問13 厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」に関する次のイ~ニの記述について、適切なもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、医師等とは健康診断の結果についての意見の聴取を行う医師又は歯科医師をいうものとする。
イ 事業者は、医師等に対し、意見の聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を提供する必要がある。
ロ 事業者は、医師等に対し、健康診断個人票の医師等の意見欄に、就業上の措置に関する意見を記入することを求める。
ハ 事業者は、就業区分に応じた就業上の措置を決定する場合には、あらかじめ当該労働者の意見を聴き、その労働者の了解が得られるよう努める。
ニ 事業者は、医師等の意見に基づき、労働者に就業制限を講じる場合には、衛生委員会で当該労働者の健康診断の結果について調査審議し、具体的な容を決定する。
(1)イ ロ
(2)イ ロ ハ
(3)イ ハ ニ
(4)ロ ハ ニ
(5)ロ ニ

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2024年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。
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2024年度(令和06年度) | 問13 | 難易度 | 事後措置指針に関する基本的な知識問題。このレベルの問題は確実に正答しておきたい。 |
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健康診断の事後措置指針 | 2 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問13 厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」に関する次のイ~ニの記述について、適切なもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、医師等とは健康診断の結果についての意見の聴取を行う医師又は歯科医師をいうものとする。
イ 事業者は、医師等に対し、意見の聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を提供する必要がある。
ロ 事業者は、医師等に対し、健康診断個人票の医師等の意見欄に、就業上の措置に関する意見を記入することを求める。
ハ 事業者は、就業区分に応じた就業上の措置を決定する場合には、あらかじめ当該労働者の意見を聴き、その労働者の了解が得られるよう努める。
ニ 事業者は、医師等の意見に基づき、労働者に就業制限を講じる場合には、衛生委員会で当該労働者の健康診断の結果について調査審議し、具体的な内容を決定する。
(1)イ ロ
(2)イ ロ ハ
(3)イ ハ ニ
(4)ロ ハ ニ
(5)ロ ニ
正答(2)
【解説】
本問は、問題文本分にもあるように「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(最終改訂:平成 29 年4月 14 日 健康診断結果措置指針公示第9号)」(以下「指針」という。)に関する問題である。
なお、指針に関する問題ではあるが、ハを除けば法令に関する事項についての内容となっており、指針の内容を知らなくても、実質的に法令の知識があれば解くことができる。
イ 適切である。指針の2の(3)のロにより、事業者は、医師等に対し、意見の聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を提供する必要がある。
【健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針】
2 就業上の措置の決定・実施の手順と留意事項
(3)健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取
事業者は、労働安全衛生法第66条の4の規定に基づき、健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)について、医師等の意見を聴かなければならない。
イ (略)
ロ 医師等に対する情報の提供
(前略)
なお、労働安全衛生規則(昭和 47 年労働省令第 32 号)第51条の2第3項等の規定に基づき、事業者は、医師等から、意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供する必要がある。
(後略)
ハ及びニ (略)
※ 厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(最終改訂:平成 29 年4月 14 日 健康診断結果措置指針公示第9号)より
【労働安全衛生規則】
(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第51条の2 第1項及び第2項(略)
3 事業者は、医師又は歯科医師から、前2項の意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供しなければならない。
ロ 適切である。指針の2の(3)のニにより、事業者は、医師等に対し、健康診断個人票の医師等の意見欄に、就業上の措置に関する意見を記入することを求めることとされている。
【健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針】
2 就業上の措置の決定・実施の手順と留意事項
(3)健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取
事業者は、労働安全衛生法第66条の4の規定に基づき、健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)について、医師等の意見を聴かなければならない。
イ~ハ (略)
ニ 事業者は、医師等に対し、労働安全衛生規則等に基づく健康診断の個人票の様式中医師等の意見欄に、就業上の措置に関する意見を記入することを求めることとする。
※ 厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(最終改訂:平成 29 年4月 14 日 健康診断結果措置指針公示第9号)より
【労働安全衛生法】
(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第66条の4 事業者は、第66条第1項から第4項まで若しくは第5項ただし書又は第66条の2の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。
【労働安全衛生規則】
(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第51条の2 第43条等の健康診断の結果に基づく法第66条の4の規定による医師又は歯科医師からの意見聴取は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 (略)
二 聴取した医師又は歯科医師の意見を健康診断個人票に記載すること。
2及び3 (略)
ハ 適切である。指針の2の(4)のイにより、事業者は、就業区分に応じた就業上の措置を決定する場合には、あらかじめ当該労働者の意見を聴き、その労働者の了解が得られるよう努めるとされている。
