労働衛生コンサルタント試験 2021年 労働衛生関係法令 問06

有機溶剤業務を行う屋内作業場の作業環境測定




問題文
トップ
勉強

 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2021年度(令和3年度) 問06 難易度 作業環境測定が、有機則に限定して出題されたのは初出。かなりの難問だが、正答しておきたい。
有機溶剤の作業環境測定

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問6 有機溶剤業務を行う屋内作業場において、法令に基づいて実施する作業環境測定の結果の評価等に関する次のイ~ニの記述について、法令上、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

イ 事業者は、作業環境測定を行ったときは、その都度、速やかに、厚生労働大臣の定めるばく露限界基準に従って、第1管理区分、第2管理区分又は第3管理区分に区分することにより当該測定の結果の評価を行わなければならない。

ロ 事業者は、作業環境測定を行ったときは、その都度、評価日時、評価箇所、評価結果及び評価を実施した者の氏名を記録して、これを3年間保存しなければならない。

ハ 事業者は、作業環境測定の結果の評価の結果、第2管理区分及び第3管理区分に区分された場所については、直ちに、施設、作業方法の点検を行い、その結果に基づき、作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第1管理区分となるようにしなければならない。

ニ 事業者は、作業環境測定の結果の評価の結果、第2管理区分及び第3管理区分に区分された場所については、当該作業環境測定の結果の評価の記録を、常時各作業場の見やすい場所に掲示する等の方法によって労働者に周知しなければならない。

(1)イ  ロ

(2)イ  ハ

(3)イ  ニ

(4)ロ  ハ

(5)ロ  ニ

正答(5)

【解説】

問6試験結果

試験解答状況
図をクリックすると拡大します

イ 誤り。有機則第28条の2第1項の「作業環境評価基準」が「ばく露限界基準」と変えられている。

これまでの衛生コンサルタント試験では、このように用語を変えて誤りとする問題はほとんどなかったように思える。やや「おきて破り」という気がしないでもなく、多くの受験者がここで間違えている。

しかし、意味を考えれば「管理濃度基準」ならともかく「ばく露限界基準」のわけがないと気付かなければならない。作業環境測定の結果は、管理濃度によって評価するのであって、職業暴露限界値によって評価するのではない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(測定結果の評価)

第28条の2 事業者は、前条第2項の屋内作業場について、同項又は法第65条第5項の規定による測定を行つたときは、その都度、速やかに、厚生労働大臣の定める作業環境評価基準に従つて、作業環境の管理の状態に応じ、第一管理区分、第二管理区分又は第三管理区分に区分することにより当該測定の結果の評価を行わなければならない。

 (略)

ロ 正しい。有機則第28条の2第1項のままである。

ハ 誤り。「第3管理区分に区分された場所」については、有機則第28条の3第1項により「第1管理区分又は第2管理区分となるようにしなければならない」とされている。「第1管理区分となるようにしなければならない」とはされていない。

また、「第2管理区分に区分された場所」については、同規則第28条の4第1項により「作業環境を改善するため必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とされている。「第1管理区分となるようにしなければならない」とまではされていない(※)

※ この規定によって、第2管理区分の間は作業環境の改善に努めなければならないのであるから、結果的に「第1管理区分となるように努めなければならない」としたことと同じであると理解されていることが多い。

【有機溶剤中毒予防規則】

(評価の結果に基づく措置)

第28条の3 事業者は、前条第1の規定による評価の結果、第三管理区分に区分された場所については、直ちに、施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第一管理区分又は第二管理区分となるようにしなければならない

2~4 (略)

第28条の4 事業者は、第28条の2第1項の規定による評価の結果、第二管理区分に区分された場所については、施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講ずるよう努めなければならない

 (略)

ニ 正しい。労働者への周知義務について、有機則第28条の3第3項において「第3管理区分に区分された場所」についてこれを定め、同規則第28条の4第2項では「第2管理区分に区分された場所」についても定めている。従って、「第2管理区分及び第3管理区分に区分された場所」について、労働者への周知義務が定められている。

【有機溶剤中毒予防規則】

(評価の結果に基づく措置)

第28条の3 事業者は、前条第1項の規定による評価の結果、第三管理区分に区分された場所については、直ちに、施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第一管理区分又は第二管理区分となるようにしなければならない。

 事業者は、前項の規定による措置を講じたときは、その効果を確認するため、同項の場所について当該有機溶剤の濃度を測定し、及びその結果の評価を行わなければならない。

 事業者は、第一項の場所については、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させるほか、健康診断の実施その他労働者の健康の保持を図るため必要な措置を講ずるとともに、前条第二項の規定による評価の記録、第一項の規定に基づき講ずる措置及び前項の規定に基づく評価の結果を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知させなければならない

 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。

 書面を労働者に交付すること。

 磁気ディスク、光ディスクその他の記録媒体に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

 (略)

第28条の4 事業者は、第28条の2第1項の規定による評価の結果、第二管理区分に区分された場所については、施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 前項に定めるもののほか、事業者は、前項の場所については、第28条の2第2項の規定による評価の記録及び前項の規定に基づき講ずる措置を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知しなければならない

 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。

 書面を労働者に交付すること。

 磁気ディスク、光ディスクその他の記録媒体に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

※ 有機則第 28 条の3第3項及び第 28 条の4第2項は出題当時の条文は以下のようになっており、第 28 条の3にまた第4項はなかった。現在は、上記のように改正されているが、本肢の正誤に影響はない。

第28条の3 (第1項及び第2項 変更なし)

 前2項に定めるもののほか、事業者は、第1項の場所については、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させるほか、健康診断の実施その他労働者の健康の保持を図るため必要な措置を講ずるとともに、前条第二項の規定による評価の記録、第一項の規定に基づき講ずる措置及び前項の規定に基づく評価の結果を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知しなければならない。

一及び二 (変更なし)

 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

第28条の4 (第1項 変更なし)

 (柱書変更なし)

一及び二 (変更なし)

 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

2021年11月03日執筆 2021年11月06日一部修正 2024年11月03日省令改正により一部改訂