労働衛生コンサルタント試験 2021年 労働衛生関係法令 問08

有機溶剤中毒予防規則




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 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年度(令和3年度) 問08 難易度 有機則は(2019年を除き)ほぼ必出である。本年度は基本的な内容であり、正答しておきたい。
有機溶剤中毒予防規則

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問8 有機溶剤中毒予防規則に関する次のイ~ニの記述について、法令上、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

ただし、同規則による適用の除外及び設備の特例はないものとする。

イ 事業者は、屋内作業場において、第二種有機溶剤等を用いて行う払しょくの業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

ロ 事業者は、通風が不十分な屋内作業場において、第三種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければならない。

ハ 事業者は、有機溶剤等を入れたことのあるタンクで有機溶剤の蒸気の発散するおそれのあるものの内部における業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させなければならない。

ニ 屋内作業場において第一種有機溶剤等に係る有機溶剤業務を行う作業場所に有機溶剤中毒予防規則の規定により設置する側方吸引型の外付け式フードの局所排気装置は、0.4メートル/秒の制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。

(1)イ  ロ

(2)イ  ハ

(3)イ  ニ

(4)ロ  ハ

(5)ロ  ニ

正答(1)

【解説】

問8試験結果

試験解答状況
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イ 正しい。払しょくの業務は有機則第1条第1項(第六号チ)により有機溶剤業務である。

また、屋内作業場での第二種有機溶剤等を用いて行う有機溶剤業務については、同規則第5条により、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~五 (略)

 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

イ~ト (略)

 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に該当する洗浄の業務を除く。)又は払しよくの業務

リ~ヲ (略)

 (略)

(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)

第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

ロ 正しい。有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務は有機則第1条第1項(第六号ヌ)により有機溶剤業務である。そして、「通風が不十分な屋内作業場」(※)は、同規則第2条第1項第一号により「タンク等の内部」に該当する。

※ 法令一般の範囲ではないが、昭和35年10月31日基発第929号「有機溶剤中毒予防規則の施行について」の記の第2の2の(2)が「「通風が不十分な屋内作業場」とは、天井、床及び周壁の総表面積に対する窓その他の直接外気に向って開放しうる開口部の面積の比率が3パーセント以下の屋内作業場をいうこと」としていることに、試験合格後の実務において留意すること。

一般的な事務室などでさえ、開口部の面積の比率が3パーセントを超えることはほとんどない。通常の言葉の感覚とは異なり、屋内作業場の多くは「タンク等の内部」に該当するのである。なお、前記通達の「開口部」が、実際に開口している部分なのか、開口できる部分なのかは、やや曖昧なところがある。窓や出入り口の面積が3%を超えているが、実際には閉じられているという場合に、「通風が不十分な屋内作業場」に該当するかについての解釈は労働局によって異なっているのが実態である。

従って、同規則第6条により、本肢の場合、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければならない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~五 (略)

 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

イ~リ (略)

 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務

ル及びヲ (略)

 (略)

(適用の除外)

第2条 (柱書 略)

 屋内作業場等(屋内作業場又は前条第二項各号に掲げる場所をいう。以下同じ。)のうちタンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)以外の場所において当該業務に労働者を従事させる場合で、作業時間一時間に消費する有機溶剤等の量が、次の表の上欄に掲げる区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる式により計算した量(以下「有機溶剤等の許容消費量」という。)を超えないとき。

 (略)

 (略)

 (略)

(第三種有機溶剤等に係る設備)

第6条 事業者は、タンク等の内部において、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務及び吹付けによる有機溶剤業務を除く。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければならない。

 (略)

ハ 誤り。有機則第32条第1項第一号の規定により、本肢の作業では送気マスクを使用させなければならない。

受験テクニックとして、「タンク等の内部で呼吸用保護具を着けさせるべき場合は送気マスク」と覚えておく。

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~五 (略)

 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

イ~ル (略)

 有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。以下同じ。)の内部における業務

 (略)

(送気マスクの使用)

第32条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。

 第一条第一項第六号ヲに掲げる業務

 (略)

 (略)

ニ 誤り。有機則第16条第1項により、側方吸引型の外付け式フードの局所排気装置は、0.5メートル/秒以上でなければならない。この表は、試験までに確実に覚えておくこと。

【有機溶剤中毒予防規則】

(局所排気装置の性能)

第16条 局所排気装置は、次の表の上欄に掲げる型式に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。

型式 制御風速(メートル/秒)
囲い式フード 〇・四
外付け式フード 側方吸引型 〇・五
下方吸引型 〇・五
上方吸引型 一・〇
備考 (略)

 前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該局所排気装置は、その換気量を、発散する有機溶剤等の区分に応じて、それぞれ第17条に規定する全体換気装置の換気量に等しくなるまで下げた場合の制御風速を出し得る能力を有すれば足りる。

 第6条第一項の規定により局所排気装置を設けた場合

 第8条第2項、第9条第1項又は第11条の規定に該当し、全体換気装置を設けることにより有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備及び局所排気装置を設けることを要しないとされる場合で、局所排気装置を設けたとき。

2021年11月05日執筆