問16 自律神経活動に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)瞳孔は交感神経活動により散大し、副交感神経活動により縮小する。
(2)心拍数は交感神経活動により増加し、副交感神経活動により減少する。
(3)気管支平滑筋は交感神経活動により収縮し、副交感神経活動により弛緩する。
(4)消化運動は交感神経活動により抑制され、副交感神経活動により促進される。
(5)膀胱排尿筋は交感神経活動により弛緩し、副交感神経活動により収縮する。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2024年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
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2024年度(令和06年度) | 問16 | 難易度 | メンタルヘルス指針に関する知識問題だが、内容的には常識問題となっている。確実に正答しておきたい。 |
---|---|---|---|
自律神経活動 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問16 自律神経活動に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)瞳孔は交感神経活動により散大し、副交感神経活動により縮小する。
(2)心拍数は交感神経活動により増加し、副交感神経活動により減少する。
(3)気管支平滑筋は交感神経活動により収縮し、副交感神経活動により弛緩する。
(4)消化運動は交感神経活動により抑制され、副交感神経活動により促進される。
(5)膀胱排尿筋は交感神経活動により弛緩し、副交感神経活動により収縮する。
正答(3)
【解説】
本問は、本サイトが解説を公開している 2012 年度以降の過去問では、2015 年度問 12 及び 2012 年度問 13 の2度にわたって出題されている。
過去問の解説にも記したことだが、交感神経とは緊急事態に対応できるよう身体の体制を整えるためのものであり、副交感神経はその逆だと思えばよい。例えば、草食動物が肉食動物に襲われたような場合に働くのが交感神経である。
交感神経が働いた場合のことは、草食動物が敵に襲われたときのことを考えてみれば分かりやすい。副交感神経は、この逆だと考えればよい。
本問は、受験者の解答が(3)と(5)に分かれた。排尿するときは、排尿筋は収縮して、内尿道括約筋が弛緩するのだが、(5)と答えた受験者は、これを逆だと考えたのかもしれない(※)。
※ 医師である受験者は、40 名中 30 名が(3)と答え、8名が(5)と答えている。一方、医師以外の受験者は、68 名中 21 名が(3)と答え、31名が(5)と答えている。
医師は、排尿の仕組みを理解しているので、あまり迷わなかった可能性がある。
(1)正しい。瞳孔は交感神経活動により散大し、副交感神経活動により縮小する(下記 ①)。
(2)正しい。心拍数は交感神経活動により増加し、副交感神経活動により減少する(下記 ②)。
(3)誤り。気管支平滑筋は交感神経活動により収縮し、副交感神経活動により弛緩する(下記 ⑨)。
(4)正しい。消化運動は交感神経活動により抑制され、副交感神経活動により促進される(下記 ⑩)。
(5)正しい。膀胱排尿筋は交感神経活動により弛緩し、副交感神経活動により収縮する(下記 ⑥)。
【交感神経が働いた場合】
① 瞳孔は拡大して敵を見逃さないようにする。
② 心臓は鼓動を速めて逃走のためのエネルギーを筋肉に送り込む。
③ ただし、肉食動物に咬まれた傷から出血しないように血管は収縮し、同じ理由で立毛筋も収縮する。
④ 逃走又は闘争のためのエネルギーを発生させるため、副腎はアドレナリンを分泌し、肝臓はグリコーゲンを分解する。
⑤ 胃腸は分泌を抑制しかつ動きも減る。余計なエネルギーを使わないためである。
⑥ 膀胱の排尿筋は弛緩し、内尿道括約筋が収縮して排尿を抑制する。排尿をしている場合ではない。
⑦ 直腸の筋肉は弛緩して、排便を抑制する。排便をしている場合ではない。
⑧ 体温を冷やすために発汗量は増加する。逃走のために体温が上がるからである(※)。
⑨ 気管支の平滑筋は緩んで気管の内径を広げる。逃走のエネルギーを確保するため、呼吸量を増やす必要があるからである。
⑩ 消化運動は抑制される。消化をしている場合ではあるまい。余計なことにエネルギーを使ってはならない。
※ 地球上のほ乳類の多くは体毛におおわれている。このため、肉食獣は獲物となる動物を長時間にわたって追いかけることができない。そんなことをすれば熱中症の危険があるからである。
人類は、アウストラロピテクス・ガルヒからホモ・エレクトス(北京原人やジャワ原人など。180万年前から5万年前まで、アフリカ大陸からユーラシア大陸に進出して広範囲に生息)に進化して体毛のほとんどを失い、このために大型獣を捕らえることが可能になったとされる。