労働衛生コンサルタント試験 2023年 労働衛生関係法令 問14

石綿使用建築物等解体等作業




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 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2023年度(令和5年度) 問14 難易度 石綿則は、改正に次ぐ改正で非情に複雑。条文を覚えていなければ、安全性の観点から解答しよう。
石綿使用建築物等解体

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問14 石綿等が使用されている解体等対象建築物等の解体等の作業(以下「石綿使用建築物等解体等作業」という。)を行うときに事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)解体等対象建築物の改修工事において、当該工事の請負代金の額が100万円未満であったため、事前調査(当該解体等対象建築物に係る石綿等の使用の有無の調査をいう。)の結果を所轄労働基準監督署長に報告しなかった。

(2)解体等対象建築物の解体工事において、当該解体等対象建築物に吹き付けられている石綿等(石綿等が使用されている仕上げ用塗り材を除く。)の除去の作業を行う仕事について、当該工事に係る部分の床面積の合計が80平方メートル未満であったため、当該仕事に係る計画を所轄労働基準監督署長に届け出なかった。

(3)成形された材料であって石綿等が使用されているもの(石綿含有保温材を除く。)を建築物から除去する作業において、切断、破砕等を行わずに除去することが技術上困難であったため、当該作業を行う作業場所を、当該作業以外の作業を行う作業場所からビニールシート等で隔離し、当該作業中は、当該材料を常時湿潤な状態に保つ措置を講じた上で、切断、破砕等による方法により、当該作業を実施した。

(4)石綿等を取り扱う作業場の見やすい箇所に、石綿作業主任者の氏名及びその者に行わせる事項を掲示したが、当該作業場で作業を行う者の氏名は掲示しなかった。

(5)法令に基づき定めた作業計画に従って石綿使用建築物等解体作業を行わせたことについて、写真その他実施状況を確認できる方法により記録を作成するとともに、当該石綿使用建築物等解体等作業に従事した労働者の氏名及び当該石綿使用建築物等解体作業に従事した期間等所定の事項を記録し、これらを等作業を当該石綿使用建築物等解体作業を終了した日から3年間保存した後、廃棄した。

正答(2)

【解説】

問14試験結果

試験解答状況
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(1)違反とはならない。本肢の「事前調査(当該解体等対象建築物に係る石綿等の使用の有無の調査をいう。)の結果」とは、石綿則第3条第7項第八号を指すものと思われる。これは、石綿則第4条の2第1項により所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

しかし、石綿則第4条の2第1項(第二号)は、建築物の改修工事について、カッコ書きで工事の請負代金の額が100万円未満のものを除いている。なお、本肢の工事は、あくまでも建築物の改修工事であって、解体工事ではないことに留意すること。

【石綿障害予防規則】

(事前調査及び分析調査)

第3条 事業者は、建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業(以下「解体等の作業」という。)を行うときは、石綿による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶(それぞれ解体等の作業に係る部分に限る。以下「解体等対象建築物等」という。)について、石綿等の使用の有無を調査しなければならない。

2~6 (略)

 事業者は、事前調査又は分析調査(以下「事前調査等」という。)を行ったときは、当該事前調査等の結果に基づき、次に掲げる事項(第3項第三号から第八号までの場合においては、第一号から第四号までに掲げる事項に限る。)の記録を作成し、これを事前調査を終了した日(分析調査を行った場合にあっては、解体等の作業に係る全ての事前調査を終了した日又は分析調査を終了した日のうちいずれか遅い日)(第三号及び次項第一号において「調査終了日」という。)から三年間保存するものとする。

一~四 (略)

 事前調査を行った建築物、工作物又は船舶の構造

 事前調査を行った部分(分析調査を行った場合にあっては、分析のための試料を採取した場所を含む。)

 (略)

 第六号の部分における材料ごとの石綿等の使用の有無(第五項ただし書の規定により石綿等が使用されているものとみなした場合は、その旨を含む。)及び石綿等が使用されていないと判断した材料にあっては、その判断の根拠

九及び十 (略)

8及び9 (略)

(事前調査の結果等の報告)

第4条の2 事業者は、次のいずれかの工事を行おうとするときは、あらかじめ、電子情報処理組織(厚生労働省の使用に係る電子計算機と、この項の規定による報告を行う者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用して、次項に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

 建築物の解体工事(当該工事に係る部分の床面積の合計が80平方メートル以上であるものに限る。)

 建築物の改修工事(当該工事の請負代金の額が100万円以上であるものに限る。)

 工作物(石綿等が使用されているおそれが高いものとして厚生労働大臣が定めるものに限る。)の解体工事又は改修工事(当該工事の請負代金の額が100万円以上であるものに限る。)

 船舶(総トン数20トン以上の船舶に限る。)の解体工事又は改修工事

 前項の規定により報告しなければならない事項は、次に掲げるもの(第3条第3項第三号から第八号までの場合においては、第一号から第四号までに掲げるものに限る。)とする。

一~四 (略)

 第3条第7項第五号、第八号及び第九号に掲げる事項の概要

六及び七 (略)

3~5 (略)

(2)違反となる。解体等対象建築物等に吹き付けられている石綿等(石綿等が使用されている仕上げ用塗り材を除く。)の除去、封じ込め又は囲い込みの作業の届出について、石綿則第5条第1項(第一号)には、本肢のような除外規定はない。なお、石綿則第4条の2第1項(第一号)の事前調査の報告と混同しないこと。

【石綿障害予防規則】

(作業の届出)

