」、「側方吸引型」及び「上方吸引型」の3種類がある。上方吸引型は、熱などによる上昇気流がある場合には効果的である。しかし、有機溶剤などの蒸気や粉じんは空気より重いので、上昇気流がなければ上方へ有害物を吸い上げなければならず、フードの吸い込み量を大きくする必要がある。一般には、上方吸引型より下方吸引型の方が有効である。なお、本肢は、2020 年度 問19 の(1)と全く同じである。

ロ 適切である。囲い型フードでは、有害物の発散源が囲いの内部にあるので、開口部で所定の風速が出ていれば、有害物は囲いの外側には出てこないからである。(有機則第16条第1項の表の備考の第二号イ)

【有機溶剤中毒予防規則】

(局所排気装置の性能)

第16条 局所排気装置は、次の表の上欄に掲げる型式に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。

型式 制御風速(メートル/秒)
囲い式フード 〇・四
外付け式フード 側方吸引型 〇・五
下方吸引型 〇・五
上方吸引型 一・〇

備考

一 この表における制御風速は、局所排気装置のすべてのフードを開放した場合の制御風速をいう。

二 この表における制御風速は、フードの型式に応じて、それぞれ次に掲げる風速をいう。

イ 囲い式フードにあつては、フードの開口面における最小風速

ロ 外付け式フードにあつては、当該フードにより有機溶剤の蒸気を吸引しようとする範囲内における当該フードの開口面から最も離れた作業位置の風速

 (略)

グローブボックス型とドラフトチャンバ型

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ハ 適切ではない。囲い式フードの中では一般論としては開口部が狭いほど効率は良くなる。カバー型は、隙間程度の開口部しかない。これに対し、ドラフトチェンパー型及び建築ブース型では、作業の都合上、囲いの1面が開口している(※)

※ 図は厚生労働省「換気(コントロールバンディング:共通シート1)」より

このため、本肢のドラフトチェンパー型、カバー型及び建築ブース型の中では、カバー型が最も効率が良い(※)

※ なお、実務においては、カバー型や、グローブボックス型には、別な意味でのリスクがあることに留意する必要がある。これらは効率が良いため、単位時間当たりの排気量は少なくなる。このため、フードの内部の濃度が、かなり高くなることがある。

このため、有害物を扱う作業者や研究者が、作業の必要性のために不用意に何度もカバーを開け閉めして、高濃度で繰り返してばく露することがあるのだ。

確かに、カバー型や、グローブボックス型は、ドラフトチェンパー型や建築ブース型に比べれば、より安全ではある。しかし、作業の特性を考えずに導入すると、教科書通りにはいかず、かえってリスクが高まることもあることに留意しなければならない。

【局所排気(囲い式フード)の種類】

型式 概要 適用例
カバー型 発散源がフードにほぼ完全に囲い込まれていて、隙間程度の開口部しかないもの 粉砕、混合、ふるい分け、撹拌、コンベア、乾燥、仕込み
グローブボックス型 アイソトープの取扱い、毒ガスの取扱い
ドラフトチャンバ型 発散源はフードに囲い込まれているが、作業の都合上、囲いの1面が開口しているもの 袋詰め、分析、調合、研磨
建築ブース型 溶接、粉砕、混合、撹拌、極版加工、切断、吹き付け塗装、酸洗い
※ 厚生労働省「換気(コントロールバンディング:共通シート1)」より

ニ 適切ではない。局所排気装置の性能の基準として、鉛則、特化則の一部の物質及び石綿則に、抑制濃度による方式が定められている。抑制濃度とは、作業者の呼吸域の濃度を安全な範囲にとどめるために設けられた値であり、局所排気装置等には、性能要件の一つとしてこの値を超えない性能が求められている。本肢は、B測定のことであろう。