労働衛生コンサルタント試験 2023年 労働衛生一般 問11

特殊健康診断




問題文
トップ
受験勉強に打ち込む

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2023年度(令和05年度) 問11 難易度 特殊健康診断に関するやや詳細な知識問題。なお、医師と医師以外の受験者で、正答率にほとんど差はない。
特殊健康診断

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問11 特殊健康診断に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)一般に、有機溶剤は生物学的半減期が短いので、有機溶剤等健康診断における尿中の代謝物の量の検査のための採尿の時刻は、厳重に管理する必要がある。

(2)テトラクロロエチレンの特殊健康診断における生物学的モニタリングの指標には、尿中に排せつされるトリクロロ酢酸がある。

(3)振動工具取扱い作業者に対する特殊健康診断を1年に2回実施する場合、そのうち1回は冬季に行うとよい。

(4)情報機器作業に係る健康診断では、眼科学的検査などとともに、上肢及び下肢の運動機能の検査を行う。

(5)介護・看護作業に常時従事する労働者に対しては、当該作業に配置する際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、医師による腰痛の健康診断を行う。

正答(4)

【解説】

問11試験結果

試験解答状況
図をクリックすると拡大します

(1)正しい。ある物質にばく露して体内に取り込まれると、尿や血液中の指標となる物質の濃度が上昇する。これを測定して、ばく露の状況を調べるのが生物学的モニタリングである。

ばく露から離れると、指標の濃度も下がってゆくが、最初の濃度の1/2の濃度になるまでの時間を生物学的半減期と呼ぶ。有機溶剤は、一般にこの生物学的半減期が数時間程度のものが多い。このため、作業終了後の採取時間を適切に管理しないと信頼性のあるデータは得られない。

(2)正しい。テトラクロロエチレンの特殊健康診断における生物学的モニタリングの指標には、尿中に排せつされるトリクロロ酢酸がある。

物質名 ばく露指標(特殊健康診断の検査内容)
トルエン 尿中馬尿酸
キシレン 尿中メチル馬尿酸
スチレン 尿中マンデル酸
テトラクロルエチレン 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物
1.1.1-トリクロルエタン
トリクロルエチレン
N.N-ジメチルホルムアミド 尿中N-メチルホルムアミド
ノルマルヘキサン 尿中ヘキサンジオン
血液中鉛、尿中デルタアミノレブリン酸

(3)正しい。「振動工具(チエンソー等を除く。)の取扱い等の業務に係る特殊健康診断について」(昭和49年1月28日基発第45号)にもあるように、振動工具取扱い作業者に対する特殊健康診断の検査を行う季節は、症状が顕在化する冬期が望ましい。

【振動工具(チエンソー等を除く。)の取扱い等の業務に係る特殊健康診断について】

2 対象者及び実施時期

  1の各号の業務に常時従事する者について、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及び次に定める期間以内ごとに1回、定期に行う。

(1)1の(1)の業務については、6ヶ月(うち1回は冬期)

(2)その他の業務については、1年(冬期)

※ 昭和49年1月28日基発第45号「振動工具(チエンソー等を除く。)の取扱い等の業務に係る特殊健康診断について

(4)誤り。「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」においては、情報機器作業に係る健康診断では、眼科学的検査などとともに、上肢の運動機能の検査を行うとされている。下肢の運動機能の検査を行うとはされていない。

常識で考えても、情報処理端末を操作していて、下肢の筋骨格系に健康影響が出るとは考えにくいだろう。

【情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン】

7 健康管理

(1)健康診断

ロ 定期健康診断

e 筋骨格系に関する検査

(a)上肢の運動機能、圧痛点等の検査

(b)その他医師が必要と認める検査

※ 「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日基発0712第3号(一部改正:令和3年12月1日基発1201第7号)

(5)正しい。「腰痛予防対策指針」に、介護・看護作業に常時従事する労働者に対しては、当該作業に配置する際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、医師による腰痛の健康診断を行うこととされている。

【腰痛予防対策指針】

4 健康管理

(1)健康診断

  重量物取扱い作業、介護・看護作業等腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対しては、当該作業に配置する際及びその後6月以内ごとに1回、定期に、次のとおり医師による腰痛の健康診断を実施すること。

※ 「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日基発0712第3号(一部改正:令和3年12月1日基発1201第7号)
2024年01月23日執筆