問1 事業場の安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)事業者は、常時 50 人以上の労働者を使用する建設業の事業場では、総括安全衛生管理者を選任するとともに、関係請負人が同一の場所で行う作業間の連絡、調整等を行うため統括安全衛生責任者を選任しなければならない。
(2)事業者は、常時 800 人の労働者を使用する事業場では、原則としてその事業場に専属の者から衛生管理者を3人以上選任しなければならないが、医師又は労働衛生コンサルタントの資格を有する者については非専属であっても1人に限り衛生管理者として選任することができる。
(3)事業者は、常時 1200 人の労働者を使用し、そのうち常時 50 人の労働者が多量の高熱物体を取り扱う業務に従事する事業場では、衛生工学衛生管理者免許を受けた者を含めて衛生管理者を4人以上選任し、そのうち少なくとも1人は専任の衛生管理者としなければならない。
(4)事業者は、常時 1000 人以上の労働者を使用する事業場では、その事業の実施を統括管理し、当該事業場の診療所長を兼務する医師であって、所定の産業医研修を修了した者を、その事業場に専属の産業医として選任することができる。
(5)事業者は、新たな技術、商品等の研究開発その他の業務に従事する労働者に休憩時間を除いて1週間当たり40時間を超えて労働をさせた場合は、その超えた時間が1か月当たり100時間に満たない者を除き、その氏名及び当該超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならない。
このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2019年度(令和元年度) | 問01 | 難易度 | 産業医、衛生管理者の選任義務は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。 |
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労働安全衛生管理体制 | 2 |
問1 事業場の安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。
(1)事業者は、常時 50 人以上の労働者を使用する建設業の事業場では、総括安全衛生管理者を選任するとともに、関係請負人が同一の場所で行う作業間の連絡、調整等を行うため統括安全衛生責任者を選任しなければならない。
(2)事業者は、常時 800 人の労働者を使用する事業場では、原則としてその事業場に専属の者から衛生管理者を3人以上選任しなければならないが、医師又は労働衛生コンサルタントの資格を有する者については非専属であっても1人に限り衛生管理者として選任することができる。
(3)事業者は、常時 1200 人の労働者を使用し、そのうち常時 50 人の労働者が多量の高熱物体を取り扱う業務に従事する事業場では、衛生工学衛生管理者免許を受けた者を含めて衛生管理者を4人以上選任し、そのうち少なくとも1人は専任の衛生管理者としなければならない。
(4)事業者は、常時 1000 人以上の労働者を使用する事業場では、その事業の実施を統括管理し、当該事業場の診療所長を兼務する医師であって、所定の産業医研修を修了した者を、その事業場に専属の産業医として選任することができる。
(5)事業者は、新たな技術、商品等の研究開発その他の業務に従事する労働者に休憩時間を除いて1週間当たり40時間を超えて労働をさせた場合は、その超えた時間が1か月当たり100時間に満たない者を除き、その氏名及び当該超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならない。
正答(3)
【解説】
(1)誤り。以下により本肢の事業場は、総括安全衛生管理者を選任しなくとも違反とはならない。
ア 統括安全衛生責任者
安衛法第 15 条は「事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が2以上あるため、その者が2以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によって行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第 30 条第1項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない」とされる。
そして、政令で定める数は安衛令第7条に定めてあるが、建設業の場合、特定の工事の場合は30名(同第2項第1号)で、その他の場合は50名(同第2号)である。なお、ここにいう特定事業とは建設業及び造船業(安衛令第7条第1項参照)である。
本肢は、50 人以上の労働者を使用する建設業の事業場であるから、いずれにしても選任しなければならない。従って、統括安全衛生責任者を専任しなければならないとしていることは正しい。
イ 総括安全衛生管理者
安衛法第 10 条第1項は「業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない」とする。
ここに政令で定める規模は安衛令第2条に定めてあり、建設業については常時雇用する労働者の数が100人以上の事業場である。なお、この人数は、当該場所において作業を行う労働者の数ではないことに注意する必要がある。
本肢は、50 人以上以上の労働者を使用する建設業の事業場であるから、選任していなくとも違反にはならない。
【労働安全衛生法】
(総括安全衛生管理者)
第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
一~五 (略)
2及び3 (略)
(統括安全衛生責任者)
第15条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が2以上あるため、その者が2以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第30条第1項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。
2~5 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)
第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第10条第1項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。
一 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人
二及び三 (略)
(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)
第7条 法第15条第1項の政令で定める業種は、造船業とする。
2 法第15条第1項ただし書及び第3項の政令で定める労働者の数は、次の各号に掲げる仕事の区分に応じ、当該各号に定める数とする。
一 ずい道等の建設の仕事、橋梁の建設の仕事(作業場所が狭いこと等により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所として厚生労働省令で定める場所において行われるものに限る。)又は圧気工法による作業を行う仕事 常時30人
二 前号に掲げる仕事以外の仕事 常時50人
(2)誤り。安衛則第7条第1項(第4号)により、常時800人の労働者を憧用する事業場では衛生管理者を3人以上選任しなければならないことは正しい。しかし、同規則第7条第1項(第2号)の規定により、衛生管理者は労働衛生コンサルタント(1人)の資格を有する者を除き、専属としなければならない。医師を非専属の衛生管理者とすることはできない。
