問15 特定化学物質障害予防規則に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、同規則に定める適用の除外及び設備の特例はないものとする。
(1)管理第二類物質を製造する設備については、密閉式の構造のものとしなければならない。
(2)塩酸を含有する排液については、酸化・還元方式による排液処理装置又はこれと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない。
(3)第二類物質を製造する屋内作業場については、1年以内ごとに1回、定期に、当該物質の空気中における濃度を測定しなければならない。
(4)第一類物質、第二類物質又は第三類物質を製造し、若しくは取り扱う業務に常時従事する労働者に対し、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、所定の項目について、医師による健康診断(特定化学物質健康診断)を行わなければならない。
(5)特別管理物質を製造し、又は取り扱う作業場において常時作業に従事する労働者について、1か月を超えない期間ごとに、労働者の氏名、従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間等を記録し、これを 30 年間保存するものとする。
このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2019年度(令和元年度) | 問15 | 難易度 | かなり基本的なことを問うている。正答できなければならない問題といえる。 |
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特定化学物質 | 2 |
問15 特定化学物質障害予防規則に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、同規則に定める適用の除外及び設備の特例はないものとする。
(1)管理第二類物質を製造する設備については、密閉式の構造のものとしなければならない。
(2)塩酸を含有する排液については、酸化・還元方式による排液処理装置又はこれと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない。
(3)第二類物質を製造する屋内作業場については、1年以内ごとに1回、定期に、当該物質の空気中における濃度を測定しなければならない。
(4)第一類物質、第二類物質又は第三類物質を製造し、若しくは取り扱う業務に常時従事する労働者に対し、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、所定の項目について、医師による健康診断(特定化学物質健康診断)を行わなければならない。
(5)特別管理物質を製造し、又は取り扱う作業場において常時作業に従事する労働者について、1か月を超えない期間ごとに、労働者の氏名、従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間等を記録し、これを 30 年間保存するものとする。
正答(5)
【解説】
(1)誤り。管理第二類物質とは、第二類物質のうち、特定第二類物質、特別有機溶剤等及びオーラミン等以外の物のことである。管理第二類物質を製造する設備については、特化則第5条に規定があるが、密閉式の構造のものとしなければならないとは定められていない。
なお、同規則第4条第1項により、特定第二類物質等(特定第二類物質又はオーラミン等)を製造する設備については、密閉式の構造としなければならないことも覚えておくこと。
【特定化学物質障害予防規則】
(定義等)
第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一~四 (略)
五 管理第二類物質第二類物質のうち、特定第二類物質、特別有機溶剤等及びオーラミン等以外の物をいう。
六及び七 (略)
2及び3 (略)
(第二類物質の製造等に係る設備)
第4条 事業者は、特定第二類物質又はオーラミン等(以下「特定第二類物質等」という。)を製造する設備については、密閉式の構造のものとしなければならない。
2及び3 (略)
第5条 事業者は、特定第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんが発散する屋内作業場(特定第二類物質を製造する場合、特定第二類物質を製造する事業場において当該特定第二類物質を取り扱う場合、燻蒸作業を行う場合において令別表第三第二号5、15、17、20若しくは31の2に掲げる物又は別表第一第五号、第十五号、第十七号、第二十号若しくは第三十一号の二に掲げる物(以下「臭化メチル等」という。)を取り扱うとき、及び令別表第三第二号30に掲げる物又は別表第一第三十号に掲げる物(以下「ベンゼン等」という。)を溶剤(希釈剤を含む。第38条の16において同じ。)として取り扱う場合に特定第二類物質のガス、蒸気又は粉じんが発散する屋内作業場を除く。)又は管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんが発散する屋内作業場については、当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。ただし、当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置の設置が著しく困難なとき、又は臨時の作業を行うときは、この限りでない。
