問17 作業環境測定を行う際に注意すべき事項に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)混合有機溶剤の場合、溶剤中の含有率が低い物質であっても、高い蒸気圧を有するなど物性によっては環境空気中の濃度が高くなる場合がある。
(2)取り扱う原材料によっては、温度などの条件や生産工程の進み具合によって、有害物質の発散の程度が変動する。
(3)別々の発散源から発散した複数の有機溶剤が空気中で混合する場合は、混合有機溶剤を取り扱う一つの単位作業場所として評価する。
(4)測定対象物質がどのような形態で発散し、どのような状態で環境空気中に存在するかを理解する。
(5)測定対象作業場の主たる業務のほかに、付随的な業務で法的に測定義務のある物質を発散する業務が行われることがあるので、作業環境測定士、衛生管理者、作業主任者などの間で事前の打合せを行い、作業の実態を十分に把握する。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2023年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。
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2023年度(令和05年度) | 問17 | 難易度 | 作業環境測定実施時の留意事項に関する設問だが、ごく常識的な問題。正答できなければならない。 |
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作業環境測定 | 1 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問17 作業環境測定を行う際に注意すべき事項に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)混合有機溶剤の場合、溶剤中の含有率が低い物質であっても、高い蒸気圧を有するなど物性によっては環境空気中の濃度が高くなる場合がある。
(2)取り扱う原材料によっては、温度などの条件や生産工程の進み具合によって、有害物質の発散の程度が変動する。
(3)別々の発散源から発散した複数の有機溶剤が空気中で混合する場合は、混合有機溶剤を取り扱う一つの単位作業場所として評価する。
(4)測定対象物質がどのような形態で発散し、どのような状態で環境空気中に存在するかを理解する。
(5)測定対象作業場の主たる業務のほかに、付随的な業務で法的に測定義務のある物質を発散する業務が行われることがあるので、作業環境測定士、衛生管理者、作業主任者などの間で事前の打合せを行い、作業の実態を十分に把握する。
正答(3)
【解説】
本問は、(3)を除けば、当たり前のことを言っているに過ぎない。サービス問題以前の、ほとんど国家試験の問題として成立していない常識問題である。
(1)正しい。混合有機溶剤の場合、溶剤中の含有率が低い物質であっても、高い蒸気圧を有するなど物性によっては環境空気中の濃度が高くなる場合がある。あまりにも当然のことである。
なお、蒸気圧というのは物理的な性格で、同じ条件では蒸気圧の値が大きいと、気液平衡となったときの気中の濃度が高くなる。
(2)正しい。取り扱う原材料によっては、温度などの条件や生産工程の進み具合によって、有害物質の発散の程度が変動することがある。これも当然のことである。
(3)誤り。「作業環境測定基準」によれば単位作業場所とは「当該作業場の区域のうち労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布等の状況等に基づき定められる作業環境測定のために必要な区域をいう」とされている。別々の発散源から発散した複数の有機溶剤が空気中で混合する場合であっても、混合有機溶剤を取り扱う一つの単位作業場所として評価するわけではない。
【作業環境測定基準】
(粉じんの濃度等の測定)
第2条 (柱書 略)
一 測定点は、単位作業場所(当該作業場の区域のうち労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布等の状況等に基づき定められる作業環境測定のために必要な区域をいう。以下同じ。)の床面上に六メートル以下の等間隔で引いた縦の線と横の線との交点の床上五十センチメートル以上百五十センチメートル以下の位置(設備等があって測定が著しく困難な位置を除く。)とすること。ただし、単位作業場所における空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度がほぼ均一であることが明らかなときは、測定点に係る交点は、当該単位作業場所の床面上に六メートルを超える等間隔で引いた縦の線と横の線との交点とすることができる。
一の二~四 (略)
2~4 (略)
※ 「作業環境測定基準」(昭和51年4月22日労働省告示第46号 最終改正:令和5年4月17日 厚生労働省告示第174号)
なお、後藤(※)が、「1つの単位作業場所において複数の種類の有害物質を取り扱っている場合には、それぞれの物質について評価を行い、物質ごとの管理区分を決定することとなる。ただし、有機溶剤については、人体に与える影響が類似しているため、管理濃度を加味した総合評価により管理区分を決定することとされている
」としていることを紹介しておく。
※ 後藤博俊「労働安全衛生法における作業環境管理」(安全工学 Vol.28 No.6 1989年)
【複数の種類の有害物質を取り扱う場合】
測定値は、2以上の測定点においてB測定を行った場合には、その最大値をいうこととされている。
この評価は、単位作業場所ごとに行うこととされている。また、1つの単位作業場所において複数の種類の有害物質を取り扱っている場合には、それぞれの物質について評価を行い、物質ごとの管理区分を決定することとなる。ただし、有機溶剤については、人体に与える影響が類似しているため、管理濃度を加味した総合評価により管理区分を決定することとされている。
※ 後藤博俊「労働安全衛生法における作業環境管理」(安全工学 Vol.28 No.6 1989年)
(4)正しい。測定対象物質がどのような形態で発散し、どのような状態で環境空気中に存在するかを理解することが、測定を行う上で誤っているわけがない。
(5)正しい。測定対象作業場の主たる業務のほかに、付随的な業務で法的に測定義務のある物質を発散する業務が行われることがあるので、作業環境測定士、衛生管理者、作業主任者などの間で事前の打合せを行い、作業の実態を十分に把握することが、測定を行う上で誤っているわけがない。