問25 労働衛生保護具に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)直結式小型防毒マスクは、大気中で対象ガス又は蒸気の濃度が 0.1 %以下で使用する。
(2)酸性ガス用防毒マスクの吸収缶の色は灰色で、シアン化水素用防毒マスクの吸収缶の色は青色である
(3)放射性物質がこばれたとき等による汚染のおそれがある区域内の作業においてオイルミストが混在しない場合は、ろ過材の種類がRL3の防じんマスは使用できない。
(4)取替え式防じんマスクの密着性を確認する方法には、陰圧法と陽圧法がある。
(5)酸素濃度が 18 %未満の場所でも使用できる呼吸用保護具には、送気マスク、空気呼吸器、酸素呼吸器がある。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2023年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
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2023年度(令和05年度) | 問25 | 難易度 | 本問は、やや詳細な内容だったためか、正答率は意外に低かった。 |
---|---|---|---|
労働衛生保護具 | 4 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問25 労働衛生保護具に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)直結式小型防毒マスクは、大気中で対象ガス又は蒸気の濃度が 0.1 %以下で使用する。
(2)酸性ガス用防毒マスクの吸収缶の色は灰色で、シアン化水素用防毒マスクの吸収缶の色は青色である。
(3)放射性物質がこぼれたとき等による汚染のおそれがある区域内の作業においてオイルミストが混在しない場合は、ろ過材の種類がRL3の防じんマスクは使用できない。
(4)取替え式防じんマスクの密着性を確認する方法には、陰圧法と陽圧法がある。
(5)酸素濃度が 18 %未満の場所でも使用できる呼吸用保護具には、送気マスク、空気呼吸器、酸素呼吸器がある。
正答(3)
【解説】
(1)正しい。平成9年3月25日基発第197号「建設業における有機溶剤中毒予防のためのガイドラインの策定について」の別紙3「有機ガス用防毒マスクの種類別の使用可能な範囲」に、直結式小型防毒マスクは、大気中で対象ガス又は蒸気の濃度が 0.1 %以下で使用するとされている。
【建設業における有機溶剤中毒予防のためのガイドラインの策定について】
別紙3 有機ガス用防毒マスクの種類別の使用可能な範囲
種類 使用可能な範囲 隔離式防毒マスク ガス又は蒸気の濃度が2%(1)以下の大気中 直結式防毒マスク ガス又は蒸気の濃度が1%(2)以下の大気中 直結式小型防毒マスク ガス又は蒸気の濃度が0.1%以下の大気中 (参考)(1)アンモニアにあっては3%
(2)アンモニアにあっては1.5%
※ 平成9年3月25日基発第197号「建設業における有機溶剤中毒予防のためのガイドラインの策定について」
(2)正しい。表に示すように、酸性ガス用防毒マスクの吸収缶の色は灰色で、シアン化水素用防毒マスクの吸収缶の色は青色である
対応ガスの種類 | 吸収缶の色 | 試験ガス | 型式検定 | JIS規格 |
---|---|---|---|---|
有機ガス用 | 黒 | シクロヘキサン | ○ | ○ |
ハロゲンガス用 | 灰色と黒 | 塩素 | ○ | ○ |
アンモニア用 | 緑 | アンモニア | ○ | ○ |
亜硫酸ガス用 | 橙色(黄赤) | 亜硫酸ガス | ○ | ○ |
一酸化炭素用 | 赤 | 一酸化炭素 | ○ | ○ |
酸性ガス用 | 灰色 | ○ | ||
シアン化水素用 | 青 | ○ | ||
臭化メチル用 | 茶 | |||
硫化水素用 | 黄 | ○ |
※ 有機ガスと一酸化炭素の双方に使用できる隔離式のマスクで、赤と黒で表示されているもの(JIS規格が定められている)がある。なお、一酸化炭素用とシアン化水素用のマスクには直結小型式のものは存在していないようである。
