労働衛生コンサルタント試験 2021年 労働衛生一般 問05

電離放射線の人体影響




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 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年度(令和3年度) 問05 難易度 電離放射線の人体影響に関する基本的な知識問題である。過去に類問も多く、正答率も高い。
電離放射線の人体影響

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問5 電離放射線の人体影響に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)胎児への影響として、奇形の発生がある。

(2)リンパ組織は放射線感受性が非常に高い組織である。

(3)放射線による発がんについては、被ばく線量を下げても発生率をゼロにはできない。

(4)放射線被ばくによる影響として、感染に対する抵抗力の低下がある。

(5)放射線の確定的影響である白内障は、被ばく後、数週間以内に症型が現れる。

正答(5)

【解説】

問5試験結果

試験解答状況
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(1)正しい。電離放射線の胎児への影響として、奇形の発生がある。環境省(※)は、「胎児期は放射線感受性が高く、また影響の出方に時期特異性があることが分かっています。妊娠のごく初期(着床前期)に被ばくすると、流産が起こることがあります。この時期を過ぎてからの被ばくでは、流産の可能性は低くなりますが、赤ちゃんの体が形成される時期(器官形成期)に被ばくすると、器官形成異常(奇形)が起こることがあります」としている。

※ 環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和元年度版)」の「第3章 放射線による健康被害」の「3.5 胎児への影響」の「胎児への影響 確定的影響と時期特異性

(2)正しい。ベルゴニー・トリボンドの法則によれば、細胞分裂頻度が高く、将来、細胞分裂の回数が大きく、形態及び機能的に未分化である組織は、放射線感受性が高いとされる。前述した環境省の資料(※)でもリンパ組織は放射線感受性が非常に高い組織であるとしている。

※ 環境省の前記資料の第3章の「3.2 人体影響の発生機構」の「臓器・組織の放射線感受性

(3)正しい。これについては争いがないわけではないが、前述した環境省の資料(※)では「放射線防護において、確率的影響にはしきい線量はないと仮定されています。この仮定に基づくと理論上どんなに低い線量でも影響が発生する確率はゼロではないことになります」としている。

※ 環境省の前記資料の第3章の「3.1 人体への影響」の「確定的影響と確率的影響

放射線による発がんが確率的影響であることについては、(5)の解説を参照されたい。

なお、東京電力が運営資金を負担している電力中央研究所は、「実際には、広島・長崎の原爆被爆者を対象とした膨大なデータをもってしても、100ミリシーベルト程度よりも低い線量では発がんリスクの有意な上昇は認められていません。これよりも低い線量域では、発がんリスクを疫学的に示すことができないということです」として、閾値がないことは確認されていないと強調している。しかし、これは「健康影響のおそれが不明なものは、有害性が確実ではないという理由でそのリスクを軽視してはならない」という安全の基本原則から逸脱しており、是認することはできない。

※ 電力中央研究所「LNT(しきい値なし直線)仮説について

(4)正しい。放射線被ばくによる影響として、感染に対する抵抗力の低下がある(※)

※ (公財)放射線影響研究所「免疫系に及ぼす影響」などを参照されたい。

(5)誤り。電離放射線による健康への影響は、確定的影響と確率的影響に分けられる。確定的影響では、線量が大きいほど障害の程度が重篤となり、しきい値がある。一方、確率的影響では、線量が大きいほど障害に罹患する確率が高くなり、しきい値がないと考えられている。

一方、被爆から発症までが数週間までのものを急性影響と呼び、数か月以上のものを晩発性影響と呼ぶ。電離放射線による晩発性影響は確率的影響であることが多いが例外もある。

例外の一つが本肢で問われている白内障である。白内障は、挽発性影響ではあるが、放射線白内障の重篤度や潜伏期間の長さ、進行の速さは、被ばく線量に依存するとされており、確定的影響なのである。なお、2017年問4の(1)などに類問がある。

受験対策としては、急性影響、白内障及び不妊が確定的影響であると覚えておけばよい。確率的影響としては、白血病、がん、遺伝的障害がある。これについて前述の環境省に分かりやすい資料がある。

※ 環境省の前記資料の第3章の「3.1 人体への影響」の「影響の種類

2021年11月23日執筆