労働衛生コンサルタント試験 2020年 労働衛生関係法令 問14

特定化学物質障害予防規則




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合格

 このページは、2020年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年度(令和2年度) 問14 難易度 特化則は、2017年以降は毎年出題される。前年は基本的な内容だが、この年はやや詳細な内容。
特定化学物質

問14 特定化学物質の製造等に係る措置に関する次の記述のうち、特定化学物質障害予防規則上、誤っているものはどれか。ただし、同規則に定める適用除外はないものとする。

(1)特定第二類物質を製造する設備については、原則として、密閉式の構造のものとしなければならない。

(2)管理第二類物質を製造する作業場の床は、耐腐食性の材料で造らなければならない。

(3)特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業のうち、特別有機溶剤業務に係る作業(試験研究のために取り扱う作業を除く。)については、有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者のうちから特定化学物質作業主任者を選任しなければならない。

(4)特別管理物質を製造する作業場には、特別管理物質の名称、特別管理物質の人体に及ぼす作用、特別管理物質の取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならない。

(5)第一類物質を製造しようとする者は、あらかじめ、当該物ごとに、かつ、当該物を製造するプラントごとに、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

正答(2)

【解説】

特定化学物質の分類

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(1)正しい。特定化学物質は、かなり複雑に分類されている。特定第二類物質は、第二類物質のうち漏洩した場合に急性中毒になるおそれのあるものという観点からグループ分けされている物質である。

特化則第4条第1項の規定により、特定第二類物質を製造する設備については、原則として、密閉式の構造のものとしなければならない。なお、「原則として」とあるのは、第3項に例外規定があるからである。

【特定化学物質障害予防規則】

(第二類物質の製造等に係る設備)

第4条 事業者は、特定第二類物質又はオーラミン等(以下「特定第二類物質等」という。)を製造する設備については、密閉式の構造のものとしなければならない。

 事業者は、その製造する特定第二類物質等を労働者に取り扱わせるときは、隔離室での遠隔操作によらなければならない。ただし、粉状の特定第二類物質等を湿潤な状態にして取り扱わせるときは、この限りでない。

 (略)

 事業者は、その製造する特定第二類物質等を計量し、容器に入れ、又は袋詰めする作業を行う場合において、第1項及び第2項の規定によることが著しく困難であるときは、当該作業を当該特定第二類物質等が作業中の労働者の身体に直接接触しない方法により行い、かつ、当該作業を行う場所に囲い式フードの局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

 (略)

※ 出題当時は、現在の第3項及び第5項はなく、現在の第4項が第3項で「第一項及び第二項」は「前2項」とされていた。

(2)誤り。管理第二類物質を製造する作業場の床は、特化則第21条の規定により「不浸透性の材料で造らなければならない」が、耐腐食性の材料で造らなければならないわけではない。

【特定化学物質障害予防規則】

(床)

第21条 事業者は、第一類物質を取り扱う作業場(第一類物質を製造する事業場において当該第一類物質を取り扱う作業場を除く。)、オーラミン等又は管理第二類物質を製造し、又は取り扱う作業場及び特定化学設備を設置する屋内作業場の床を不浸透性の材料で造らなければならない。

(3)正しい。特化則第 27 条の規定により、特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業のうち、特別有機溶剤業務に係る作業(試験研究のために取り扱う作業を除く。)については、有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者のうちから特定化学物質作業主任者を、原則として選任しなければならない。

【留意事項】

特別有機溶剤について、有機則による規制から特化則による規制に改正したとき、それまでの「有機則で適用していた範囲」は「特化則が適用する範囲」よりも、かなり狭かった。このため、この改正によって規制の範囲が広がることを避けるために、有機則が適用していた作業の範囲や各種の適用除外規定を、そのまま特化則に持ち込んだのである(※)

※ その一方で、特別有機溶剤が「有機溶剤ではない」ことになると、(特別有機溶剤と改正後の有機則の有機溶剤を併せて5wt%を超えて含有する)混合物が濃度の関係で有機溶剤の規制から外れるおそれがあった。そこで、これを避けるための規定も設けている。このため、現在の特化則は、きわめて複雑な内容となってしまった。

そのため、特別有機溶剤業務に係る作業(試験研究のために取り扱う作業を除く。)については、作業主任者の選任についても例外規定がある。それが安衛令第6条第十八号のカッコ書きの「及び」以下の部分と、特化則第27条第2項である。それを考えると、本肢に肢(1)のような「原則として」の記述がないのは、やや疑問と言わざるを得ない。

なお、この改正のときに、作業主任者も「有機溶剤作業主任者技能講習」の修了者を当てることにされた。これにより、それまで有機溶剤作業主任者をしていた者が、新たに特定化学物質作業主任者技能講習を受けなくても、そのまま特別有機溶剤を取り扱う作業の特定化学物質作業主任者として、作業主任者に就任できることとなった。このことも覚えておくこと。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(作業主任者を選任すべき作業)

第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

一~十七 (略)

十八 別表第三に掲げる特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業及び同表第二号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の2に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の2に係るものを製造し、又は取り扱う作業で厚生労働省令で定めるものを除く。)

十九~二十三 (略)

【特定化学物質障害予防規則】

(特定化学物質作業主任者の選任)

第27条 事業者は、令第6条第十八号の作業については、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習(次項に規定する金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習を除く。第51条第1項及び第3項において同じ。)(特別有機溶剤業務に係る作業にあつては、有機溶剤作業主任者技能講習)を修了した者のうちから、特定化学物質作業主任者を選任しなければならない。

