問4 厚生労働省の「第 10 次粉じん障害防止総合対策」における粉じん障害を防止するため事業者が重点的に講ずべき措置に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)ずい道等建設工事に従事するじん肺有所見労働者に対し、禁煙について強く働きかける。
(2)ずい道等建設工事において、コンクリート等を吹き付ける場所での作業では、防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具を使用させる。
(3)「保護具着用管理責任者」を選任し、防じんマスクの適正な選択等の業務に従事させる。
(4)じん肺健康診断を実施し、毎年じん肺健康管理実施状況報告を提出する。
(5)粉じん作業に従事し、じん肺管理区分が管理3又は管理4の離職予定者に「離職するじん肺有所見者のためのガイドブック」を配付する。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2023年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
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2023年度(令和05年度) | 問04 | 難易度 | やや細かな内容の肢もあるが、試験現場で考えることで正答できる内容。確実に正答しておきたい。 |
---|---|---|---|
粉じん障害防止計画 | 3 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問4 厚生労働省の「第 10 次粉じん障害防止総合対策」における粉じん障害を防止するため事業者が重点的に講ずべき措置に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)ずい道等建設工事に従事するじん肺有所見労働者に対し、禁煙について強く働きかける。
(2)ずい道等建設工事において、コンクリート等を吹き付ける場所での作業では、防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具を使用させる。
(3)「保護具着用管理責任者」を選任し、防じんマスクの適正な選択等の業務に従事させる。
(4)じん肺健康診断を実施し、毎年じん肺健康管理実施状況報告を提出する。
(5)粉じん作業に従事し、じん肺管理区分が管理3又は管理4の離職予定者に「離職するじん肺有所見者のためのガイドブック」を配付する。
正答(5)
【解説】
本問は、問題文にもあるように「第 10 次粉じん障害防止総合対策」(令和5年3月 30 日基発 0330 第3号:以下、本問の解説において「総合対策」という。)の内容に関する問題である。その意味では知識問題ではあるが、総合対策の記述を知らなくても、各肢の内容から試験現場で考えれば正答でき得る問題である。
なお、「粉じん障害防止総合対策」に関する出題は、2018 年の問3で「第9次粉じん障害防止総合対策」が出題されたとき以来である。その意味では、次に出題されるのは5年後に「第 11 次粉じん障害防止総合対策」が出題されるときかもしれない。
(1)適切である。総合対策の別添の第2の2に、ずい道等建設工事に従事するじん肺有所見労働者に対し、「事業者は、じん肺有所見労働者に対し、肺がん検診の受診及び禁煙について強く働きかける
」とされている。
【粉じん障害を防止するため事業者が重点的に講ずべき措置(第 10 次粉じん障害防止総合対策 別添)】
第2 具体的実施事項
2 ずい道等建設工事における粉じん障害防止対策
(2)健康管理対策の推進
ウ じん肺有所見労働者に対する健康管理教育等の推進
事業者は、じん肺有所見労働者のじん肺の増悪の防止を図るため、産業医等による継続的な保健指導を実施するとともに「じん肺有所見者に対する健康管理教育のためのガイドライン」(平成9年2月3日付け基発第 70 号)に基づく健康管理教育を推進すること。
さらに、じん肺有所見労働者は、喫煙が加わると肺がんの発生リスクがより一層上昇すること、禁煙により発生リスクの低下が期待できることから、事業者は、じん肺有所見労働者に対し、肺がん検診の受診及び禁煙について強く働きかけること。
※ 「第 10 次粉じん障害防止総合対策」(令和5年3月 30 日基発 0330 第3号)
(2)適切である。総合対策の第4の1の(4)に「ずい道等建設工事においては、要求防護係数に基づく有効な電動ファン付き呼吸用保護具の使用及び作業主任者の職務について、必要な指導を行う
」との記述がある。、また、別添の第2の2の(1)において、ずい道等建設工事における「コンクリート等を吹き付ける場所における作業」については、「労働者に使用させなければならない呼吸用保護具は電動ファン付き呼吸用保護具に限られ
」とされている。
【第 10 次粉じん障害防止総合対策】
第4 労働基準行政の実施事項
1 局及び労働基準監督署の実施事項
(4)電動ファン付き呼吸用保護具の着用
(略)
なお、ずい道等建設工事においては、要求防護係数に基づく有効な電動ファン付き呼吸用保護具の使用及び作業主任者の職務について、必要な指導を行う。
