労働衛生コンサルタント試験 2024年 労働衛生一般 問18

有機溶剤による健康障害防止(全般)




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2024年度(令和06年度) 問18 難易度 有機溶剤による基本的な知識問題。やや詳細な内容の肢もあるが、正答できなければならない。
有機溶剤による障害防止  4 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問18 有機溶剤に関する次のイ~ニの記述について、適切なもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

イ シンナーは、一般に、異なる有機溶剤を混合したもので、成分の有機溶剤の種類や混合比率には様々なものがある。

ロ 有機溶剤の使用に当たっては、その蒸気を吸入すること以外に皮膚からの吸収にも注意する必要がある。

ハ 有機溶剤を含む排ガスの処理のための空気清浄装置には、主として、吸着式排ガス処理装置又は燃焼式排ガス処理装置が用いられる。

ニ 有機溶剤用の直結式防毒マスクは、有機溶剤の濃度が2%以下の大気中使用するものである。

(1)イ  ロ  ハ

(2)イ  ロ  ニ

(3)イ  ハ

(4)ロ  ニ

(5)ハ  ニ

正答(1)

【解説】

問18試験結果

試験解答状況
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本問の解答は(1)と(2)に分かれた。すなわち、ほとんどの受験者は、イとロは正しいと分かったのであり、またこれは分からなければならない内容である。

また、ニについては、保護具に関する基本的な内容であり(※)、分からなければならない。

※ 第1種衛生管理者試験では、2025年4月公表問題の問 19 等でそのままの形ではないが問われたことがある。

イ 正しい。シンナーは、塗料などを希釈する有機溶剤の総称である。発散しやすく短時間で乾くラッカーシンナーや、塗料の希釈などのためのシンナーで比較的乾きにくい塗料用シンナーなどが販売されている。

ラッカーシンナーの成分は、製品によって(公表されていないものもあるが)様ざまである(※)

※ トルエン、酢酸メチル、メタノール、イソブタノールなどが主成分で、その他には酢酸イソブチル、酢酸ブチル、キシレン、ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが含まれるものもある。

また、塗料用シンナーは、蒸気圧が低いミネラルスピリットを主成分としている(※)

※ そのためラッカーシンナーに比べて乾きにくいのである。

ロ 正しい。有機溶剤の多くは、皮膚等障害化学物質等として指定されている。使用に当たっては、その蒸気を吸入すること以外に皮膚からの吸収にも注意する必要がある。

ハ 正しいとしてよい。有機溶剤を含む排ガスの処理のための空気清浄装置には、一般に、①吸着式排ガス処理装置(活性炭による吸着による溶剤回収)、②燃焼式排ガス処理装置(直接又は触媒による燃焼)、③水による吸収などが用いられる(※)

※ 立野譲二「有害ガスの処理技術」(環境技術 Vol.8 No.7 1979年)、西田耕之助「有機溶剤排ガスの処理」(環境技術 Vol.10 No.6 1981年)など

ニ 誤り。平成2年9月 26 日労働省告示第 68 号「防毒マスクの規格」によれば、有機溶剤用に限らず、直結式防毒マスクは、ガス又は蒸気の濃度が1パーセント(アンモニアにあっては、1.5 パーセント)以下の大気中で使用するものである。

なお、保護具についての詳細は、当サイトの「化学物質、粉じん等の保護具」を参照していただきたい。

【防毒マスクの規格】

(防毒マスク等の種類)

第2条 防毒マスクは、次の表の下欄に掲げる形状及び使用の範囲により、それぞれ同表の上欄に掲げる種類に区分するものとする。

種類 形状及び使用の範囲
隔離式防毒マスク 吸収缶、連結管、吸気弁、面体、排気弁及びしめひもからなり、かつ、吸収缶によってガス又は蒸気をろ過した清浄空気を連結管を通して吸気弁から吸入し、呼気は排気弁から外気中に排出するものであって、ガス又は蒸気の濃度が2パーセント(アンモニアにあっては、3パーセント)以下の大気中で使用するもの
直結式防毒マスク 吸収缶、吸気弁、面体、排気弁及びしめひもからなり、かつ、吸収缶によってガス又は蒸気をろ過した清浄空気を吸気弁から吸入し、呼気は排気弁から外気中に排出するものであって、ガス又は蒸気の濃度が1パーセント(アンモニアにあっては、1.5パーセント)以下の大気中で使用するもの
直結式小型防毒マスク 吸収缶、吸気弁、面体、排気弁及びしめひもからなり、かつ、吸収缶によってガス又は蒸気をろ過した清浄空気を吸気弁から吸入し、呼気は排気弁から外気中に排出するものであって、ガス又は蒸気の濃度が0.1パーセント以下の大気中で使用する非緊急用のもの

2及び3 (略)

※ 厚生労働省「防毒マスクの規格」(平成2年9月26日労働省告示第68号)(下線強調引用者)