問16 オルト-トルイジンに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)常温で無臭の気体であり引火性がある。
(2)膀胱がんを引き起こすことが知られている。
(3)アゾ系及び硫化系染料の原料として用いられる。
(4)神経毒性は確認されていない。
(5)経皮吸収により健康障害を起こすおそれがある。
このページは、2020年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2020年度(令和2年度) | 問16 | 難易度 | 福井県の膀胱がん事案の原因物質に関する時事問題である。口述試験でも出題の可能性がある。 |
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オルト-トルイジン | 4 |
問16 オルト-トルイジンに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)常温で無臭の気体であり引火性がある。
(2)膀胱がんを引き起こすことが知られている。
(3)アゾ系及び硫化系染料の原料として用いられる。
(4)神経毒性は確認されていない。
(5)経皮吸収により健康障害を起こすおそれがある。
正答(1)
【解説】
オルト-トルイジンはいうまでもなく、福井県の化学工業の工場における膀胱がん事案の原因物質である。関連報道を読んでいれば正答できるだろうが、難問だったかもしれない。
(1)誤り。20℃ではほとんど気化しない。常温で無色~黄色の液体である。噴霧することにより許容濃度を超えても臭気を十分に感じないが、わずかな臭気がある。なお、引火性があることは正しい。
(2)正しい。上記に述べたように、膀胱がんを引き起こすことが知られている。
(3)正しい。アゾ系及び硫化系染料の中間体として用いられる他、顔料の中間体原料、エポキシ樹脂硬化剤原料としても用いられる。
(4)正しい。厚生労働省化学物質のリスク評価検討会「オルト-トルイジンに対する今後の対応」(2016年7月)には「神経毒性:なし」とされており、その根拠として「頭痛、疲労、めまい、悪心などの症状は血中メトヘモグロビン濃度の上昇に伴い認められる症状であり、神経毒性の根拠としなかった
」とされている。
(5)正しい。この物質は(1)の解説でも述べたようにほとんど蒸発しない。そのため、皮膚に付着すると、蒸発せずそのまま皮膚にとどまることになる。福井県の化学工業の工場における膀胱がん事案では、経皮吸収によって健康障害を起こしたと考えられている。
なお、この事件は、経皮吸収対策強化の特化則改正の端緒となった。