労働衛生コンサルタント試験 健康管理 2020年 問1

化学物質管理 化学物質による労働災害防止




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 このページは、2020年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。

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2020年度(令和2年度) 問 1 化学物質の有害性指標、化学物質による健康影響、適切な管理に関する基本的な知識を問う問題。
化学物質管理
2020年10月25日執筆

問1 化学物質管理に関する以下の設問に答えよ 。

  • (1)化学物質の有害性に関する次の①から④のそれぞれの二つの用語について、その違いを簡潔に説明せよ。
    ① 最小毒性量(LOAEL)と無毒性量(NOAEL)

    • 【解説】
      最小毒性量(LOAEL)、無毒性量(NOAEL)ともに、慢性毒性を調べるための動物試験などにおける有害性の程度を表す指標である。
      LOAELは動物試験等で有害な影響が認められた最低の投与量であり、NOAELは有害な影響が認められない最高の投与量である。
      すなわち、NOAELの方は影響が現れない投与量なので比較的確実性が高いが、LOAELは影響が現れない投与量が分からないので比較的信頼性が低い。そのため、ヒトに対する影響を推定するときは、NOAELが得られればNOAELを用い、LOAELはNOAELが得られない場合に用いる。
      また、ヒトに対する影響を推定するときの不確実係数(UF)の算定に当たって、安全のためにLOAELを使用する場合はディフォルトで10倍(NOAELは1倍)する。
      ※ 環境省「化学物質のリスク評価のためのガイドブック」(2007年)」に分かりやすい説明がある。
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    • 【解答例】
      最小毒性量(LOAEL)、無毒性量(NOAEL)ともに、慢性毒性を調べるための動物試験などにおける有害性の程度を表す指標である。
      LOAELは動物試験等で有害な影響が認められた最低の投与量であり、NOAELは有害な影響が認められない最高の投与量である。
      NOAELの方が信頼性が高いので、NOAELが得られればNOAELを用い、LOAELはNOAELが得られない場合に用いる。また、ヒトに対する影響を推定するときの不確実係数(UF)の算定に当たって、LOAELを使用する場合はディフォルトで10倍(NOAELは1倍)する。
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  •   ② 変異原性と発がん性

    • 【解説】
      変異原性とは生物の遺伝情報に不可逆的な変化を引き起こす性質のことであり、がん原性とはヒトにがんを生じさせる性質のことである。
      Ames他が、1975年に行った報告でがん原性と変異原性の間に相関がみられるとした。その後の研究で、がん原性のある物質の多くに変異原性が見られるため、安衛法では変異原性試験(Ames試験)をがん原性試験のスクリーニング試験として位置付けている。
      また、変異原性試験は、がん原性試験(動物実験)の優先順位の決定のためにも用いられている。
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    • 【解答例】
      変異原性とは生物の遺伝情報に不可逆的な変化を引き起こす性質のことであり、がん原性とはヒトにがんを生じさせる性質のことである。
      安衛法では変異原性試験(Ames試験)をがん原性試験のスクリーニング試験として位置付けている。また、変異原性試験は、がん原性試験(動物実験)の優先順位の決定のためにも用いられている。
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  •   ③ 刺激性と感作性

    • 【解説】
      皮膚刺激性とは皮膚に対する可逆的な炎症性の損傷があることをいい、眼刺激性とは21日内に完全に回復するような眼の変化を与えることをいう。
      皮膚感作性とは、接触によりアレルギー反応を誘発する性質を言う。
      このように、刺激性とは可逆的な損傷を与える性質をいい、感作性とはアレルギー反応を誘発する性質をいう。なお、腐食性とは、非可逆的な損傷を与えることをいう。
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    • 【解答例】
      刺激性とは比較的短期間で完全に治癒する損傷を与える性質をいう。感作性とは接触によりアレルギー反応を引き起こす性質をいう。
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  •   ④ 許容濃度と管理濃度

