問11 職場における熱中症予防に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)糖尿病で血糖値が高い場合は、発症のリスクが高い。
(2)日射がある場合、WBGT 値を求める計算において、気温(乾球温度)は算出に用いない。
(3)暑熱順化は、暑熱順化していない状態から7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くすることで行う。
(4)身体作業強度(代謝率レベル)が高くなるほど、適用すべき WBGT 基準値は低くなる。
(5)休憩中の体温が作業開始前の体温に戻らない場合は、熱へのばく露を止める。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2024年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
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2024年度(令和06年度) | 問11 | 難易度 | 熱中症に関するごく基本的な内容の問題。同種の過去問も多く、正答できなければならない問題。 |
---|---|---|---|
職場の熱中症対策 | 1 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問11 職場における熱中症予防に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)糖尿病で血糖値が高い場合は、発症のリスクが高い。
(2)日射がある場合、WBGT 値を求める計算において、気温(乾球温度)は算出に用いない。
(3)暑熱順化は、暑熱順化していない状態から7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くすることで行う。
(4)身体作業強度(代謝率レベル)が高くなるほど、適用すべき WBGT 基準値は低くなる。
(5)休憩中の体温が作業開始前の体温に戻らない場合は、熱へのばく露を止める。
正答(2)
【解説】
職場における熱中症の予防については、厚生労働省より「職場における熱中症予防基本対策要綱(令和3年4月20日基発0420第3号)」(以下、本問の解説において「要綱」という。)が定められている。
また、要綱には別添として「解説」(以下「解説」という。)が付されている。本問に正答するためには、解説にも目を通しておく必要がある。
(1)正しい。解説に糖尿病については、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあるとされている。
【糖尿病と熱中症のリスク】
(解説)
4 健康管理について
(1)糖尿病については、血糖値が高い場合に尿に糖が漏れ出すことにより尿で失う水分が増加し脱水状態を生じやすくなること、高血圧症及び心疾患については、水分及び塩分を尿中に出す作用のある薬を内服する場合に脱水状態を生じやすくなること、腎不全については、塩分摂取を制限される場合に塩分不足になりやすいこと、精神・神経関係の疾患については、自律神経に影響のある薬(パーキンソン病治療薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬等)を内服する場合に発汗及び体温調整が阻害されやすくなること、広範囲の皮膚疾患については、発汗が不十分となる場合があること等から、これらの疾患等については熱中症の発症に影響を与えるおそれがあること。
(2)及び(3)(略)
※ 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱(令和3年4月20日基発0420第3号)」の「解説」より
(2)誤り。日射がない場合、WBGT 値を求める計算において、気温(乾球温度)は算出に用いない。
【WBGT の算出方法】
第1 WBGT 値(暑さ指数)の活用
1 WBGT 値等
WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度(単位:℃))の値は、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数(式 ① 又は ① により算出)であり、作業場所に、WBGT 指数計を設置する等により、WBGT 値を求めることが望ましいこと。特に、熱中症予防情報サイト等により、事前に WBGT 値が表1-1の WBGT 基準値(以下「WBGT 基準値」という。)を超えることが予想される場合は、WBGT 値を作業中に測定するよう努めること。
ア 日射がない場合
WBGT値 = 0.7 × 自然湿球温度 + 0.3 × 黒球温度 式①
イ 日射がある場合
WBGT値 = 0.7 × 自然湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 気温(乾球温度) 式②
(以下略)
※ 職場における熱中症予防基本対策要綱」(令和3年4月20日基発0420第3号)より
(3)正しい。「解説」の3に、あくまでも例としてであるが(※)、暑熱順化は、暑熱順化していない状態から7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くすることで行う方法が挙げられている。
※ 本肢は、例としてではなく、この方法以外はないという趣旨のようにも読める。その意味では誤りの肢と評価できないこともない。しかし、(2)が明らかに誤っているのでこちらは正しいとした。ある意味で出題ミスとさえいえる問題である。
【糖尿病と熱中症のリスク】
(解説)
3 作業管理について
(1)暑熱順化の例としては、次に掲げる事項等があること。
ア 作業を行う者が暑熱順化していない状態から7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くすること。
イ 熱へのばく露が中断すると4日後には暑熱順化の顕著な喪失が始まり3~4週間後には完全に失われること。
(2)及び(3)(略)
※ 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱(令和3年4月20日基発0420第3号)」の「解説」より
(4)正しい。要綱の「表1-1 身体作業強度等に応じた WBGT 基準値」に示されているが、身体作業強度(代謝率レベル)が高くなるほど、適用すべき WBGT 基準値は低くなる。当然のことであろう。
(5)正しい。解説の4の(3)に「休憩中等の体温が作業開始前の体温に戻らない場合」は、「熱へのばく露を止めることが必要とされている兆候である」とされている。
【糖尿病と熱中症のリスク】
(解説)
4 健康管理について
(1)及び(2)(略)
(3)心機能が正常な労働者については1分間の心拍数が数分間継続して 180 から年齢を引いた値を超える場合、作業強度のピークの1分後の心拍数が 120 を超える場合、休憩中等の体温が作業開始前の体温に戻らない場合、作業開始前より 1.5 %を超えて体重が減少している場合、急激で激しい疲労感、悪心、めまい、意識喪失等の症状が発現した場合等は、熱へのばく露を止めることが必要とされている兆候であること。
※ 厚生労働省「職場における熱中症予防基本対策要綱(令和3年4月20日基発0420第3号)」の「解説」より