問1 事業場の安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか
なお、(5)において法定労働時間は、休憩時間を除き1日について8時間、1週間について 40 時間であり、時間外・休日労働時間は、休憩時間を除き1週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間とする。
(1)常時使用する労働者が 300 人又はこれを超えることとなった自動車整備業の事業場では、事業の実施を統括管理する者又はこれに準ずる者のうちから総括安全衛生管理者を選任する必要があり、その選任は総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から 14 日以内に行わなければならない。
(2)常時 50 人以上の労働者を使用する事業場において選任すべき産業医は、医師であって厚生労働大臣の指定する大学等が行う産業医研修等を修了した者又は保健衛生若しくは労働衛生工学の区分により労働衛生コンサルタント試験に合格した者でなければならない。
(3)常時 250 人の労働者を使用する医療業の事業場では、衛生管理者を2人以上選任することが必要で、その衛生管理者は原則として当該事業場に専属であって、第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は医師、歯科医師若しくは労働衛生コンサルタントでなければならない。
(4)常時使用する労働者が 100 人で、安全衛生委員会を設置した事業場では、当該委員会を毎月1回以上開催し、その開催の都度、委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容に係る記録を作成して、これを各作業場に備え付ける等の方法で、遅滞なく、労働者に周知しなければならない。
(5)事業者は、労働者の健康管理を適切に行うため、産業医に対し、法定労働時間を超えて労働させた全ての労働者について、その氏名及び時間外・休日労働時間に関する情報を提供するとともに、労働者の業務に関する情報で産業医が必要と認めるものを提供しなければならない。
このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2021年度(令和3年度) | 問01 | 難易度 | 産業医、衛生管理者の選任義務、安全衛生委員会は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。 |
---|---|---|---|
労働安全衛生管理体制 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問1 事業場の安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか
なお、(5)において法定労働時間は、休憩時間を除き1日について8時間、1週間について 40 時間であり、時間外・休日労働時間は、休憩時間を除き1週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間とする。
(1)常時使用する労働者が 300 人又はこれを超えることとなった自動車整備業の事業場では、事業の実施を統括管理する者又はこれに準ずる者のうちから総括安全衛生管理者を選任する必要があり、その選任は総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から 14 日以内に行わなければならない。
(2)常時 50 人以上の労働者を使用する事業場において選任すべき産業医は、医師であって厚生労働大臣の指定する大学等が行う産業医研修等を修了した者又は保健衛生若しくは労働衛生工学の区分により労働衛生コンサルタント試験に合格した者でなければならない。
(3)常時 250 人の労働者を使用する医療業の事業場では、衛生管理者を2人以上選任することが必要で、その衛生管理者は原則として当該事業場に専属であって、第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は医師、歯科医師若しくは労働衛生コンサルタントでなければならない。
(4)常時使用する労働者が 100 人で、安全衛生委員会を設置した事業場では、当該委員会を毎月1回以上開催し、その開催の都度、委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容に係る記録を作成して、これを各作業場に備え付ける等の方法で、遅滞なく、労働者に周知しなければならない。
(5)事業者は、労働者の健康管理を適切に行うため、産業医に対し、法定労働時間を超えて労働させた全ての労働者について、その氏名及び時間外・休日労働時間に関する情報を提供するとともに、労働者の業務に関する情報で産業医が必要と認めるものを提供しなければならない。
正答(3)
【解説】
本年の労働衛生法令は、最初の問1から誤答の方が多い結果となってしまった。多くの受験生は、(1)、(2)及び(5)が誤りだとは分かっただろう。そして、正しい肢である(3)を誤りだと思って、よく分からない(4)を正答と選んだのではないだろうか。
正答の(3)は「衛生管理者は原則として事業場に専属でなければならない」として、その正誤を問うものである。受験生の多くは、複数の衛生管理者がいる場合に衛生コンサルタントである衛生管理者のうち1名は専属でなくてもよいことを知っていたのであろう。そのために(3)を誤りだと考えたのではないだろうか。
試験協会には「ひっかけ問」という意識はなかったと思う。衛生コンサルタントである非専属の衛生管理者は現実には少数派だということを別としても、法令の問題である以上、文章は厳格に読まなければならないのである。
(1)誤り。総括安全衛生管理者を選任すべき事業場では、安衛法第10条第2項により、総括安全衛生管理者にはその事業の実施を統括管理する者をもって充てなければならない。準じるものは認められていない。
衛生委員会等の議長と混同してはいけない。衛生委員会等の議長は、1月に1回の会議に出席しなければならず、事業場のトップが付くことは困難だという経営者側の意見に配慮したものである。しかし、職場の安全衛生の最終的な責任を負うべき者はトップでなければならないのである。
なお、自動車整備業の 300 人以上の事業場で総括安全衛生管理者を選任しなければならないことは、安衛法第10条及び安衛令第2条(第二号)により正しい。また、その選任は総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から 14 日以内に行わなければならないことも安衛則第2条第1項により正しい。
【労働安全衛生法】
(総括安全衛生管理者)
第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
一~五 (略)
2 総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければならない。
3 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)
第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第10条第1項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。
一 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 100人
二 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 300人
三 その他の業種 1,000人
【労働安全衛生規則】
(総括安全衛生管理者の選任)
第2条 法第10条第1項の規定による総括安全衛生管理者の選任は、総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に行なわなければならない。
2 (略)
(2)誤り。安衛法第13条第2項の産業医の要件として、安衛則第14条第2項第三号は「労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの」を挙げる。
「労働衛生工学の区分」は認められていない。産業医の職務は、安衛法第13条第1項に示されているように労働者の健康管理等であり、労働衛生工学の分野の知識があるだけでは十分とは言えないのである。
なお、「厚生労働大臣の指定する大学等が行う産業医研修等を修了した者」とあるのは正しい。「産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの」なども認められている。
