労働衛生コンサルタント試験 2020年 労働衛生一般 問21

化学物質の有害性の調査




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合格

 このページは、2020年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年度(令和2年度) 問21 難易度 化学物質の有害性の調査は過去の出題例は少ないが同種問題はある。過去問の学習で正答できる問題。
化学物質の有害性の調査

問21 有害性の調査に用いられる試験に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)エームス試験は変異原性試験の一種でありサルモネラ菌や大腸菌が使われる。

(2)がん原性試験は変異原性のスクリーニングに用いられる。

(3)エームス試験は染色体の構造異常の発生頻度により判定される。

(4)エームス試験が陽性であればがん原性は陽性となる。

(5)がん原性が陽性であればエームス試験は陽性となる。

正答(1)

【解説】

本問は、2017年の問21の焼き直しに過ぎない。こんな問題を間違えてはいけない。

(1)正しい。Ames試験は、カルフォルニア大学教授の Bruce N. Ames 博士らが開発したことからそのように呼ばれている「微生物を用いる変異原性試験」である。発がん性のスクリーニングする試験として用いられ、サルモネラ菌や大腸菌が使われている。

(2)誤り。「ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験」も、発がん性のスクリーニングに広く用いられる試験で、安衛法ではAmes試験で強い陽性を示した物質に対して行う。がん原性試験が変異原性のスクリーニングに用いられるのではない。

(3)誤り。Ames 試験は、遺伝子組換えで突然変異を起こしやすく変異させたサルモネラ菌や大腸菌の寒天培地に試験物質を作用させ、突然変異を引き起こしたコロニー数で変異原性の強さを調べる試験である。

染色体の構造異常の発生頻度により判定されるのは、染色体異常試験である。染色体異常試験は、ほ乳類の培養細胞に化学物質を加え、染色体の構造異常や数的異常を計測して染色体異常の誘発性の有無を調べる。

(4)誤り。そもそも変異原性があってもがん原性があるとは限らないし、Ames 試験が陽性であればがん原性が陽性となるとは限らない。変異原性のある化学物質はすべてがん原性があるのであれば、変異原性試験はがん原性試験として用いることができよう。

(5)誤り。そもそもがん原性があっても変異原性があるとは限らない。がん原性が陽性であればAmes 試験が陽性となるとは限らない。ただ、がん原性のある化学物質の多くは変異原性を有するので、変異原性試験ががん原性試験のスクリーニングテストとして用いられるのである。

2020年12月05日執筆