    • 【解説】
      許容濃度とは日本産業衛生学会が公表している濃度である。同学会によれば、「労働者が1日8時間。週間40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合に、当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度である」とされている。
      管理濃度とは、厚生労働省が作業環境評価基準別表に定めている濃度であり、有害物質に関する作業環境の状態を評価するために、作業環境測定の結果から作業環境管理の良否を判断するための指標である。
      現実には、管理濃度は許容濃度等を参考に定められるため、同じ値となっていることが多い。
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    • 【解答例】
      許容濃度とは日本産業衛生学会が提唱する職業暴露限界(OEL)である。労働者が1日8時間、1週40時間以内であれば、その濃度以下でばく露してもほとんどすべてのものに健康影響が現れないとされる濃度である。
      管理濃度は、厚生労働省が定めている濃度であり、作業環境測定の結果から作業環境管理の良否を判断するための指標である。
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  • (2)金属による健康障害に関する次の間に簡潔に答えよ 。
    ① 金属熱とはどのような健康障害か。

    • 【解説】
      金属熱とは、無機錫、亜鉛化合物、銅などのヒュームを吸引することによる職業性疾病のひとつである。溶接や合金製造など金属溶融を伴う作業で発症する他、塗装作業でも発症することがある。
      初期には口の渇きや金属味などの初期が現れる。やや進行すると、発熱の他、発汗、吐き気、脱力感、筋肉痛、倦怠感などの風邪のような症状が出る。比較的予後は良いとされ、ばく露から解放されると数日で回復し、後遺症もみられないといわれる。
      なお、金属熱に続発する疾病として、職業性喘息がある。
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    • 【解答例】
      無機錫、亜鉛化合物、銅などのヒュームを吸引することによる職業性疾病のひとつである。初期には口の渇きや金属味などの初期が現れる。やや進行すると、発熱の他、発汗、吐き気、脱力感、筋肉痛、倦怠感などの風邪のような症状が出る。
      比較的予後は良いとされるが、金属熱に続発する疾病として職業性喘息がある。
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  •   ② ベリリウムによる健康障害を二つ挙げよ。

    • 【解説】
      ベリリウムによる職業性疾病としては、がん(扁平上皮癌、腺癌)とベリリウム肺が挙げられる。なお、この他、呼吸器感作性や皮膚感作性も見られるが、2つを挙げるのであれば、これらを記述する必要はない。
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    • 【解答例】
      ベリリウムによる職業性疾病としては、がん(扁平上皮癌、腺癌)とベリリウム肺が挙げられる。
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  •   ③ 鉛による健康障害を三つ挙げよ 。

    • 【解説】
      問題が、金属鉛に限るのか鉛化合物を含めるのか、やや疑問はあるが明確に「鉛」と言い切っているのだから金属鉛として答えよう。
      金属鉛による健康障害は、択一(労働衛生一般)で何度も出題されている。
      鉛は、ひとつには、造血臓器に障害を与え血液のヘモグロビンの合成を阻害して貧血などををひき起こすこと、ふたつには、末梢神経の麻痺が挙げられる。このため、古くから知られる典型的な鉛中毒には、鉛蒼白、鉛縁、伸筋麻痺(垂れ手)、関節痛、鉛疵痛などがあるが、近年ではあまり発症しない(※)
      ※ 堀内一弥「鉛化合物による中毒」(安全工学、1954年)
      また、日本産業衛生学会は生殖毒性を第Ⅰ群(ヒトに生殖毒性を示すことが知られている)としている(※)
      ※ なお、発がん性については第Ⅱ群B(発がん性に関する証拠が比較的十分でない)としている。
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    • 【解答例 A案】
      鉛による健康障害としては、ヘモグロビンの合成阻害、末梢神経の麻痺、生殖毒性などが挙げられる。
      【解答例 B案】
      鉛による健康障害としては、鉛縁、伸筋麻痺(垂れ手)、鉛疵痛などが挙げられる。
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  •   ④ 鉛の生物学的モニタリング指標を二つ挙げよ。