※ 「第 10 次粉じん障害防止総合対策」(令和5年3月 30 日基発 0330 第3号)
【粉じん障害を防止するため事業者が重点的に講ずべき措置(第 10 次粉じん障害防止総合対策 別添)】
第2 具体的実施事項
2 ずい道等建設工事における粉じん障害防止対策
(1)ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドラインに基づく対策の徹底
(略)
特に、次の作業において、労働者に使用させなければならない呼吸用保護具は電動ファン付き呼吸用保護具に限られ、切羽に近接する場所の空気中の粉じん濃度等に応じて、有効なものとする必要があることに留意すること。
(略)
[1]及び[2](略)
[3]コンクリート等を吹き付ける場所における作業
(略)
※ 「第 10 次粉じん障害防止総合対策」(令和5年3月 30 日基発 0330 第3号)
(3)適切である。総合対策の別添の第2の1の(1)に「「保護具着用管理責任者」を選任し、防じんマスクの適正な選択等の業務に従事させること
」とされている。
【粉じん障害を防止するため事業者が重点的に講ずべき措置(第 10 次粉じん障害防止総合対策 別添)】
第2 具体的実施事項
1 呼吸用保護具の適正な選択及び使用の徹底
事業者は、粉じんの有害性を十分に認識し、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させるため、次の措置を講じること。
(1)保護具着用管理責任者の選任及び呼吸用保護具の適正な選択と使用等の推進
平成 17 年2月7日付け基発第 0207006 号「防じんマスクの選択、使用等について」等に基づき、「保護具着用管理責任者」を選任し、防じんマスクの適正な選択等の業務に従事させること。
(略)
※ 「第 10 次粉じん障害防止総合対策」(令和5年3月 30 日基発 0330 第3号)
(4)適切である。総合対策の別添の第2の3に「事業者は、じん肺法に基づき、じん肺健康診断を実施し、毎年じん肺健康管理実施状況報告を提出すること
」とされている。
コンサルタント試験では、指針や総合計画の内容を問われることがある。指針や総合計画の内容を知らなくても、ある肢の内容が正しいことであればその肢は正しいとしてよい。
本肢は、法的に正しい内容である。
【粉じん障害を防止するため事業者が重点的に講ずべき措置(第 10 次粉じん障害防止総合対策 別添)】
第2 具体的実施事項
3 じん肺健康診断の着実な実施
事業者は、じん肺法に基づき、じん肺健康診断を実施し、毎年じん肺健康管理実施状況報告を提出すること。また、労働者のじん肺健康診断に関する記録の作成に当たっては、粉じん作業職歴を可能な限り記載し、作成した記録の保存を確実に行うこと。
※ 「第 10 次粉じん障害防止総合対策」(令和5年3月 30 日基発 0330 第3号)
(5)適切ではない。総合対策の別添の第2の4に「じん肺管理区分が管理2又は管理3の離職予定者に対し、「離職するじん肺有所見者のためのガイドブック」(中略)を配付する
」とされている。じん肺管理区分が管理1の者はじん肺の所見がない(※)のだからこの種のガイドブックの必要性は低い。一方、管理4の者は現に療養しているので、この種のガイドブックは必要がないという趣旨であろう。
※ 管理1の者は、離職後に発病することがないという趣旨ではない。現に、離職後に発症するケースもある。
仮に、管理4の者にガイドブックを配布する必要性がないことに気が付かなかったとしても、管理2の者にガイドブックを配布しないのはおかしいと気付かなければならない。管理2は所見があるわけで、生活習慣によっては増悪するおそれもあるのだ。
一方、ガイドブックの価格はそれほどでもなく(※)、管理2のものの数はそれほど多いわけではないのである。配布しないという判断はあり得ないであろう。なお、健康管理手帳の交付対象者も、粉じん作業に係る業務については「じん肺管理区分が管理2又は管理3であること」をこの機会に合わせて覚えておこう。
※ 印刷するときに、管理2の者で離職する可能性のあるものの数だけ余分に印刷したとしても、印刷物の変動費は紙代程度なのである。一方、本年度の問2の解説に示したように、管理2の診断を受ける者の数は、近年では 1,000 人程度であり、離職者も数千人程度であろう。
【粉じん障害を防止するため事業者が重点的に講ずべき措置(第 10 次粉じん障害防止総合対策 別添)】
第2 具体的実施事項
4 離職後の健康管理の推進
事業者は、粉じん作業に従事し、じん肺管理区分が管理2又は管理3の離職予定者に対し、「離職するじん肺有所見者のためのガイドブック」(平成 29 年3月策定。以下「ガイドブック」という。)を配付するとともに、ガイドブック等を活用し、離職予定者に健康管理手帳の交付申請の方法等について周知すること。その際、特に、じん肺合併症予防の観点から、積極的な禁煙の働きかけを行うこと。なお、定期的な健康管理の中で禁煙指導に役立てるため、粉じん作業に係る健康管理手帳の様式に、喫煙歴の記入欄があることに留意すること。
(略)
※ 「第 10 次粉じん障害防止総合対策」(令和5年3月 30 日基発 0330 第3号)