問6 高気圧障害の予防に関する次のイ~ニの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
イ 呼吸ガスの酸素分圧は制限なく増加できる。
ロ 気こう室から十分離れた場所に連絡等の担当者を常時配置する。
ハ 水深 40m を超える潜水作業では、ヘリウム混合ガスを呼吸ガスとする。
ニ 酸素ばく露量の算出の際は、UPTD(肺酸素毒性量単位)をその単位として用いる。
(1)イ ロ
(2)イ ハ
(3)イ ニ
(4)ロ ハ
(5)ハ ニ
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2023年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2023年度(令和05年度) | 問06 | 難易度 | 高気圧障害に関する、過去問に類問のない問題。やや詳細な内容もあるが、正答できなければならない。 |
---|---|---|---|
高気圧障害 | 2 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問6 高気圧障害の予防に関する次のイ~ニの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
イ 呼吸ガスの酸素分圧は制限なく増加できる。
ロ 気こう室から十分離れた場所に連絡等の担当者を常時配置する。
ハ 水深40mを超える潜水作業では、ヘリウム混合ガスを呼吸ガスとする。
ニ 酸素ばく露量の算出の際は、UPTD(肺酸素毒性量単位)をその単位として用いる。
(1)イ ロ
(2)イ ハ
(3)イ ニ
(4)ロ ハ
(5)ハ ニ
正答(5)
【解説】
イ 誤り。高圧則第16条により、高圧室内作業者の酸素ばく露の制限が定められている。なお、厚労省の「高気圧作業安全衛生規則改正検討会報告書」(2014年:以下本問の解説において「報告書」という。)には、「酸素分圧は、原則 18kPa 以上 160kPa 以下(0.18atm 以上 1.6atm 以下、1.8msw 以上 16.0msw 以下)。ただし、気こう室又は再圧室(潜水業務では溺水するおそれのない場所又は再圧室)において、空気より高濃度の酸素を吸入させて減圧する場合は、18kPa 以上 220kPa 以下(0.18atm 以上 2.2atm 以下、1.8msw 以上 22.0msw 以下)とする
」とされている。
実務においては、酸素中毒を防止するため、呼吸ガス中の酸素分圧は通常で 1.4 気圧以下、特別な場合でも 1.6 気圧以下に保ち、酸素分圧に応じた潜水時間の制限も必要となる。制限なく増加してよいわけがない。
【高気圧作業安全衛生規則】
(酸素ばく露量の制限)
第16条 事業者は、酸素による高圧室内作業者の健康障害を防止するため、高圧室内作業者について、当該高圧室内作業者が高圧室内業務に従事している間、厚生労働大臣が定める方法により求めた酸素ばく露量が、厚生労働大臣が定める値を超えないように、作業室又は気こう室への送気その他の必要な措置を講じなければならない。
2 事業者は、高圧室内業務請負人等について、当該高圧室内業務請負人等が高圧室内業務に従事する間(高圧室内作業者が当該高圧室内業務に従事するときを除く。)、前項の厚生労働大臣が定める方法により求めた酸素ばく露量が、同項の厚生労働大臣が定める値を超えないように、作業室又は気こう室への送気その他の必要な措置を講ずること等について配慮しなければならない。
ロ 誤り。高圧則第21条第1項により、高圧室内業務を行うときは、気こう室の付近に、高圧室内作業者及び空気圧縮機の運転を行う者との連絡その他必要な措置を講ずるための者を常時配置しなければならない。十分離れた場所とはされていない。
【高気圧作業安全衛生規則】
(連絡)
第21条 事業者は、高圧室内業務を行うときは、気こう室の付近に、高圧室内作業者及び空気圧縮機の運転を行う者との連絡その他必要な措置を講ずるための者(次項において「連絡員」という。)を常時配置しなければならない。
2及び3条 (略)
ハ 正しい。報告書には、「水深 40m 又はゲージ圧力が 0.4MPa を超える高気圧作業を行う場合は、窒素ガス分圧が空気のそれよりも小さくなる混合ガスを呼吸用に使用することとなる
」とされている。
やや微妙だが、一般には、水深 40m を超える潜水作業でヘリウム混合ガスを呼吸ガスとすることで対応している。なお、高圧則第15条により、一定の場合には呼吸ガスとして混合ガスを用いる必要がある。
【高気圧作業安全衛生規則改正検討会報告書】
第2 高気圧作業の安全衛生基準の課題と改正の方向
3 高気圧作業の安全衛生基準の見直しの方向性
(1)高圧室内業務と潜水業務に共通する課題
ウ 上記イに基づき、空気を呼吸ガスとする高気圧作業を行う場合については、空気中の各気体の分圧をイの範囲内とするために、水深 40m 又はゲージ圧力が 0.4MPa までとすることとなる。水深 40m 又はゲージ圧力が 0.4MPa を超える高気圧作業を行う場合は、窒素ガス分圧が空気のそれよりも小さくなる混合ガスを呼吸用に使用することとなる。また、水深 30m 又はゲージ圧力が 0.3MPa 以上では、ヘリウム混合ガスを呼吸ガスとすることが望ましい。
(以下略)
※ 厚生労働省「高気圧作業安全衛生規則改正検討会報告書」(2014年2月)
ニ 正しい。酸素ばく露量の算出の際は、UPTD(肺酸素毒性量単位)をその単位として用いる。なお、報告書の以下の記述を参考までに掲げておく。
【高気圧作業安全衛生規則改正検討会報告書】
第3 高気圧作業の安全衛生基準見直しの具体的内容
4 酸素ばく露量の計算方法等
(2)酸素ばく露量の計算方法
酸素減圧を利用する時など、酸素分圧が 50kPa(0.5atm、5msw)を超える時は、酸素における身体影響を鑑み、以下の計算式で定める UPTD(肺酸素毒性量単位)及び CPTD(累積肺酸素毒性量単位)について、それぞれ1日当たり、1週間当たりの制約を受ける。
なお、tは酸素分圧が 50kPa を超え、加減圧速度が一定である時間ごとに区切って計算を行うものとする。
(以下略)
※ 厚生労働省「高気圧作業安全衛生規則改正検討会報告書」(2014年2月)