    • 【解説】
      これは、鉛中毒予防規則の健診項目中の生物学的モニタリング指標で答えるべきだろう。鉛の生物学的モニタリングは血液中鉛濃度と赤血球中プロトポルフィリン濃度及び尿中デルタアミノレブリン酸濃度の測定である。
      なお、以下の表は試験までに覚えておくこと。
      物質名 検査内容
      トルエン 尿中馬尿酸
      キシレン 尿中メチル馬尿酸
      スチレン 尿中マンデル酸
      テトラクロルエチレン 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物
      1.1.1-トリクロルエタン 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物
      トリクロルエチレン 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物
      N.N-ジメチルホルムアミド 尿中N-メチルホルムアミド
      ノルマルヘキサン 尿中ヘキサンジオン
      血液中鉛、尿中デルタアミノレブリン酸
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    • 【解答例】
      鉛の生物学的モニタリング指標は、血液中鉛、尿中デルタアミノレブリン酸などがある。
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  • (3)オルト-トルイジンに関する次の間に簡潔に答えよ 。
    ① 発生するおそれのある健康障害は何か。

    • 【解説】
      いうまでもなく、オルト-トルイジンは、福井県の化学工場において膀胱がんの原因となったとされている化学物質である。発がん性の他、生殖細胞変異原性が確認されている。
      また、急性毒性として、頭痛、めまい、悪心、呼吸困難、意識喪失、神経障害、発汗、チアノーゼ、メトヘモグロビン血症、膀胱への強い刺激による血尿などが報告されている。
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    • 【解答例】
      慢性毒性として発がん性(膀胱がん)が確認されているほか、急性毒性として呼吸困難、意識喪失、神経障害、チアノーゼ、メトヘモグロビン血症などがみられる。
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  •   ② 健康障害を早期発見するための検査法を三つ挙げよ。

    • 【解説】
      問の趣旨がはっきりしないが、要は①で挙げた健康障害の早期発見のための検査法を3つ挙げよということであろう。
      なお、問われているのは「健康障害の早期発見の手法」であって、「健康障害のリスク発見の手法」ではない。従って、リスクアセスメントや、作業環境測定、生物学的モニタリングなどは正答にはならないと考えた方が良い。
      生物学的モニタリングでできることは、ばく露状況の把握であって、健康障害を早期に発見をすることはできない。
      以下に、オルト-トルイジン等の健康診断項目を挙げる(※)。この中から、健康障害の早期発見に役立つ検査項目を3つ挙げればよい。
      表1:一次健康診断
      <必須項目>
      業務の経歴の調査(業務従事労働者の健康診断に限る。)
      作業条件の簡易な調査(業務従事労働者の健康診断に限る。)
      作業条件の簡易な調査(業務従事労働者の健康診断に限る。)
      ③、④の具体的内容:頭重、頭痛、めまい、倦怠感、疲労感、顔面蒼白、チアノーゼ、心悸亢進、尿の着色、血尿、頻尿、排尿痛等
      ※ 下線部の急性症状は、業務従事労働者の健康診断に限る。
      他覚症状または自覚症状の有無の検査
      尿中の潜血検査
      <医師が必要と認める場合に行う検査項目>
      尿中のオルト-トルイジンの量の測定(業務従事労働者の健康診断に限る。)
      尿沈渣検鏡の検査
      尿沈渣のパパニコラ法による細胞診の検査
      表2:二次健康診断(※)
      <必須項目>
      作業条件の調査(業務従事労働者の健康診断に限る。)
      <医師が必要と認める場合に行う検査項目>
      膀胱鏡検査
      腹部の超音波による検査、尿路造影検査等の画像検査
      赤血球数、網状赤血球数、メトヘモグロビンの量等の赤血球系の血液検査(業務従事労働者の健康診断に限る。)
      ※ 二次健診は、一次健康診断の結果、医師が必要と認める場合に実施する。
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    • 【解答例】
      膀胱がんの早期発見の方法として、尿中の潜血検査、尿沈渣検鏡の検査、膀胱鏡検査等がある。
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  •   ③ 取り扱う作業者が着用すべき保護具を三つ挙げよ。