第5条 事業者は、次に掲げる作業を行うときは、あらかじめ、様式第一号の二による届書に当該作業に係る解体等対象建築物等の概要を示す図面を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 解体等対象建築物等に吹き付けられている石綿等(石綿等が使用されている仕上げ用塗り材(第六条の三において「石綿含有仕上げ塗材」という。)を除く。)の除去、封じ込め又は囲い込みの作業

 (略)

 (略)

(3)違反とはならない。石綿則第6条の2第1項但書及び第3項に合致している(※)。なお、本条にいう切断等とは「切断、破砕、穿せん孔、研磨等」をいう。

※ 石綿則第6条の2第3項の対象は、石綿含有成形品のうち特に石綿等の粉じんが発散しやすいものとして厚生労働大臣が定めるものであるが、本肢は石綿含有成形品について同項の規定に従って切断等を行っているので、違反とはならない。なお、ここにいう厚生労働大臣の定めとは「石綿障害予防規則第六条の二第三項の規定に基づき厚生労働大臣が定める物」(令和2年7月 27 日厚生労働省告示第 279 号)をいう。

【石綿障害予防規則】

(作業の届出)

第6条の2 事業者は、成形された材料であって石綿等が使用されているもの(石綿含有保温材等を除く。第三項において「石綿含有成形品」という。)を建築物、工作物又は船舶から除去する作業においては、切断等以外の方法により当該作業を実施しなければならない。ただし、切断等以外の方法により当該作業を実施することが技術上困難なときは、この限りでない。

 (略)

 事業者は、第一項ただし書の場合において、石綿含有成形品のうち特に石綿等の粉じんが発散しやすいものとして厚生労働大臣が定めるものを切断等の方法により除去する作業を行うときは、次に掲げる措置を講じなければならない。ただし、当該措置(第一号及び第二号に掲げる措置に限る。)と同等以上の効果を有する措置を講じたときは、第一号及び第二号の措置については、この限りでない。

 当該作業を行う作業場所を、当該作業以外の作業を行う作業場所からビニルシート等で隔離すること。

 当該作業中は、当該石綿含有成形品を常時湿潤な状態に保つこと、除じん性能を有する電動工具を使用することその他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置を講ずること。

 当該作業の一部を請負人に請け負わせるときは、当該請負人に対し、前二号に掲げる措置を講ずる必要がある旨を周知させること。

(4)違反とはならない。石綿則第34条及びその他の掲示に関する規定は、作業場で作業を行う者の氏名を掲示することは求めていない。

なお、安衛法令で作業を行う者の氏名を掲示させる規定はないと考えてよい。作業を行う者の氏名を掲示しても安全に寄与するとは思えない。

【石綿障害予防規則】

(事前調査及び分析調査)

第3条 (第1項~第6項 略)

 事業者は、事前調査又は分析調査(以下「事前調査等」という。)を行ったときは、当該事前調査等の結果に基づき、次に掲げる事項(第三項第三号から第八号までの場合においては、第一号から第四号までに掲げる事項に限る。)の記録を作成し、これを事前調査を終了した日(分析調査を行った場合にあっては、解体等の作業に係る全ての事前調査を終了した日又は分析調査を終了した日のうちいずれか遅い日)(第三号及び次項第一号において「調査終了日」という。)から三年間保存するものとする。

一~五 (略)

 事前調査を行った部分(分析調査を行った場合にあっては、分析のための試料を採取した場所を含む。)

 (略)

 第六号の部分における材料ごとの石綿等の使用の有無(第五項ただし書の規定により石綿等が使用されているものとみなした場合は、その旨を含む。)及び石綿等が使用されていないと判断した材料にあっては、その判断の根拠

九及び十 (略)

 事業者は、解体等の作業を行う作業場には、次の事項を、見やすい箇所に掲示するとともに、次条第一項の作業を行う作業場には、前項の規定による記録の写しを備え付けなければならない。

 調査終了日

 前項第六号及び第八号に規定する事項の概要

 (略)

(掲示)

第34条 事業者は、石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する作業場又は石綿分析用試料等を製造する作業場には、次の事項を、見やすい箇所に掲示しなければならない。

 石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する作業場又は石綿分析用試料等を製造する作業場である旨

 石綿により生ずるおそれのある疾病の種類及びその症状

 石綿等の取扱い上の注意事項

 当該作業場においては保護具等を使用しなければならない旨及び使用すべき保護具等

(5)違反とはならない。石綿則第 35 条の2第1項に適合している。

なお、試験に合格した後のコンサルタントの実務においては、事業者に対してこれらの資料を3年で破棄してよいとは言わない方がよい。データは電子データで保存してよいのである。破棄するメリットは何もない。30 年後に民事訴訟を提起されるおそれもある。原則として永年保存とするべきである。

【石綿障害予防規則】

(作業計画による作業の記録)

第35条の2 事業者は、石綿使用建築物等解体等作業を行ったときは、当該石綿使用建築物等解体等作業に係る第4条第1項の作業計画に従って石綿使用建築物等解体等作業を行わせたことについて、写真その他実施状況を確認できる方法により記録を作成するとともに、次の事項を記録し、これらを当該石綿使用建築物等解体等作業を終了した日から3年間保存するものとする。

 当該石綿使用建築物等解体等作業に従事した労働者の氏名及び当該労働者ごとの当該石綿使用建築物等解体等作業に従事した期間

 周辺作業従事者の氏名及び当該周辺作業従事者ごとの周辺作業に従事した期間

 (略)

2023年12月02日執筆