労働衛生コンサルタント試験 2019年 労働衛生関係法令 問03

じん肺法及び粉じん障害防止規則




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合格

 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問03 難易度 粉じん則の中でも基本的な問題である。確実に正答できなければならない。
粉じん障害防止規則

問3 じん肺の予防、健康管理等の措置に関する次の記述のうち、じん肺法令上又は粉じん障害防止規則上、正しいものはどれか。

(1)事業者は、粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断を行ったときは、じん肺の所見があると診断された労働者について、じん肺健康診断結果証明書及び間接撮影による胸部全域のエックス線写真を都道府県労働局長に提出しなければならない。

(2)事業者は、粉じん作業に常時従事する労働者で、じん肺管理区分が管理3イ又は管理3ロである者については、1年以内ごとに1回、定期的に、じん肺健康診断を行うほか、管理3ロの者については粉じん作業以外の作業に常時従事させることとするように努めなければならない。

(3)事業者は、粉じん作業を行う屋内作業場の床、設備等については、たい積した粉じんを除去するため、3か月以内ごとに1回、定期に、真空掃除機を用いて、又は水洗する等粉じんが飛散しない方法によって清掃を行わなければならない。

(4)事業者は、屋内作業場の特定粉じん発生源について設置するプッシュプル型換気装置で、その排気口を屋内に設けるものは、電気除じん方式又はスクラバによる除じん方式の除じん装置を付設したものとしなければならない。

(5)事業者は、土石、岩石又は鉱物の掘削等の粉じん作業を行う坑内作業場について、6か月以内ごとに1回、定期に、空気中の粉じんの濃度及び当該粉じん中の遊離けい酸の含有率を測定しなければならない。

正答(2)

【解説】

(1)誤り。じん肺法第3条第1項(第一号)により、じん肺健康診断のエックス線写真は「直接撮影による胸部全域のエックス線写真」でなければならない。「間接撮影」ではない。

【じん肺法】

(じん肺健康診断)

第3条 この法律の規定によるじん肺健康診断は、次の方法によって行うものとする。

 粉じん作業についての職歴の調査及びエックス線写真(直接撮影による胸部全域のエックス線写真をいう。以下同じ。)による検査

二及び三 (略)

2及び3 (略)

(2)正しい。じん肺法第8条第1項(第二号)の規定により、じん肺管理区分が管理三である労働者は原則として1年以内ごとに1回、定期的にじん肺健康診断を行わなければならない。また、じん肺法第21条第2項の規定により、じん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、当該労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとするように努めなければならない。

なお、じん肺法第21条はすべての項の内容を覚えておく必要がある。ここで作業転換が努力義務であって義務ではないのは、粉じんばく露対策を徹底することによりばく露を防止できる可能性はあり、また本人が収入のために作業転換を望まないケースもあり得ること、粉じん業務以外の作業が存在していないことも考えられることなどによる。

【じん肺法】

(定期健康診断)

第8条 事業者は、次の各号に掲げる労働者に対して、それぞれ当該各号に掲げる期間以内ごとに一回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。

 (略)

 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 一年

三及び四 (略)

 (略)

(作業の転換)

第21条 都道府県労働局長は、じん肺管理区分が管理三イである労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、事業者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるべきことを勧奨することができる。

 事業者は、前項の規定による勧奨を受けたとき、又はじん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、当該労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとするように努めなければならない

 事業者は、前項の規定により、労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとなつたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を都道府県労働局長に通知しなければならない。

 都道府県労働局長は、じん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事している場合において、地方じん肺診査医の意見により、当該労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるべきことを指示することができる。

(3)誤り。粉じん則第24条第2項の規定により、事業者は、原則として粉じん作業を行う屋内作業場の床、設備等については、たい積した粉じんを除去するため1月以内ごとに1回、定期に、真空掃除機を用いて、又は水洗する等粉じんが飛散しない方法によって清掃を行わなければならない。3月以内ごとではない。

粉じん作業を行う現場で3か月も床や壁を放置していたら、粉じんがかなり堆積するだろう。1月でも長いくらいである。

【粉じん障害防止規則】

(清掃の実施)

第24条 事業者は、粉じん作業を行う屋内の作業場所については、毎日一回以上、清掃を行わなければならない。

 事業者は、粉じん作業を行う屋内作業場の床、設備等及び前条第一項の休憩設備が設けられている場所の床等(屋内のものに限る。)については、たい積した粉じんを除去するため、一月以内ごとに一回、定期に、真空掃除機を用いて、又は水洗する等粉じんの飛散しない方法によつて清掃を行わなければならない。ただし、粉じんの飛散しない方法により清掃を行うことが困難な場合で当該清掃に従事する労働者に有効な呼吸用保護具を使用させたときは、その他の方法により清掃を行うことができる。