    • 【解説】
      経気道ばく露のみならず経皮ばく露が問題になっている化学物質なので、防毒マスク、不浸透性の保護衣及び化学防護手袋を挙げておけばよいだろう。
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    • 【解答例】
      オルトトルイジンに有効な、防毒マスク、不浸透性の保護衣及び化学防護手袋が挙げられる。
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  • (4)インジウム・スズ酸化物に関する次の間に簡潔に答えよ。
    ① 発生するおそれのある健康障害は何か。

    • 【解説】
      本小問も(3)に引き続き、時事ネタである。ここ数年の化学物質に関する問題は時事ネタから出題される傾向が強い。過去5~10年前までの法令改正などについて、正確に背景等を理解しておく必要があるようだ。
      平成22年12月22日基安発1222第2号「インジウム・スズ酸化物等取扱い作業による健康障害防止対策の徹底について」に「低濃度の吸入ばく露によりラットにおいて発がんを含む肺疾患、マウスにおいて肺疾患を起こすことが確認された」とされている。
      また、政府のモデルSDSには、発がん性区分が1Bとされているほか、間質性肺炎などの呼吸器障害(区分1)、皮膚に対する重度の刺激(区分2)、眼に対する重度の刺激(区分2A)などが記載されている。
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    • 【解答例】
      間質性肺炎などの呼吸器疾患を発症する。また動物実験の結果から、肺がんの発症が疑われている。その他、皮膚に対する重度の刺激や眼に対する重度の刺激などの疑いがある。
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  •   ② 健康障害を早期発見するための検査法を二つ挙げよ。

    • 【解説】
      本小問も(3)の②と同じで、健診項目から肺がんの検査項目を2点あげておけばよい。生物学的モニタリングの検査項目を挙げてはならないことも同様である。
      厚生労働省の「インジウム・スズ酸化物等の取扱い作業による健康障害防止に関する技術指針」には、定期健康診断の健診項目が以下のように挙げられている。この中から該当するものを2つ挙げればよい。なお、ITOとはインジウム・スズ酸化物のことである。
      2 定期健康診断について
      (1)一次健康診断
         事業者は、ITO 等取り扱い作業に常時従事する労働者に対し、6月以内ごとに1回、定期に、次の項目について、医師による健康診断を行うこと。
      ・ 業務の経歴の調査
      ・ 作業条件の簡易な調査
      ・ 喫煙歴
      ・ 既往歴の有無の検査
      ・ インジウム又はその化合物による咳、痰、息切れ等の自覚症状又はチアノーゼ、ばち状指等の他覚症状の既往歴の有無の検査
      ・ 咳、痰、息切れ等の自覚症状の有無の検査
      ・ チアノーゼ、ばち状指等の呼吸器に係る他覚症状の有無の検査
      ・ 血清インジウム濃度の測定
      ・ 血清 KL-6 値の測定
      (2)二次健康診断
         事業者は、一次健康診断の結果、異常の疑いのある者で、医師が必要と認める者については、次の項目について、医師による健康診断を行うこと。
      ・ 作業条件の調査
      ・ 医師が必要と認める場合は、胸部エックス線検査 注1)、胸部CT検査 注2)、サーファクタントプロテインD(血清 SP-D)の検査等の血液化学検査、肺機能検査 注3)、喀痰の細胞診又は気管支鏡検査
      注1)労働安全衛生規則第44条第1項第4号に規定する胸部エックス線検査をいう。
      注2)CT(コンピューター断層撮影)による検査及びHRCT(高分解能コンピューター断層撮影)による上肺野、中肺野及び下肺野の検査をいう。ただし、医師が必要でないと認めた場合には、HRCT検査を省略することができる。
      注3)スパイロメトリー及びフローボリューム曲線による肺換気機能検査、動脈血ガスを分析する検査及び一酸化炭素による拡散能力検査をいう。
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    • 【解答例】
      以下の検査が挙げられる。
      ① 咳、痰、息切れ等の自覚症状の有無の検査
      ② チアノーゼ、ばち状指等の呼吸器に係る他覚症状の有無の検査
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  •   ③ 取り扱う際の目標濃度とは何か。