 (略)

 令第6条第十八号の厚生労働省令で定めるものは、次に掲げる業務とする。

 第2条の2各号に掲げる業務

 第38条の8において準用する有機則第2条第1項及び第3条第1項の場合におけるこれらの項の業務(別表第一第三十七号に掲げる物に係るものに限る。)

※ 特化則第 27 条は出題当時の条文は以下のようになっていた。現在は、上記のように改正されているが、現行の第1項と第3項は、特別有機溶剤業務に係る作業に関しては実質的に改正前と同じ趣旨であり、本肢の正誤に影響はない。

(特定化学物質作業主任者の選任)

第27条 事業者は、令第6条第十八号の作業については、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習(特別有機溶剤業務に係る作業にあつては、有機溶剤作業主任者技能講習)を修了した者のうちから、特定化学物質作業主任者を選任しなければならない。

 令第6条第十八号の厚生労働省令で定めるものは、次に掲げる業務とする。

 第2条の2各号に掲げる業務

 第38条の8において準用する有機則第2条第1項及び第3条第1項の場合におけるこれらの項の業務(別表第一第三十七号に掲げる物に係るものに限る。)

(4)正しい。特化則第 38 条の3により、特別管理物質を製造する作業場には、特別管理物質の名称、特別管理物質の人体に及ぼす作用、特別管理物質の取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならない。

【特定化学物質障害予防規則】

(掲示)

第38条の3 事業者は、特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業場には、次の事項を、見やすい箇所に掲示しなければならない。

 特定化学物質の名称

 特定化学物質により生ずるおそれのある疾病の種類及びその症状

 特定化学物質の取扱い上の注意事項

 次条に規定する作業場(次号に掲げる場所を除く。)にあつては、使用すべき保護具

 次に掲げる場所にあつては、有効な保護具を使用しなければならない旨及び使用すべき保護具

 第6条の2第1項の許可に係る作業場(同項の濃度の測定を行うときに限る。)

 第6条の3第1項の許可に係る作業場であつて、第三十六条第一項の測定の結果の評価が第三十六条の二第一項の第一管理区分でなかつた作業場及び第一管理区分を維持できないおそれがある作業場

 第22条第1項第十号の規定により、労働者に必要な保護具を使用させる作業場

 第22条の2第1項第六号の規定により、労働者に必要な保護具を使用させる作業場

 金属アーク溶接等作業を行う作業場

 第36条の3第1項の場所

 第36条の3の2第4項及び第5項の規定による措置を講ずべき場所

 第38条の7第1項第二号の規定により、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させる作業場

 第38条の13第3項第二号に該当する場合において、同条第四項の措置を講ずる作業場

 第38条の20第2項各号に掲げる作業を行う作業場

 第44条第3項の規定により、労働者に保護眼鏡並びに不浸透性の保護衣、保護手袋及び保護長靴を使用させる作業場

※ 特化則第 38 条の3は出題当時の条文は以下のようになっていた。現在は、上記のように改正されている。掲示すべき物質の範囲が特別管理物質から特定化学物質全体に拡がっているが、本肢は正しいとしてよい。

(掲示)

第38条の3 事業者は、第一類物質(塩素化ビフエニル等を除く。)又は令別表第三第二号3の2から6まで、8、8の2、11から12まで、13の2から15の2まで、18の2から19の5まで、21、22の2から22の5まで、23の2から24まで、26、27の2、29、30、31の2、32、33の2若しくは34の2に掲げる物若しくは別表第一第三号の二から第六号まで、第八号、第八号の二、第十一号から第十二号まで、第十三号の二から第十五号の二まで、第十八号の二から第十九号の五まで、第二十一号、第二十二号の二から第二十二号の五まで、第二十三号の二から第二十四号まで、第二十六号、第二十七号の二、第二十九号、第三十号、第三十一号の二、第三十二号、第三十三号の二若しくは第三十四号の二に掲げる物(以下「特別管理物質」と総称する。)を製造し、又は取り扱う作業場(クロム酸等を取り扱う作業場にあつては、クロム酸等を鉱石から製造する事業場においてクロム酸等を取り扱う作業場に限る。次条において同じ。)には、次の事項を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならない。

 特別管理物質の名称

 別管理物質の人体に及ぼす作用

 特別管理物質の取扱い上の注意事項

 使用すべき保護具

(5)正しい。安衛法第 56 条第1項(及び安衛令第17条)により、第一類物質を製造しようとする者は、あらかじめ、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。そして、その許可は特化則第 48 条により、当該物ごとに、かつ、当該物を製造するプラントごとに行わなければならない。

【労働安全衛生法】

(製造の許可)

第56条 ジクロルベンジジン、ジクロルベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある物で、政令で定めるものを製造しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

2~6 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(製造の許可を受けるべき有害物)

第17条 法第56条第1項の政令で定める物は、別表第三第一号に掲げる第一類物質及び石綿分析用試料等とする。

別表第三 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)

 第一類物質

1~8 (略)

二~三 (略)

【特定化学物質障害予防規則】

(製造の許可)

第48条 法第56条第1項の許可は、令別表第三第一号に掲げる物ごとに、かつ、当該物を製造するプラントごとに行なうものとする。

2020年12月19日執筆 2024年11月08日法令改正により改訂