問7 酸素欠乏症及び硫化水素による健康障害とそれらの予防に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)ドライアイスが昇華すると酸素欠乏症のリスクが生じる。
(2)酸素欠乏空気には鋭敏な人が検知できる特有の臭いがある。
(3)硫化水素用の防毒マスクは、酸素濃度18%以上のときに使用できる。
(4)海水が滞留している暗渠では、酸素欠乏症及び硫化水素中毒のリスクがある。
(5)硫化水素にばく露したときの眼の症状として、結膜炎や角膜損傷が知られている。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2023年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
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2023年度(令和05年度) | 問07 | 難易度 | 酸素欠乏症に関するごく常識的な内容の問題である。これを誤答するとかなり痛い。 |
---|---|---|---|
酸素欠乏症 | 1 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問7 酸素欠乏症及び硫化水素による健康障害とそれらの予防に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)ドライアイスが昇華すると酸素欠乏症のリスクが生じる。
(2)酸素欠乏空気には鋭敏な人が検知できる特有の臭いがある。
(3)硫化水素用の防毒マスクは、酸素濃度18%以上のときに使用できる。
(4)海水が滞留している暗渠では、酸素欠乏症及び硫化水素中毒のリスクがある。
(5)硫化水素にばく露したときの眼の症状として、結膜炎や角膜損傷が知られている。
正答(2)
【解説】
(1)適切である。酸素欠乏症は、酸素が欠乏している酸素欠乏空気によって発生する。これは、酸素が燃焼などによってなくなるか、酸素以外のガス(酸素欠乏空気など)が流入して空気と置き換わることによって起きる。
ドライアイスが昇華して炭酸ガスになれば、その分の酸素がなくなるわけであり、酸素欠乏症のリスクが生じる。
(2)適切ではない。酸素欠乏空気とはたんに酸素が欠乏しているという意味であるから、(酸素に置き換わったガスに臭いがなければ)臭気があるわけがない。ないものが臭うわけがないだろう。
(3)適切である。問題文には、酸素濃度 18% 以上のときに限り使用できるとは書かれていないので、酸素濃度 18% 以上のときに使用できるかどうかだけを問うているのであろう。だとすれば、酸素濃度 18% 以上のときに使用できない呼吸用保護具が役に立つわけがないし、そんなものが(よほど特殊なものは別かもしれないが)存在しているはずもない。
なお、硫化水素用の防毒マスクは、酸素を発生させるわけではないので、酸素濃度が 18% より低い環境では使用できないことは当然である。
(4)適切である。酸欠則では、酸素欠乏症と硫化水素中毒に罹患するおそれのある場所における作業を第2種酸素欠乏危険作業と規定している。
そして、酸欠則第2条(第八号)及び安衛令別表第6第三号の三は、海水が滞留している暗渠での作業を第二種酸素欠乏危険作業としている。
【労働安全衛生法施行令】
別表第六 酸素欠乏危険場所(第六条、第二十一条関係)
一~三の二 (略)
三の三 海水が滞留しており、若しくは滞留したことのある熱交換器、管、暗きよ、マンホール、溝若しくはピツト(以下この号において「熱交換器等」という。)又は海水を相当期間入れてあり、若しくは入れたことのある熱交換器等の内部
四~十二 (略)
【酸素欠乏症等防止規則】
(定義)
第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~七 (略)
八 第二種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏危険場所のうち、令別表第六第三号の三、第九号又は第十二号に掲げる酸素欠乏危険場所(同号に掲げる場所にあつては、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として厚生労働大臣が定める場所に限る。)における作業をいう。
(5)適切である。政府の硫化水素のモデル SDSによれば、「ヒトの眼に高濃度の硫化水素ガスを直接接触させることにより、角結膜炎、角膜の点状びらん、催涙、羞明などの刺激症状が認められるとの記述、及び気中濃度16-32mg/m3(10.5-21.0ppm)の硫化水素ガスにばく露後数時間に眼に対する刺激性が認められたとの記述から、眼に対して強度の刺激性があると判断し、区分2Aとした
(下線強調引用者)」との記述がある。