    • 【解説】
      前記のガイドラインには、目標濃度とは、「ITO等の取扱い作業における当面の作業環境の改善の目標とすべき濃度基準」であるとされている。この趣旨をそのまま記述しても合格点は取れると思う。「当面の」を書き漏らさないこと。
      要は、動物実験のLOAELからディフォルトのUF値を用いて管理濃度を算定しようとしたところ、あまりにも値が低く(3×10-4mg/m3)なってしまったのである。これは、そのまま管理濃度として設定すると、現実問題として守ることができないのではないかと危惧さるような値であった。
      そこで、当面の守るべき値として(管理濃度とは別な)「目標濃度」(0.01mg/m3)という概念を作り出したのである。しかし、この数値は、動物実験の結果から健康障害のリスクが否定できない値なので「当面の」目標ということにしているのである。
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    • 【解答例】
      ITO等の取扱い作業における当面の作業環境の改善の目標とすべき濃度基準が「目標濃度」である。
      事業者は、空気中のインジウムの濃度を作業環境測定基準のA測定に準じて測定し、その結果について、作業環境評価基準に準じて第1評価値を算定する。そして、これが「目標濃度」を上回ったときは、工学的対策等によりこれを目標濃度以下になるように努める必要がある。
      しかし、「目標濃度」は、我が国における動物を用いた長期がん原性試験結果により算定したばく露が許容される濃度よりも高い。そのため、第1評価値がこの算定した値を上回る場合には、作業環境を改善するため必要な措置を継続的に講じ、できる限り空気中のインジウムの濃度を低減させることが望ましい。
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  •   ④ 取り扱う作業者が着用すべき保護具の指定防護係数とは何か。

    • 【解説】
      平成24年12月3日基発 1203 第1号「「インジウム化合物等を製造し、又は取り扱う作業場において労働者に使用させなければならない呼吸用保護具」の適用について」によれば、指定防護係数とは、「訓練された着用者が、正常に機能する呼吸用保護具を正しく着用した場合に、少なくとも得られるであろうと期待される防護係数(呼吸用保護具の外の空気中の有害物質の濃度を着用者の吸気中の濃度で除して得た値をいう。)をいう」とされている。
      すなわち、まず「防護係数」とは「呼吸用保護具の外の空気中の有害物質の濃度を着用者の吸気中の濃度で除して得た値」である。作業場の気中濃度が100ppmで職業ばく露限界(許容濃度等)が10ppmであれば、防護係数は10以上が必要ということになる。なお、防護係数は漏れを考慮した値となっている。
      そして、「指定防護係数」とは「訓練された着用者が、正常に機能する呼吸用保護具を正しく着用した場合に、少なくとも得られるであろうと期待される防護係数」である。この値は、事業者が測定して調べるものではなく、予め公的な機関によって与えられる数値である。具体的には、JIS T 8150「呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理方法」の付表2が用いられることが多い。
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    • 【解答例】
      呼吸用保護具の指定防護係数とは「訓練された着用者が、正常に機能する呼吸用保護具を正しく着用した場合に、少なくとも得られるであろうと期待される防護係数(呼吸用保護具の外の空気中の有害物質の濃度を着用者の吸気中の濃度で除して得た値)」である。
      わが国においては、JISによって定められており、それが用いられることが多い。
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