すなわち、了解を得なければならないとはされていないのである。従って、その措置をとることが、労働者の安全を配慮する上で絶対に必要であれば、予め策定された就業規則等の内容に遵って、業務命令(配転命令)をかけることも検討するべきであろう。
【健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針】
2 就業上の措置の決定・実施の手順と留意事項
(4)就業上の措置の決定等
イ 労働者からの意見の聴取等
事業者は、(3)の医師等の意見に基づいて、就業区分に応じた就業上の措置を決定する場合には、あらかじめ当該労働者の意見を聴き、十分な話合いを通じてその労働者の了解が得られるよう努めることが適当である。
(後略)
ロ及びハ (略)
※ 厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(最終改訂:平成 29 年4月 14 日 健康診断結果措置指針公示第9号)より
ニ 適切ではない。個々の労働者の健康診断の結果について衛生委員会で調査審議して具体的な内容を決定するとまではされていない。
そもそも衛生委員会は、事業場における衛生管理について調査審議を行う場であって、個々の労働者への措置を議論するべき場所ではないことは覚えておく必要がある。
個々の労働者の事後措置の具体的な内容については、産業医や主治医(さらには弁護士や社労士)などの専門家の意見を聴いて、事業者(と当事者である本人)がその責任において決定するべきことである。
委員会の委員は、当事者から代理権を受けているわけではないのだから、個別の処遇について決定する権限はないのである。しかも医学的な専門知識のない委員が多数を占める委員会で、個々の労働者の事後措置を適切に決めることはできないと考えるべきである。
【健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針】
1 趣旨
(前略)
このような状況の中で、労働者が職業生活の全期間を通して健康で働くことができるようにするためには、事業者が労働者の健康状態を的確に把握し、その結果に基づき、医学的知見を踏まえて、労働者の健康管理を適切に講ずることが不可欠である。そのためには、事業者は、健康診断(労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の2の規定に基づく深夜業に従事する労働者が自ら受けた健康診断(以下「自発的健診」という。)及び労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第26条第2項第1号の規定に基づく二次健康診断(以下「二次健康診断」という。)を含む。)の結果、異常の所見があると診断された労働者について、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について聴取した医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)の意見を十分勘案し、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師等の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会(以下「衛生委員会等」という。)又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)第7条第1項に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への報告その他の適切な措置を講ずる必要がある(以下、事業者が講ずる必要があるこれらの措置を「就業上の措置」という。)。
(後略)
2 就業上の措置の決定・実施の手順と留意事項
(4)就業上の措置の決定等
イ (略)
ロ 衛生委員会等への医師等の意見の報告等
衛生委員会等において労働者の健康障害の防止対策及び健康の保持増進対策について調査審議を行い、又は労働時間等設定改善委員会において労働者の健康に配慮した労働時間等の設定の改善について調査審議を行うに当たっては、労働者の健康の状況を把握した上で調査審議を行うことが、より適切な措置の決定等に有効であると考えられることから、事業者は、衛生委員会等の設置義務のある事業場又は労働時間等設定改善委員会を設置している事業場においては、必要に応じ、健康診断の結果に係る医師等の意見をこれらの委員会に報告することが適当である。
なお、この報告に当たっては、労働者のプライバシーに配慮し、労働者個人が特定されないよう医師等の意見を適宜集約し、又は加工する等の措置を講ずる必要がある。
また、事業者は、就業上の措置のうち、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、作業方法の改善その他の適切な措置を決定する場合には、衛生委員会等の設置義務のある事業場においては、必要に応じ、衛生委員会等を開催して調査審議することが適当である。
ハ (略)
※ 厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(最終改訂:平成 29 年4月 14 日 健康診断結果措置指針公示第9号)より
【労働安全衛生法】
(衛生委員会)
第18条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。
一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項
2 (略)
【労働安全衛生規則】
(衛生委員会の付議事項)
第22条 法第18条第1項第四号の労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項には、次の事項が含まれるものとする。
一 衛生に関する規程の作成に関すること。
二 法第28条の2第1項又は第57条の3第1項及び第2項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。
三 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
四 衛生教育の実施計画の作成に関すること。
五 法第57条の4第1項及び第57条の5第1項の規定により行われる有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
六 法第65条第1項又は第5項の規定により行われる作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。
七 定期に行われる健康診断、法第66条第4項の規定による指示を受けて行われる臨時の健康診断、法第66条の2の自ら受けた健康診断及び法に基づく他の省令の規定に基づいて行われる医師の診断、診察又は処置の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
八 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
九 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
十 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
十一 第577条の2第1項、第2項及び第8項の規定により講ずる措置に関すること並びに同条第3項及び第4項の医師又は歯科医師による健康診断の実施に関すること。
十二 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。