労働衛生コンサルタント試験 2021年 労働衛生一般 問16

鉛及びその化合物による健康影響




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 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年度(令和3年度) 問16 難易度 鉛及びその化合物による中毒は過去問は少ない。ただ正答率は高かった。
鉛及びその化合物

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問16 鉛及びその化合物による中毒に関する次の記述のうち、誤っているものれか。

(1)とう骨神経麻により垂れ手を引き起こす。

(2)腎臓、中枢神経系への有害作用がある。

(3)血液検査による指標としてアミノレブリン酸脱水酵素活性の低下がある。

(4)貧血に伴って顔面のそう白、疲れやすさなどの症状がみられることがある。

(5)尿検査による指標としてコプロポルフィリンの排出低下がある。

正答(5)

【解説】

問16試験結果

試験解答状況
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(1)正しい。鉛中毒のひとつとして、末梢神経障害がある。成人ではとう骨神経麻を起こしやすく垂れ手を引き起こすことがある。

江戸時代に女性の化粧品(白粉)に鉛が使われたことがあり、花柳界の女性が鉛中毒となることがあった。当時の幽霊絵で垂れ手となっているものがあるが、これは鉛中毒で亡くなった女性の生前の姿のイメージであるという説がある。

(2)正しい。鉛の政府のモデルSDSで、「特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)」は「区分1(造血系、腎臓、中枢神経系、末梢神経系、心血管系、免疫系)」となっている。

(3)正しい。昭和46年7月28日基発第550号「鉛、その合金又は化合物(四アルキル鉛を除く。)による疾病の認定基準について」に示された鉛中毒の生体モニタリング法は、血液中の鉛濃度を調べる方法と、ポルフィリン代謝過程に及ぼす影響の程度を調べる方法に大別できる。後者のひとつに赤血球中のδ-アミノレブリン酸脱水酵素活性の低下を調べる方法がある(※)

※ 清田郁子「赤卑球デルタアミノレブリン酸脱水酵素活性に及ぼす鉛曝露の影響」(生活衛生 Vol.36 No.6 1992年)参照

(4)正しい。血液鉛濃度が80μg/100gを超えると、「貧血に伴って顔面の蒼白ないし蝋様変化(鉛蒼白、鉛顔貌)、易疲労、神経過敏、頭痛などが見られる(※)とされる。

※ 千葉百子「鉛に関する基礎的知識」(食品安全委員会WEBサイト)

(5)誤り。鉛中毒ではヘム合成の異常がみられ、個体差もあるが、赤血球・血漿・尿・糞便などにポルフィリンの中間代謝物が増加する。鉛による生体反応では、顕著に尿中のコプロポルフィリン量の増加がみられる。

2021年11月26日執筆