【労働安全衛生法】
(衛生管理者)
第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 (略)
【労働安全衛生規則】
(衛生管理者の選任)
第7条 法第12条第1項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 (略)
二 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合において、当該衛生管理者の中に第10条第3号に掲げる者がいるときは、当該者のうち1人については、この限りでない。
三 (略)
四 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。
事業場の規模 (常時使用する労働者数) |
衛生管理者数 |
---|---|
50人以上200以下 | 1人 |
200人を超え500人以下 | 2人 |
500人を超え1,000人以下 | 3人 |
1,000人を超え2,000人以下 | 4人 |
2,000人を超え3,000人以下 | 5人 |
3,000人を超える場合 | 6人 |
五及び六 (略)
2 (略)
(衛生管理者の資格)
第10条 法第12条第1項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。
一、二 (略)
三 労働衛生コンサルタント
四 (略)
(3)正しい。安衛則第7条第1項(第4号及び第5号イ)により、常時1200人の労働者を憧用する事業場では衛生管理者を4人以上選任し、そのうち少なくとも1人は専任としなければならないことは正しい。また、同規則第7条第6号の規定により、常時50人の労働者が多量の高熱物体を取り扱う業務に従事する事業場では、衛生工学衛生管理者免許を受けた者を含めて衛生管理者を選任しなければならない。
【労働安全衛生法】
(衛生管理者)
第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し(中略)なければならない。
2 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(衛生管理者を選任すべき事業場)
第4条 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。
【労働安全衛生規則】
(衛生管理者の選任)
第7条 法第12条第1項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一~三 (略)
四 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。
事業場の規模 (常時使用する労働者数) |
衛生管理者数 |
---|---|
50人以上200以下 | 1人 |
200人を超え500人以下 | 2人 |
500人を超え1,000人以下 | 3人 |
1,000人を超え2,000人以下 | 4人 |
2,000人を超え3,000人以下 | 5人 |
3,000人を超える場合 | 6人 |
五 次に掲げる事業場にあつては、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者とすること。
イ 常時千人を超える労働者を使用する事業場
ロ (略)
六 常時五百人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則第十八条第一号、第三号から第五号まで若しくは第九号に掲げる業務に常時三十人以上の労働者を従事させるものにあつては、衛生管理者のうち一人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任すること。
2 (略)
【労働基準法施行規則】
第18条 法第36条第6項第一号の厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務は、次に掲げるものとする。
一 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
二~十 (略)
(4)誤り。安衛則第13条第1項(第二号ハ)の規定により、その事業の実施を統括管理する者は産業医として選任することができない。
【労働安全衛生法】
(産業医等)
第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し(中略)なければならない。
2~6 (略)
【労働安全衛生規則】
(産業医の選任)
第13条 法第13条第1項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 (略)
二 次に掲げる者(イ及びロにあつては、事業場の運営について利害関係を有しない者を除く。)以外の者のうちから選任すること。
イ及びロ (略)
ハ 事業場においてその事業の実施を統括管理する者
三 (略)
2~4 (略)
(5)誤り。事業者は、労働者に休憩時聞を除いて1週間当たり40時間を超えて労働をさせた場合は、その超えた時聞が1か月当たり80時間を超えた労働者の氏名及び当該超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならない。
なお、本肢の情報提供は「新たな技術、商品等の研究開発その他の業務に従事する労働者」に限られない。産業医への情報提供の詳細については厚労省のパンフレットを参照されたい。
【労働安全衛生法】
(産業医等)
第13条 (第1項~第3項 略)
4 産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。
5及び6 (略)
【労働安全衛生規則】
(産業医に対する情報の提供)
第14条の2 法第13条第4項の厚生労働省令で定める情報は、次に掲げる情報とする。
一 (略)
二 第52条の2第1項、第52条の7の2第1項又は第52条の7の4第1項の超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報
三 (略)
2 (略)
(面接指導の対象となる労働者の要件等)
第52条の2 法第66条の8第1項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。ただし、次項の期日前1月以内に法第66条の8第1項又は第66条の8の2第1項に規定する面接指導を受けた労働者その他これに類する労働者であつて法第66条の8第1項に規定する面接指導(以下この節において「法第66条の8の面接指導」という。)を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。
2及び3 (略)
(法第六十六条の八の二第一項の厚生労働省令で定める時間等)
第52条の7の2 法第66条の8の2第1項の厚生労働省令で定める時間は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間について、1月当たり100時間とする。
2 (略)
(法第六十六条の八の四第一項の厚生労働省令で定める時間等)
第52条の7の4 法第66条の8の4第1項の厚生労働省令で定める時間は、1週間当たりの健康管理時間(労働基準法(昭和22年法律第49号)第41条の2第1項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1月当たり100時間とする。
2 (略)