問03 有害物質の性状、空気中での状態等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)鉛合金の研磨作業では、鉛は主にヒュームとして発生する。
(2)空気中の有機溶剤の体積分率1%は、10000 ppm に相当する。
(3)有機溶剤蒸気は、密度が空気より大きく、風通しの悪い作業場では床上に滞留しやすい。
(4)ミストの粒径は、一般に、ヒュームの一次粒子の粒径よりも大きい。
(5)環境空気中の有害物質の濃度分布は、対数正規分布で近似される。
このページは、2020年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2020年度(令和2年度) | 問03 | 難易度 | 有害物質の性状等は頻出事項。やや専門的な肢もあるが、全般に基本的な内容。正答する必要がある。 |
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有害物質の性状等 | 2 |
問03 有害物質の性状、空気中での状態等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)鉛合金の研磨作業では、鉛は主にヒュームとして発生する。
(2)空気中の有機溶剤の体積分率1%は、10000 ppm に相当する。
(3)有機溶剤蒸気は、密度が空気より大きく、風通しの悪い作業場では床上に滞留しやすい。
(4)ミストの粒径は、一般に、ヒュームの一次粒子の粒径よりも大きい。
(5)環境空気中の有害物質の濃度分布は、対数正規分布で近似される。
正答(1)
【解説】
本問は、過去問を解いて、理解していれば解ける問題である。(1)~(4)は過去問に類似問題があり、(5)も過去問の解説で私が説明している内容である。こんな問題を誤答してはならない。
(1)誤り。ヒュームとは高温で気化して蒸気となった金属が、作業空間で冷やされて固体粒子となったものである。金属の溶解作業や、溶接・溶断などで発生する。
研磨作業では粉じんが発生するが、ヒュームは発生しない。なお、2015年問2の(5)に同種の肢がある。
(2)正しい。パーセント(%)は百分率、ppmは百万分率である。従って、同じ値をそれぞれの単位で表すと、その数値は、ppmで表す方が%で表すより1万倍大きくなる。空気中の有機溶剤に限らず、1%は10000 ppm に相当する。
なお、2018年問2の(3)及び2016年問2の(3)に同種の肢がある。
(3)正しい。有機溶剤蒸気は、密度が空気より大きく、風通しの悪い作業場では床上に滞留しやすい。なお、2014年問2の(2)に同種の肢がある。
(4)正しい。ミストの粒径は、一般に、ヒュームの一次粒子の粒径よりも大きい。なお、2018年問2の(1)及び2015年問2の(4)に同種の肢がある。
(5)正しい。2015年問18の解説を読んでおけば、正しいと分かるはずである。
ただし、正確には、環境空気中の有害物質の濃度分布は「対数正規分布で近似される」のではなく、「対数正規分布で近似している」のである。
理論家は、有害物質の濃度分布は「統計的に」対数正規分布になっており、多くのデータを集めれば対数正規分布に近づいていくと信じている。一方、実務家は「理論的に」対数正規分布になることが証明されていると考えている。いずれも誤りであり、たんに「対数正規分布」というモデルを用いているに過ぎない。