※ ところで、本肢の文章には違和感を受ける。もし、本肢が正しいのであれば、「保健衛生若しくは労働衛生工学の区分により労働衛生コンサルタント試験に合格した者」は、「労働衛生コンサルタント試験に合格した者」と書けばよいはずである。労働衛生コンサルタント試験に、「保健衛生若しくは労働衛生工学の区分」以外の区分はないからである。
そこで、オリジナルの条文に、何かを付け加えて誤りの肢としたのではないかと見当をつけることができるのである。このような違和感を受ける文章の肢は、誤りの肢である可能性が高いというのもヒントにはなろう。
【労働安全衛生法】
(産業医等)
第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
2 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。
3~6 (略)
【労働安全衛生規則】
(産業医及び産業歯科医の職務等)
第14条 (第1項 略)
2 法第十三条第二項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。
一 法第十三条第一項に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」という。)を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
二 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの
三 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
四 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあつた者
五 前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者
3~7 (略)
(3)正しい。本肢の事業場は医療業であるから、安衛則第7条第1項第三号イにより、衛生管理者は、第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は医師、歯科医師若しくは労働衛生コンサルタントから選任しなければならない。また、同項第四号により2人の選任が必要である。そして、衛生管理者は原則として専属でなければならない。
本肢について、複数の衛生管理者を選任する場合は、衛生コンサルタントである衛生管理者一人については専属でなくともよいので、多くの受験者が本肢は誤りだと考えたようである。しかし、本肢に「原則として」とあることから正しいと判断される。なお、安衛則第10条第4号は、医療業には関係のないことである。
【労働安全衛生法】
(衛生管理者)
第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 (略)
【労働安全衛生規則】
(衛生管理者の選任)
第7条 法第12条第1項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 (略)
二 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合において、当該衛生管理者の中に第10条第三号に掲げる者がいるときは、当該者のうち1人については、この限りでない。
三 次に掲げる業種の区分に応じ、それぞれに掲げる者のうちから選任すること。
イ 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第十条各号に掲げる者
ロ その他の業種 第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第10条各号に掲げる者
四 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。
事業場の規模 (常時使用する労働者数) |
衛生管理者数 |
---|---|
50人以上200人以下 | 1人 |
200人を超え500人以下 | 2人 |
500人を超え1,000人以下 | 3人 |
1,000人を超え2,000人以下 | 4人 |
2,000人を超え3,000人以下 | 5人 |
3,000人を超える場合 | 6人 |
五及び六 (略)
2 (略)
(衛生管理者の資格)
第10条 法第12条第1項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。
一 医師
二 歯科医師
三 労働衛生コンサルタント
四 前三号に掲げる者のほか、厚生労働大臣の定める者
(4)誤り。「委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容」は安衛則第23条第4項により記録して3年間保存しなければならないが、その内容を労働者に周知しなければならないわけではない。
労働者に周知しなければならないのは、同条第3項により「委員会における議事の概要」である。このことは覚えておく必要がある。
【労働安全衛生規則】
(委員会の会議)
第23条 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月1回以上開催するようにしなければならない。
2 (略)
3 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知させなければならない。
一 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。
二 書面を労働者に交付すること。
三 事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体をいう。以下同じ。)をもつて調製するファイルに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
4 事業者は、委員会の開催の都度、次に掲げる事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。
一 委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容
二 前号に掲げるもののほか、委員会における議事で重要なもの
5 (略)
※ 安衛則第 23 条第3項第三号は出題当時の条文は以下のようになっていた。現在は、上記のように改正されているが、本肢の正誤に影響はない。
三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
(5)誤り。安衛法第13条第4項により産業医に提供しなければならない情報は、安衛則第14条の2第1項に定められている。そのひとつは、法定労働時間を80時間を超えた労働者の氏名及び超えた時間に関する時間等の情報である。法定時間を超えて労働させたすべての者についての情報ではない。
【労働安全衛生法】
(産業医等)
第13条 (第1項~第3項 略)
4 産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。
5及び6 (略)
【労働安全衛生規則】
(産業医に対する情報の提供)
第14条の2 法第13条第4項の厚生労働省令で定める情報は、次に掲げる情報とする。
一 (略)
二 第52条の2第1項、第52条の7の2第1項又は第52条の7の4第1項の超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報。
三 (略)
2 (略)
(面接指導の対象となる労働者の要件等)
第52条の2 法第66条の8第1項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。ただし、次項の期日前1月以内に法第66条の8第1項又は第66条の8の2第1項に規定する面接指導を受けた労働者その他これに類する労働者であつて法第66条の8第1項に規定する面接指導(以下この節において「法第66条の8の面接指導」という。)を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。
2及び3 (略)
(法第六十六条の八の二第一項の厚生労働省令で定める時間等)
第52条の7の2 法第66条の8の2第1項の厚生労働省令で定める時間は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間について、1月当たり100時間とする。
2 (略)
(法第六十六条の八の四第一項の厚生労働省令で定める時間等)
第52条の7の4 法第66条の8の4第1項の厚生労働省令で定める時間は、1週間当たりの健康管理時間(労働基準法(昭和22年法律第49号)第41条の2第1項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1月当たり100時間とする。
2 (略)