2 事業者は、前項ただし書の規定により特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けない場合には、全体換気装置を設け、又は当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質を湿潤な状態にする等労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講じなければならない。
(2)誤り。廃液処理については特化則第 11 条に定められているが、塩酸を含有する排液については、中和方式による排液処理装置又はこれと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならないとされている。
【特定化学物質障害予防規則】
(排液処理)
第11条 事業者は、次の表の上欄に掲げる物を含有する排液(第一類物質を製造する設備からの排液を除く。)については、同表の下欄に掲げるいずれかの処理方式による排液処理装置又はこれらと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない。
物 | 処理方式 |
---|---|
(略) | (略) |
塩酸 | 中和方式 |
(略) | (略) |
2及び3 (略)
(3)誤り。特化則第 36 条(特別有機溶剤については第 36 条の5)は、第二類物置を製造する屋内作業場については、6月以内ごとに1回、定期に、当該物質の空気中における濃度を測定しなければならないと規定している。1年以内ごとではない。
【労働安全衛生法】
(作業環境測定)
第65条 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。
2~5 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(作業環境測定を行うべき作業場)
第21条 法第65条第1項の政令で定める作業場は、次のとおりとする。
一~六 (略)
七 別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質(同号34の2に掲げる物及び同号37に掲げる物で同号34の2に係るものを除く。)を製造し、若しくは取り扱う屋内作業場(同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に係るものを製造し、又は取り扱う作業で厚生労働省令で定めるものを行うものを除く。)、石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する屋内作業場若しくは石綿分析用試料等を製造する屋内作業場又はコークス炉上において若しくはコークス炉に接してコークス製造の作業を行う場合の当該作業場
八~十 (略)
別表第3 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)
一 第一類物質
1~8 (略)
二 第二類物質
1~37 (略)
三 第三類物質
1~9 (略)
【特定化学物質障害予防規則】
(測定及びその記録)
第36条 事業者は、令第21条第七号の作業場(石綿等(石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)第2条に規定する石綿等をいう。以下同じ。)に係るもの及び別表第一第三十七号に掲げる物を製造し、又は取り扱うものを除く。)について、6月以内ごとに1回、定期に、第一類物質(令別表第三第一号8に掲げる物を除く。)又は第二類物質(別表第一に掲げる物を除く。)の空気中における濃度を測定しなければならない。
2~4 (略)
(特定有機溶剤混合物に係る測定等)
第36条の5 特別有機溶剤又は有機溶剤を含有する製剤その他の物(特別有機溶剤又は有機溶剤の含有量(これらの物を二以上含む場合にあつては、それらの含有量の合計)が重量の5パーセント以下のもの及び有機則第1条第1項第二号に規定する有機溶剤含有物(特別有機溶剤を含有するものを除く。)を除く。第41条の2において「特定有機溶剤混合物」という。)を製造し、又は取り扱う作業場(第38条の8において準用する有機則第3条第1項の場合における同項の業務を行う作業場を除く。)については、有機則第28条(第1項を除く。)から第28条の4までの規定を準用する。この場合において、有機則第28条第2項中「当該有機溶剤の濃度」とあるのは「特定有機溶剤混合物(特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)第36条の5に規定する特定有機溶剤混合物をいう。以下同じ。)に含有される同令第2条第三号の二に規定する特別有機溶剤(以下「特別有機溶剤」という。)又は令別表第六の二第一号から第四十七号までに掲げる有機溶剤の濃度(特定有機溶剤混合物が令別表第六の二第一号から第四十七号までに掲げる有機溶剤を含有する場合にあつては、特別有機溶剤及び当該有機溶剤の濃度。以下同じ。)」と、同条第3項第七号、有機則第28条の3第2項並びに第28条の3の2第3項、第4項第一号及び第5項第一号中「有機溶剤」とあるのは「特定有機溶剤混合物に含有される特別有機溶剤又は令別表第六の二第一号から第四十七号までに掲げる有機溶剤」と、同条第四項第三号ロ中「有機溶剤作業主任者」とあるのは「特定化学物質作業主任者」と読み替えるものとする。
