問9 長時間労働者に対して事業者が行う面接指導に関する次のイ~ニの記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみを挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
なお、時間外・休日労働時間とは、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間をいうものとする。
イ 労働者は、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合は、あらかじめその旨を書面で事業者に提出しなければならない。
ロ 事業者は、時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた全ての労働者に対し、医師による面接指導を行わなければならない。
ハ 事業者が面接指導を実施するために行う労働時間の状況の把握は、タイムカードによる記録のほか、パーソナルコンピュータの使用時間の記録によることもできる。
ニ 事業者は、面接指導の結果に基づき、実施年月日、労働者の氏名、面接指導を行った医師の氏名、労働者の疲労の蓄積の状況、労働者の心身の状況及び面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見を記載した記録を作成して、これを7年間保存しなければならない。
(1)イ ハ
(2)イ ニ
(3)ロ
(4)ロ ニ
(5)ハ
このページは、2020年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2020年度(令和2年度) | 問09 | 難易度 | 長時間労働者への面接指導は3年続けての出題。今後も重要と思われ、正答できるようにしたい。 |
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長時間労働者の面接指導 | 2 |
問9 長時間労働者に対して事業者が行う面接指導に関する次のイ~ニの記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみを挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
なお、時間外・休日労働時間とは、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間をいうものとする。
イ 労働者は、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合は、あらかじめその旨を書面で事業者に提出しなければならない。
ロ 事業者は、時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた全ての労働者に対し、医師による面接指導を行わなければならない。
ハ 事業者が面接指導を実施するために行う労働時間の状況の把握は、タイムカードによる記録のほか、パーソナルコンピュータの使用時間の記録によることもできる。
ニ 事業者は、面接指導の結果に基づき、実施年月日、労働者の氏名、面接指導を行った医師の氏名、労働者の疲労の蓄積の状況、労働者の心身の状況及び面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見を記載した記録を作成して、これを7年間保存しなければならない。
(1)イ ハ
(2)イ ニ
(3)ロ
(4)ロ ニ
(5)ハ
正答(5)
【解説】
イ 誤り。安衛法第66条の8第2項本文により、労働者は、原則として事業者の指定した医師が行う面接指導を受けなければならない。これを希望しない場合は、同項但書により、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受けて、その結果を証明する書面を事業者に提出すればよく、あらかじめその旨を書面で事業者に提出する必要はない。
なお、安衛則第52条の3第1項により、(実施の方法として)面接指導は労働者の申し出によって行われるため、この申し出を労働者が行わなければ、結果的にその労働者は面接指導を受けることはないこととなる。この条文は、安衛法第66条の8第2項本文を有名無実化しているのである。
【労働安全衛生法】
(面接指導等)
第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。
2 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
3~5 (略)
【労働安全衛生規則】
(面接指導の実施方法等)
第52条の3 法第六十六条の八の面接指導は、前条第一項の要件に該当する労働者の申出により行うものとする。
2 前項の申出は、前条第二項の期日後、遅滞なく、行うものとする。
3 事業者は、労働者から第一項の申出があつたときは、遅滞なく、法第六十六条の八の面接指導を行わなければならない。
4 (略)
ロ 誤り。安衛法第66条の8の面接指導の対象者は、安衛則第第52条の2第1項の規定により、医師による面接指導の対象となるのは、時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超え、「かつ、疲労の蓄積が認められる者」である。また、同項但書により、一定の者は除かれている。
また、安衛法第66条の8の2の労働者(新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務に従事する労働者)及び安衛法第66条の8の2の労働者(高度プロフェッショナル制度の対象者)については、安衛法第66条の8の対象から除かれているが、これらの者の面接指導については時間外・休日労働時間が1か月当たり100時間を超える者が対象となる。
従って、時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた全ての労働者に対し、医師による面接指導を行わなければならないわけではない。
【労働安全衛生法】
(面接指導等)
第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第1項に規定する者及び第66条の8の4第1項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。
2~5 (略)
第66条の8の2 事業者は、その労働時間が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超える労働者(労働基準法第36条第11項に規定する業務に従事する者(同法第41条各号に掲げる者及び第66条の8の4第1項に規定する者を除く。)に限る。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
2 (略)
第66条の8の4 事業者は、労働基準法第41条の2第1項の規定により労働する労働者であつて、その健康管理時間(同項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が当該労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
2 (略)
【労働安全衛生規則】
(面接指導の対象となる労働者の要件等)
第52条の2 法第66条の8第1項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。ただし、次項の期日前1月以内に法第66条の8第1項又は第66条の8の2第1項に規定する面接指導を受けた労働者その他これに類する労働者であつて法第66条の8第1項に規定する面接指導(以下この節において「法第66条の8の面接指導」という。)を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。
2及び3 (略)
第52条の7の2 法第66条の8の2第1項の厚生労働省令で定める時間は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間について、1月当たり100時間とする。
2 (略)
第52条の7の4 法第66条の8の4第1項の厚生労働省令で定める時間は、1週間当たりの健康管理時間(労働基準法(昭和22年法律第49号)第41条の2第1項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1月当たり100時間とする。
2 (略)
ハ 正しい。安衛則第52条の7の3により、事業者が面接指導を実施するために行う労働時間の状況の把握は、タイムカードによる記録のほか、パーソナルコンピュータの使用時間の記録によることもできる。
【労働安全衛生法】
第66条の8の3 事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。
【労働安全衛生規則】
(法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法等)
第52条の7の3 法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。
2 (略)
ニ 誤り。安衛則第52条の6により、事業者は、面接指導の結果に基づき、実施年月日、労働者の氏名、面接指導を行った医師の氏名、労働者の疲労の蓄積の状況、労働者の心身の状況及び面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見を記載した記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。7年間ではない。
【労働安全衛生法】
(面接指導等)
第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。
2 (略)
3 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項及び前項ただし書の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。
4及び5 (略)
【労働安全衛生規則】
(面接指導結果の記録の作成)
第52条の5 (柱書 略)
一 実施年月日
二 当該労働者の氏名
三 法第六十六条の八の面接指導を行つた医師の氏名
四 当該労働者の疲労の蓄積の状況
五 前号に掲げるもののほか、当該労働者の心身の状況
(面接指導結果の記録の作成)
第52条の6 事業者は、法第六十六条の八の面接指導(法第六十六条の八第二項ただし書の場合において当該労働者が受けたものを含む。次条において同じ。)の結果に基づき、当該法第六十六条の八の面接指導の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。
2 前項の記録は、前条各号に掲げる事項及び法第六十六条の八第四項の規定による医師の意見を記載したものでなければならない。