問6 労働安全衛生法令に基づく健康診断のうち、医師による健康診断に関する次の記述について、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)事業者は、健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければならない。
(2)事業者は、健康診断の結果に基づく医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、就業場所の変更等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
(3)事業者は、法令に基づき選任した産業医に、健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関することについて、事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べる権限を与えなければならない。
(4)事業者は、常時使用する労働者に対して1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断について、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、既往歴及び業務歴の調査並びに身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査を省略することができる。
(5)事業者は、重量物の取扱い等重激な業務に常時従事する労働者に対して、当該業務への配置替えの際及び6か月以内ごとに1回、定期に、健康診断を行わなければならない。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2023年度(令和5年度) | 問06 | 難易度 | 基本的な条文問題である。学習時間の長さによって差がつく問題。 |
---|---|---|---|
医師による健康診断 | 1 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問6 労働安全衛生法令に基づく健康診断のうち、医師による健康診断に関する次の記述について、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)事業者は、健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければならない。
(2)事業者は、健康診断の結果に基づく医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、就業場所の変更等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
(3)事業者は、法令に基づき選任した産業医に、健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関することについて、事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べる権限を与えなければならない。
(4)事業者は、常時使用する労働者に対して1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断について、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、既往歴及び業務歴の調査並びに身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査を省略することができる。
(5)事業者は、重量物の取扱い等重激な業務に常時従事する労働者に対して、当該業務への配置替えの際及び6か月以内ごとに1回、定期に、健康診断を行わなければならない。
正答(4)
【解説】
(1)正しい。安衛法第 66 条の4により、事業者は、健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければならない。
条文のままのいわゆる条文問題である。
【労働安全衛生法】
(健康診断)
第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
3 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。
4 都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる。
5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
(自発的健康診断の結果の提出)
第66条の2 午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間における業務(以下「深夜業」という。)に従事する労働者であつて、その深夜業の回数その他の事項が深夜業に従事する労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものは、厚生労働省令で定めるところにより、自ら受けた健康診断(前条第5項ただし書の規定による健康診断を除く。)の結果を証明する書面を事業者に提出することができる。
(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第66条の4 事業者は、第66条第1項から第4項まで若しくは第5項ただし書又は第66条の2の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。
(2)正しい。安衛法第 66 条の5により、事業者は、健康診断の結果に基づく医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、就業場所の変更等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
【労働安全衛生法】
(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第66条の5 事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)第7条に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
2及び3 (略)
(3)正しい。安衛則第 14 条の4第1項により、事業者は、法令に基づき選任した産業医に、健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関することについて、事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べる権限を与えなければならない。
【労働安全衛生法】
(産業医等)
第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
2~6 (略)
【労働安全衛生規則】
(産業医及び産業歯科医の職務等)
第14条 法第13条第1項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。
一 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
二~九 (略)
2~7 (略)
(産業医に対する権限の付与等)
第14条の4 事業者は、産業医に対し、第十四条第一項各号に掲げる事項をなし得る権限を与えなければならない。
2 前項の権限には、第14条第1項各号に掲げる事項に係る次に掲げる事項に関する権限が含まれるものとする。
一 事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べること。
二及び三 (略)
(4)誤り。健康診断の項目の省略について定める安衛則第44条第2項に、「既往歴及び業務歴の調査」は含まれない。そもそも定期健康診断は、たんなる生活習慣病の検査ではないのである。仕事との関連において健康状況を把握することが目的なのだ。「既往歴及び業務歴の調査」を省略してしまったらなんのための健康診断なのかということになるし、省略するメリットもほとんどないだろう。
また、問題文にもあるように、医師の自由な判断で省略できるわけではなく、厚生労働大臣の定める基準によらなければならない。
安衛則第 44 条第2項の文言によれば、厚生労働大臣が定める基準に含まれないものは省略できないこととなる。そのため、安衛則第 44 条第1項第三号の「身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査」は法令ではすべて省略可能なはずだが、体重、視力及び聴力の検査は省略できないこととなる。
※ 「労働安全衛生規則第四十四条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」は、「労働衛生関係法令」の試験範囲に含まれない(試験範囲は「関係法令」であるが、告示は法令に含まれない。)が、「労働衛生一般」の出題範囲には含まれるので参考までに示した。
なお、平成30年に、省略できる項目が一部変更になっている。
【労働安全衛生規則】
(定期健康診断)
第44条 事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一 既往歴及び業務歴の調査
二 (略)
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
四~十一 (略)
2 第1項第三号、第四号、第六号から第九号まで及び第十一号に掲げる項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。
3及び4 (略)
【労働安全衛生規則第四十四条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準】
次の表の上欄に掲げる健康診断の項目については、それぞれ同表の下欄に掲げる者について医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。
項目 | 省略することのできる者 |
---|---|
身長の検査 |
二十歳以上の者 |
腹囲の検査 |
一 四十歳未満の者(三十五歳の者を除く。) 二 妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断されたもの 三 BMI(次の算式により算出した値をいう。以下同じ。)が二十未満である者 BMI=体重(kg)/身長(m)2 四 自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BMIが二十二未満である者に限る。) |
胸部エックス線検査 |
四十歳未満の者(二十歳、二十五歳、三十歳及び三十五歳の者を除く。)で、次のいずれにも該当しないもの 一 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行令(平成十年政令第四百二十号)第十二条第一項第一号に掲げる者 二 じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)第八条第一項第一号又は第三号に掲げる者 |
喀痰検査 |
一 胸部エックス線検査によって病変の発見されない者 二 胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者 三 胸部エックス線検査の項の下欄に掲げる者 |
貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査及び心電図検査 |
四十歳未満の者(三十五歳の者を除く。) |
(5)正しい。安衛則第 45 条(同規則第 13 条第1項第三号のト)により、事業者は、重量物の取扱い等重激な業務に常時従事する労働者に対して、当該業務への配置替えの際及び6か月以内ごとに1回、定期に、健康診断を行わなければならない。
【労働安全衛生法】
(健康診断)
第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
2~5 (略)
【労働安全衛生規則】
(産業医の選任等)
第13条 法第13条第1項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一及び二 (略)
三 常時千人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時五百人以上の労働者を従事させる事業場にあつては、その事業場に専属の者を選任すること。
イ~ヘ (略)
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ~カ (略)
四 (略)
2~4 (略)
(特定業務従事者の健康診断)
第45条 事業者は、第13条第1項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、第44条第1項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。この場合において、同項第四号の項目については、1年以内ごとに1回、定期に、行えば足りるものとする。
2~4 (略)