(3)誤り。令和5年5月25日基発0525第3号「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(以下、本問の解説において「呼吸用保護具通達」という。)の別表5によれば、「放射性物質がこぼれたとき等による汚染のおそれがある区域内の作業」について、「オイルミストが混在しない」場合は、ろ過材の種類が RS3 又は RL3 の防じんマスが使用できるとされている。
本肢は、日本語として違和感を持つ文章になっている。そもそもオイルミストがない場合について RL3 が使用できないとしているが、オイルミストがない場合に RL3 が使えないのだとすれば、オイルミストがあったとしても RL3 は使えないだろう。さらに言えば、RS3 も使用できないはずである。RL3 のマスクは RS3 とは異なりミストがあっても使用できるタイプなのである。
なぜ、わざわざオイルミストがない場合について、RL3 が使用できないなどという問題を出すのかが不思議なのである。
また、オイルミストはたんなるひっかけで、放射性物質がこぼれたとき等の方が重要なファクターだとしたらどうだろうか。しかし、放射性物質がこぼれたとき等に RL3 が使えないのであれば、電動ファン付き呼吸用保護具が開発されていない時代には、給気式のマスクしか使えなかったということになる。それも常識的には違和感を受ける。そのように考えると、本肢が「あやしい」と検討を付けられるのではなかろうか。
(4)正しい。呼吸用保護具通達において、次のように示されている。なお、使い捨て式の防じんマスクは、原理的に「陽圧法」意外にあり得ないことも覚えておこう。
【防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について】
第1 共通事項
5 呼吸用保護具の適切な装着
(3)シールチェックの実施
シールチェックは、ろ過式呼吸用保護具(電動ファン付き呼吸用保護具については、面体形のみ)の取扱説明書に記載されている内容に従って行うこと。シールチェックの主な方法には、陰圧法と陽圧法があり、それぞれ次のとおりであること。なお、ア及びイに記載した方法とは別に、作業場等に備え付けた簡易機器等によって、簡易に密着性を確認する方法(例えば、大気じんを利用する機器、面体内圧の変動を調べる機器等)がある。
ア 陰圧法によるシールチェック
面体を顔面に押しつけないように、フィットチェッカー等を用いて吸気口をふさぐ(連結管を有する場合は、連結管の吸気口をふさぐ又は連結管を握って閉塞させる)。息をゆっくり吸って、面体の顔面部と顔面との間から空気が面体内に流入せず、面体が顔面に吸いつけられることを確認する。
イ 陽圧法によるシールチェック
面体を顔面に押しつけないように、フィットチェッカー等を用いて排気口をふさぐ。息を吐いて、空気が面体内から流出せず、面体内に呼気が滞留することによって面体が膨張することを確認する。
※ 令和5年5月25日基発0525第3号「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」
(5)正しい。酸素濃度が 18%未満の場所でも使用できる呼吸用保護具はフレッシュエア又は酸素を供給できるものである。送気マスク、空気呼吸器、酸素呼吸器はフレッシュエア又は酸素を供給できる。
【防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について】
第1 共通事項
4 呼吸用保護具の選択
(1)呼吸用保護具の種類の選択
事業者は、あらかじめ作業場所に酸素欠乏のおそれがないことを労働者等に確認させること。酸素欠乏又はそのおそれがある場所及び有害物質の濃度が不明な場所ではろ過式呼吸用保護具を使用させてはならないこと。酸素欠乏のおそれがある場所では、日本産業規格 T 8150「呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理方法」(以下「JIS T 8150」という。)を参照し、指定防護係数が 1000 以上の全面形面体を有する、別表2及び別表3に記載している循環式呼吸器、空気呼吸器、エアラインマスク及びホースマスク(以下「給気式呼吸用保護具」という。)の中から有効なものを選択すること。
※ 令和5年5月25日基発0525第3号「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(下線強調:引用者)