(4)誤り。粉じん則第11条第2項(第四号)の規定により、屋内作業場の特定粉じん発生源について設置するプッシュプル型換気装置については、ろ過除じん方式又は電気除じん方式による除じん装置を付設したものに限って、排気口を屋内に設けることができる。スクラバによる除じん方式では認められない。

【粉じん障害防止規則】

(特定粉じん発生源に係る措置)

第4条 事業者は、特定粉じん発生源における粉じんの発散を防止するため、次の表の上欄に掲げる特定粉じん発生源について、それぞれ同表の下欄に掲げるいずれかの措置又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。

 (表略)

(局所排気装置等の要件)

第11条 第1項(略)

 事業者は、第四条又は第二十七条第一項ただし書の規定により設けるプッシュプル型換気装置については、次に定めるところに適合するものとしなければならない。

一及び二 (略)

 排出口は、屋外に設けられていること。ただし、別表第二第七号に掲げる特定粉じん発生源に設けるプッシュプル型換気装置であつて、ろ過除じん方式又は電気除じん方式による除じん装置を付設したものにあつては、この限りでない。

 (略)

(5)誤り。安衛令第21条第四号は「坑内の作業場で、厚生労働省令で定めるもの」を作業環境測定の対象として定めている。これを受けた粉じん則第6条の3(※)は、粉じん作業を行う坑内作業場について、半月以内ごとに1回、定期に、空気中の粉じんの濃度を測定を義務付けている。6か月以内ごとに1回ではない。

※ 粉じん則第6条の3第1項は、本問出題後の2020年4月に改正されているが、本肢の正誤に影響はない。

なお、粉じん則第6条の3第2項により、原則として粉じん中の遊離けい酸の含有率の測定をしなければならないことは正しい。

また、本肢とは関係がないが、屋内作業場(※)については、粉じん則第26条に規定があり、こちらは六月以内ごとに一回、定期に、測定することとされていることに留意されたい。

※ 屋内作業場の定義は法令には存在していないが、坑内は含まれないものと考えられていることは覚えておこう。例えば労働安全衛生法施行令の第6条第22号に「屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所」という表現があるが、これは「タンク、船倉若しくは坑の内部」が屋内作業場に含まれないからこそ、あえて挙げてあるのである。

【労働安全衛生法】

(作業環境測定)

第65条 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。

2~5 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(作業環境測定を行うべき作業場)

第21条 法第六十五条第一項の政令で定める作業場は、次のとおりとする。

 土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの

二及び三 (略)

 坑内の作業場で、厚生労働省令で定めるもの

五~十 (略)

【粉じん障害防止規則】

第6条の3 事業者は、粉じん作業を行う坑内作業場について、半月以内ごとに一回、定期に、厚生労働大臣の定めるところにより、当該坑内作業場の切羽に近接する場所の空気中の粉じんの濃度を測定し、その結果を評価しなければならない。ただし、ずい道等の長さが短いこと等により、空気中の粉じんの濃度の測定が著しく困難である場合は、この限りでない。

 事業者は、粉じん作業を行う坑内作業場において前項の規定による測定を行うときは、厚生労働大臣の定めるところにより、当該坑内作業場における粉じん中の遊離けい酸の含有率を測定しなければならない。ただし、当該坑内作業場における鉱物等中の遊離けい酸の含有率が明らかな場合にあつては、この限りでない。

(作業環境測定を行うべき屋内作業場)

第25条 令第21条第一号の厚生労働省令で定める土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場は、常時特定粉じん作業が行われる屋内作業場とする。

(粉じん濃度の測定等)

第26条 事業者は、前条の屋内作業場について、六月以内ごとに一回、定期に、当該作業場における空気中の粉じんの濃度を測定しなければならない。

 事業者は、前条の屋内作業場のうち、土石、岩石又は鉱物に係る特定粉じん作業を行う屋内作業場において、前項の測定を行うときは、当該粉じん中の遊離けい酸の含有率を測定しなければならない。ただし、当該土石、岩石又は鉱物中の遊離けい酸の含有率が明らかな場合にあつては、この限りでない。

3~8 (略)

2019年11月27日執筆 2022年08月18日修正