労働衛生コンサルタント試験 2022年 労働衛生一般 問04

じん肺対策




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2022年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2022年度(令和04年度) 問04 難易度 じん肺とその対策に関するごく初歩的な問題。確実に正答できなければならない。
じん肺対策

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問4 じん肺に関する次のイ~ニの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

イ じん肺は、気管支に到達し沈着した微細な粉じんに起因する。

ロ じん肺では、肺内で線維増殖が起こり、肺が固くなって呼吸が困難になる。

ハ 慢性のけい肺症では、胸部エックス線写真で上肺野に多発性の小粒状影が見られる。

ニ 離職により、粉じんばく露が停止するとじん肺の進行は停止する。

(1)イ  ロ

(2)イ  ハ

(3)イ  ニ

(4)ロ  ハ

(5)ハ  ニ

正答(4)

【解説】

問4試験結果

試験解答状況
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イ 誤り。じん肺は、に到達し沈着した微細な粉じんに起因する。

ロ 正しい。じん肺法第2条第1項第一号では「粉じんを吸入することによつて肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病をいう」とされている。なお、2021年問4のイに同種の肢がある。

ハ 正しい。以下は医師に向けた資料で、その他の方で病理写真が苦手な方は閲覧注意だが、「画像で診る今日のじん肺症例選集」、「じん肺の適切な診断を推進するツールの開発」参照。

本問では。本肢のみが、やや高度な知識を問うている。他の選択肢がごく常識的な内容であり、とくに問題なく正答できるだろう。

ニ 誤り。厚生労働省「離職するじん肺有所見者のためのガイドブック」の「(参考2)じん肺とは」(15頁)にも「粉じん作業を離れた後でも、過去の粉じんばく露の程度が強いと更に進行する場合があります」とされているが、作業を離れた後に増悪することは知っておかなければならない。

なお、じん肺は、離職後、長期間を経て発症することもある。このため、じん肺に関する民事損害賠償請求に関しては、時効の起算点は最後(※)に管理区分を決定した日(又は死亡の日)とされている(覚える必要はない)。

※ 2017 年の民法改正前までの時効制度では、安全配慮義務による損害賠償請求の時効は、請求が可能となったときから10年とされていた。このため、会社を辞めると安全配慮義務の履行請求はできなくなるので、退職後10年経過すると損害賠償請求もできないと考えられていた。一方、不法行為責任は、当時は短期時効(3年間)が定められていて使いにくかったのである。なお、現在、民法の時効制度は改正されている。詳細は、「2017年民法改正(消滅時効等)」を参照されたい。

このため、判例は救済措置として、時効の起算点を遅らせるという判断をした。時効の起算点を、最初に有所見となる管理区分が行われたときとするか、最後の管理区分が行われたときとするかで、当初、下級審判例は揺れた。しかし、その後、最高裁の判断によって、最後のときとする(労働者にとって有利)ことで確定している。

2022年12月06日執筆