労働衛生コンサルタント試験 2020年 労働衛生関係法令 問03

じん肺健康診断




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合格

 このページは、2020年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年度(令和2年度) 問03 難易度 じん肺健康診断は2年に1回程度の出題だが範囲が限定されている。確実に正答できるようにしたい。
じん肺健康診断

問3 粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断に関する次の記述のうち、じん肺法令上、正しいものはどれか。

(1)じん肺管理区分は、じん肺健康診断の結果に基づき、管理1、管理2、管理3(イ及びロ)及び管理4に区分されるが、胸部のエックス線写真の像における大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められる者は管理3ロとなる。

(2)事業者は、都道府県労働局長から、常時粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断の結果に基づいて決定されたじん肺管理区分の通知を受けたときは、遅滞なく、当該労働者に対して、その者について決定されたじん肺管理区分及びその者が留意すべき事項を通知しなければならない。

(3)事業者は、常時粉じん作業に従事する労働者で、じん肺管理区分が管理3又は管理4である者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。

(4)事業者は、常時粉じん作業に従事する労働者で、じん肺管理区分が管理1又は管理2である者に対して、3年以内ごとに1回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。

(5)事業者は、常時粉じん作業に従事する労働者に対して行ったじん肺健康診断に関する記録を作成するとともに、当該記録及びじん肺健康診断に係るエックス線写真を5年間保存しなければならない。

正答(2)

【解説】

(1)誤り。じん肺管理区分は、じん肺健康診断の結果に基づき、管理1、管理2、管理3(イ及びロ)及び管理4に区分されることは正しい。

しかし、胸部のエックス線写真の像における大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下かどうかにかかわらず、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められる者は管理4となる。

【じん肺法】

(エックス線写真の像及びじん肺管理区分)

第4条 じん肺のエックス線写真の像は、次の表の下欄に掲げるところにより、第一型から第四型までに区分するものとする。

エックス線写真の像
第一型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第二型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第三型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第四型 大陰影があると認められるもの

 粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であつた者は、じん肺健康診断の結果に基づき、次の表の下欄に掲げるところにより、管理一から管理四までに区分して、この法律の規定により、健康管理を行うものとする。

じん肺管理区分 じん肺健康診断の結果
管理一 じん肺の所見がないと認められるもの
管理二 エックス線写真の像が第一型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理三 エックス線写真の像が第二型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
エックス線写真の像が第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理四

(1)エックス線写真の像が第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一を超えるものに限る。)と認められるもの

(2)エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの

(2)正しい。じん肺法第 14 条第2項により、事業者は、都道府県労働局長から、常時粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断の結果に基づいて決定されたじん肺管理区分の通知を受けたときは、遅滞なく、当該労働者に対して、その者について決定されたじん肺管理区分及びその者が留意すべき事項を通知しなければならない。

【じん肺法】

(通知)

第14条 都道府県労働局長は、前条第2項の決定をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を当該事業者に通知するとともに、遅滞なく、第12条又は前条第3項若しくは第4項の規定により提出されたエックス線写真その他の物件を返還しなければならない。

 事業者は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者(厚生労働省令で定める労働者であつた者を含む。)に対して、その者について決定されたじん肺管理区分及びその者が留意すべき事項を通知しなければならない。

 (略)

(3)誤り。事業者は、じん肺法第8条第1項により、常時粉じん作業に従事する労働者で、じん肺管理区分が管理2又は管理3である者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。

管理四である者は療養(医師による受療)をしているので、健康診断をする必要はなく、義務付けられていないのである。健康診断を義務付けている意味と、管理四である者は療養を要するという2点を結び付けて理解していないと、勘違いしてこういう問題を間違えることになる。なお、じん肺法第3条第1項は覚えておくこと。

管理区分 常時粉じん作業に
従事する労働者
常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもの
管理1 3年
管理2 1年 3年
管理3 1年 1年
管理4

【じん肺法】

(定期健康診断)

第8条 事業者は、次の各号に掲げる労働者に対して、それぞれ当該各号に掲げる期間以内ごとに一回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。

 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 三年

 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 一年

 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 三年

 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 一年

 (略)

(4)誤り。事業者は、じん肺法第8条第1項により、常時粉じん作業に従事する労働者で、じん肺管理区分が管理1である者に対して3年以内ごとに1回、管理2である者に対して1年以内ごとに1回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。

(5)誤り。事業者は、じん肺法第17条第1項により、常時粉じん作業に従事する労働者に対して行ったじん肺健康診断に関する記録を作成するとともに、同条第2項により、当該記録及びじん肺健康診断に係るエックス線写真を7年間保存しなければならない。

なお、法的な保存義務は7年であるが、粉じん則第6条の4の作業環境測定の記録、粉じん則第26条の2の測定結果の評価の記録、粉じん則第26条の3の2第5項の呼吸用保護具の装着の記録などの各種の記録とともに、永年保存した方がよい。

また、労働者の作業記録、健康管理措置、局所排気装置等の作業環境改善の措置等の記録も作成して永年保存すること。自社で粉じん対策を完璧に行っていても、労働者は自社以外の粉じん職場で働くこともある。そのため、本人の退職後に数十年を経て発症することもあり、民事訴訟を起こされることがある。そのような場合にこのような記録が必要になるからである。

【じん肺法】

(記録の作成及び保存等)

第17条 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、その行つたじん肺健康診断及び第11条ただし書の規定によるじん肺健康診断に関する記録を作成しなければならない。

 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の記録及びじん肺健康診断に係るエックス線写真を7年間保存しなければならない。

2020年12月12日執筆 2024年11月08日一部改訂