(4)誤り。特殊健康診断を行うべき業務は令第 22 条第1項に定められているが、その第三号は別表第3については第1号(第一類物質)と第2号(第二類物質)のみを定め、第3号(第3類物質)は含めていない。
【労働安全衛生法】
(健康診断)
第66条 (第1項 略)
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。(後段略)
3~5 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(健康診断を行うべき有害な業務)
第22条 法第66条第2項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。
一及び二 (略)
三 別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質(同号5及び31の2に掲げる物並びに同号37に掲げる物で同号5又は31の2に係るものを除く。)を製造し、若しくは取り扱う業務(同号8若しくは32に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号8若しくは32に係るものを製造する事業場以外の事業場においてこれらの物を取り扱う業務及び同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の2に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の2に係るものを製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを除く。)、第16条第1項各号に掲げる物(同項第四号に掲げる物及び同項第九号に掲げる物で同項第四号に係るものを除く。)を試験研究のため製造し、若しくは使用する業務又は石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造若しくは石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務
四~六 (略)
2及び3 (略)
別表第3 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)
一 第一類物質
1~8 (略)
二 第二類物質
1~37 (略)
三 第三類物質
1~9 (略)
(5)正しい。特化則第38条の4に定められている。
なお、同条は「ものとする」という表現をしているが、これは「努めなければならない」をさらに緩くした表現と考えればよい(※)。通常は、国などの義務を定めるときに用いられる言葉である。
※ 本条が制定された当時は、現在のようにコンピュータによる処理が一般的ではなく、記録はすべて書類をファイルして行っていた。このため、記録の保存はかなり大変だったため、30 年間の保存義務には事業者団体に抵抗感があったのである。
そのために、このような表現にしたものである。しかし、現在となっては記録の保存はそれほど大変なものではない。むしろ、労働者が退職後にがんに罹患して、化学物質にばく露したためであるとして民事訴訟になることも考えられ、その場合には記録が重要な意味を持つ。実務においては、むしろ、永年保存するべきである。
なお、本条の作業の記録については、安衛法などの法律に根拠条文がなく、省令のみに定められており、厳密には「義務」とはいえない。
【特定化学物質障害予防規則】
(作業の記録)
第38条の4 事業者は、第一類物質(塩素化ビフェニル等を除く。)又は令別表第三第二号3の2から6まで、8、8の2、11から12まで、13の2から15の2まで、18の2から19の5まで、21、22の2から22の5まで、23の2から24まで、26、27の2、29、30、31の2、32、33の2若しくは34の3に掲げる物若しくは別表第一第三号の二から第六号まで、第八号、第八号の二、第十一号から第十二号まで、第十三号の二から第十五号の二まで、第十八号の二から第十九号の五まで、第二十一号、第二十二号の二から第二十二号の五まで、第二十三号の二から第二十四号まで、第二十六号、第二十七号の二、第二十九号、第三十号、第三十一号の二、第三十二号、第三十三号の二若しくは第三十四号の三に掲げる物(以下「特別管理物質」と総称する。)を製造し、又は取り扱う作業場(クロム酸等を取り扱う作業場にあつては、クロム酸等を鉱石から製造する事業場においてクロム酸等を取り扱う作業場に限る。)において常時作業に従事する労働者について、1月を超えない期間ごとに次の事項を記録し、これを30年間保存するものとする。
一 労働者の氏名
二 従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間
三 特別管理物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び事業者が講じた応急の措置の概要
※ 特化則第 38 条の4は、本問出題当時は以下のようになっていた。その後の改正により現在は上記のようになっているが、本問の正誤には影響がないと考えてよいであろう。
(作業の記録)
第38条の4 事業者は、特別管理物質を製造し、又は取り扱う作業場において常時作業に従事する労働者について、1月を超えない期間ごとに次の事項を記録し、これを30年間保存するものとする。
一~三 (変更なし)